デートと告白
26話
今日は朝目覚めてからずっと緊張していた。
なぜなら今日はリーナさんとのデートの日だからだ。
これまでの人生で誰かと2人きりでデートなんてしたことがなかった。
仕事が忙しかったし、出会いもなかった。
そういうアプリなんかもあったが、同僚の失敗談を聞かされてるうちに使う気がなくなってしまった。
そして、オーラファイターズの世界へ召喚されてしまった。
逆に独り身だったからこの世界を楽しめていると思う。
もし奥さんとか子供とかいたら帰れないことに絶望していたかもしれない。
だがしかし今は人生での初デートというイベントにどう立ち向かうべきなのかわからない。
悩んでいたら
「そんなに緊張していたら楽しめませんよ。」
「そうよリーナ様との時間を楽しんだらいいのよ。」
ってカティアとプリシアに励まされる。
そうだよね楽しんだらいいんだよね。
ばっちりお弁当も用意したし、大丈夫だろう。
そうして緊張しながら変装したリーナさんと合流する。
一緒に城を出て歩くが無言のまま高級住宅街を過ぎてしまった。
「ミナトさん今日は静かですね。調子でも悪かったですか。」
リーナさんが気遣って声をかけてくれる。
何をやってるんだろう、本来はエスコートしないといけないのに情けない。
「すいません。デートなんて初めてで緊張してしまって。」
素直にそう言うと
「ミナトさんもですか。よかった私も初めてで緊張してます。ほら」
って手を出されて握ってみると僅かに震えているのが伝わってきた。
それで安心できたのか気分が楽になった。
「じゃあ一緒ですね。」
そう言って手をつなぎながら歩き出す。
最初は商店街をぶらぶらしてみる。
手をつないでいるのでお互いの距離が近く感じれて嬉しかった。
店のおばちゃんが声をかけてくる。
「お二人さんデートかい。初々しくてうらやましいねぇ。よかったら彼女に一つ買っていかないかい。」
そう言って綺麗な髪飾りの入った箱を見せてくれる。
花を形どったような銀色の髪飾りがよく似合いそうだと思った。
「ミーナさんよかったらつけてみていいですか。」
「いいですよ。」
その髪飾りを彼女の髪につけてみる。
やっぱりよく似合う。普段の髪でも映えるだろうと思った。
「よく似合ってます。」
「うれしいです。」
「じゃあこれを下さい。」
そう言って代金を払うと
「いいねぇ。彼氏はそうでないとね。これはおまけだよ。」
そう言ってブローチもつけてくれた。
おばちゃんがリーナさんの服の胸元につけてくれる。
そうしてまた手をつなぎ歩き始める。
「ミナトさんありがとうございます。大切にしますね。」
「いえこれくらい。ミーナさんの可愛い姿が見れるなら安いもんです。」
そうやってしばらく歩き回って、幸せな時間を堪能していると
「ねえ君可愛いねえ、こんなおっさんほっといて俺たちと遊ばない」って若い集団が声をかけてきた。
「いえ結構です。」
とリーナさんが断って通り過ぎようとしたら
「そんなこと言わずにさぁ。絶対俺たちとの方が楽しいって」
って反対の手をつかもうとしたので相手の腕をつかむ。
「嫌がってるんだからやめてくれませんかね。」
「なんだおっさんやるってのか。」
って言ってくるんで
「今なら穏便にすましてあげますよ。」
って言い返す。
その際に折れる寸前くらいまで力を入れる。
「わ、悪かっただから許してください。」
というので離してあげたらすたこらサッサと行ってしまった。
「ミナトさんありがとうございます。やっぱりミナトさんはカッコイイです。」
そう言われて照れてしまう。
ある程度したら門を出て西の丘に向かう。
その間もいい風が吹いていて穏やかな時間が流れていく。
「この前丘に連れていってくださったときは、楽しむ余裕がなかったけど今日はこの時間も楽しいです。」
「そういえば前はそうでしたね。今日は一緒に楽しめますね。」
この時間が長く続いてほしいと思うのか2人の足取りがゆっくりになっていく。
そんな様子を後ろから覗いている二人がいた。
カティアとプリシアである。
「羨ましいです。」
「でも、ミナト様がついに踏み出すんです。見守りませんと。」
そう言ってこそこそついて行く。
決して気づかれてはならない、デートが失敗に終われば自分たちに返ってくるのだから。
そしてリーナに集中しているミナトは気づいていない。
それは置いといて話を戻すとミナトとリーナは丘の上に登っていく。
2人はついに丘の上についてしまった。
シートを敷いて二人で座る。
「お昼を過ぎてしまいましたね。」
「でも楽しい時間が過ごせてうれしいです。」
言いながらお弁当を出していく。
「前回は食べていただけませんでしたから今回は存分に食べてくださいね。」
「はい。ありがとうございます。」
今日のメニューは塩おにぎり、コーンスープ、ビッグコッコの唐揚げ、だし巻き卵、タコさんウインナー、チーズつくね、デザートにチーズケーキを作ってきた。
「どれでも自由に食べてくださいね。」
「ミナトさんのお勧めは何ですか。」
「このビッグコッコの唐揚げですね。コッコよりも柔らかくて肉汁があふれて美味しいですよ。」
「じゃあそれを食べさせてください。あ~ん。」
この前の話をカティアに聞いたんだろうか。
でも可愛いから一口サイズの唐揚げを一つ口に入れてあげる。
もぐもぐと咀嚼してから
「ふふ、とっても美味しいですね。次のお勧めは何ですか。」
「このチーズつくねですね。これは初ですが味は照りソースで整えてるのでチーズとの相性は抜群ですよ。」
そう言うと今度はリーナさんがこちらに持ってきた。
「はい、あ~ん。」
口を開けると中につくねが入ってくる。
あ~やばい自分で作って味見した時よりもずっと美味しく感じる。
そうして2人でイチャイチャして過ごした。
それを眺める2人は
「いいなぁいいなぁ。あんなことしたいなぁ。」
「しかもとっても美味しそうです。」
ってお腹を空かせながら言い合っていた。
お弁当を食べて腹が膨れたのでしばらくゆっくりする。
「ミナトさんよかったらどうぞ。前回のお返しです。」って太ももを指している。
「じゃあお邪魔します。」って頭を乗せて上を見るとやばいリーナさんの胸で顔が見えない。
このままみてるといろいろと不味いので向きを変えて花畑のほうを見る。
「ミナトさんがこの国に来てからいろんなことがありましたね。」
「そうでしたね。なんかあっという間に感じるんですが、個人的には楽しい日々でした。」
「最初は兄様を恨んだんですよ。馬鹿な計画に参加して他人に迷惑をかけてって。」
「そうだったんですね。」
「でも、今は感謝してます。兄様のおかげでミナトさんに会えたんですから。」
「それはよかった。リーナさんのお兄さんが恨まれたままだと申し訳ないですからね。」
少し静かな時間が流れていく。
しばらくして頭に手が置かれ、そのまま頭が撫でられる。
「ミナトさんありがとうございました。エブリンの時も支えてくれた時も、義伯母様を助けてくれた時も。ミナトさんがいなかったらどうにもなりませんでした。」
「約束しましたからね。リーナさんを守るって。リーナさんが悲しい顔して泣かないでいいようにするって決めましたから。言った以上は実行しないと。・・・・・・。」
「簡単に言ってますけどなかなかできませんよ。・・・・・・。」
そう言っているとミナトさんは寝てしまいました。
私との約束を全部守ってくれて、向こうに潜んでいる2人も惚れさせてしまうなんて悪い人です。
あちらにいる2人には悪いですが今日だけは私が独占しちゃいます。
幸せで穏やかな時間が過ぎていきます。
ここの風景は大好きでしたが今日はいつも以上に綺麗に見えます。
しばらくして目が覚めた。
あまりにも気候が良く、リーナさんの膝枕が心地よくて眠ってしまったようだ。
慌てて頭を上げると柔らかいものにぶつかってしまった。
「キャッ。急にどうしたんですかミナトさん。」
「すいません。いつの間にか眠ってしまいました。」
そういうと頭に手が乗って膝に戻される。
「別にいいんですよ。ミナトさんは毎日頑張りすぎですからたまにはゆっくりしてください。」
「ありがとうございます。」
そうしてしばらく時間が過ぎていく。
「そろそろお茶にしませんか。」
そう言って膝枕から頭をどける。
どきたくない葛藤と戦いながら離れていく。
少し残念そうな顔をしたリーナさんに紅茶を渡す。
それからカットしたチーズケーキを皿に載せて渡す。
「美味しいですね。こんなの初めて食べました。」と笑顔で言ってくれる。
「そう言ってもらえると作った甲斐がありました。」
咲き誇る花を見ながら、2人でゆっくりとお茶を楽しむ。
「この世界に来て、最初に友達になってくれたのがリーナさんでよかったです。」
話し出したら耳を傾けてくれる。
「最初は何とかなるだろうと思っていました。でも現実は厳しくて毎日へこまされてました。でもリーナさんはずっと優しかった。だからずっと頑張れました。」
「そう言ってもらえると照れてしまいますね。私はただ友達になってと言われましたので答えただけですよ。それに私と友達になってって言う方もいなかったですし。」
「だからですよ。王女様ではなくてずっとリーナさんでいてくれたので、救われました。上手く言えませんが、責任感で付き合われてもきっと楽しく過ごせませんでした。」
「私も立場を気にせずに接してくれるミナトさんに救われましたよ。周りにはリーナではなくリーナ・エルウッドを求めてくる方ばかりでシズクだけが唯一の友達でした。友達が増えて嬉しかったですわ。」
お互い笑いあってしまう。
これじゃあ感謝しあって終わらない。
「すいません。切り出し方が下手すぎて率直に言うので聞いてもらっていいですか。」
「はい。」
「私の世界には婚約するときに女性に物を贈る習慣がありました。古臭い習慣なんですが今はあえてそれをしたい。決められたことではなく自分の意志で、リーナさんのことが好きです。私と結婚を前提に付き合っていただけますか?」
そう言ってこの前作った首飾りを取り出す。
「嬉しいです。私もミナトさんが好きです。よろしくお願いします。」
答えて受け取ってくれる。
「つけさせてもらっていいですか。」
うなづいてくれたので、首飾りを受け取ってリーナさんの首につける。
「似合ってますよリーナさん。」
そう言ってお互い見つめ合う。
少しずつ距離が近づいていき唇が触れ合う。
夕陽が照らす中、初めてのキスを交わした。




