王女がやってきた
16話
複数の影が森を走り抜ける。
英雄の遺跡と呼ばれる場所を目指して走っていく。
普段は数多くのモンスターがいる鉄の森は静けさを保っていた。
彼らはこの日のために、英雄の遺跡までの道にモンスターの嫌がる香りを放つ花の汁を粉にしたものを袋詰めした物を
設置して入念に準備してきたのだ。
英雄の遺跡につくと鍵のかかった扉があるのでそれをハンマーで壊す。
中に入っていくと住んでいた者の好みがわかるようなものがたくさんあった。
今中にいる者たちには理解できないが、和風といえばいいか壁には掛け軸が、畳敷きの部屋には刀が、その奥には金の茶室が、何故か茶室には金の招き猫が置かれていた。
彼らはひたすら奥を目指していく。こっそり刀などを盗る者もいたが些細なことだ。
最奥の部屋にはこれまでとは比べ物にならない数の刀と宝石そして巻物があった。
見るものが見れば卒倒しそうな価値の物ばかりだ。
しかし彼らには価値がわからないので宝石類だけを盗っていく。
そのうちの1人がうっかり肘を飾ってあった皿にぶつけてしまった。
「馬鹿野郎!」とリーダーと思われる人物が叫んだが誰も何もできない。
それが地面に落ちて砕けたときそれは目を覚ました。
「貴様らここがどこだかわかっているのか。我が主、小烏丸の遺跡である。」
そう言って出てきたのは大きな化け物だった。
彼らはすぐさま撤退にうつる。
1人が爪で切り裂かれるのが見えたが気にせずに走る。
遺跡を抜け森の道を走る。
遺跡から出てきた化け物に驚いたモンスターたちが森の外へと走っていく。
彼らは二手に分かれて逃げる。
皿を割った者は砦のほうへと、リーダーのグループは北を目指して。
皿を割った者は砦へと逃げ込むことに成功したがモンスターと化け物は止まらない。
勢いのままアーカード王国のアルト砦に襲い掛かっていく。
アーカード王国の第一騎士団団長、ケイオス・アーカードは大きな音で目覚めた。
何事かと部屋を出ると砦の中にはモンスターが侵入していた。
騎士たちは混乱しながらモンスターに立ち向かっている。
態勢を立て直そうとした時上から雷が降ってきて砦を半壊させてしまった。
とにかく撤退命令を出して砦から脱出する。
一人の騎士が逃げ込んできた者を捕まえていたがどうしようもない。
このままでは後方の村が蹂躙されてしまう。
どうしようかと悩んでいると、
「ケイオス様はそのものを連れて王都へと行ってください。私はモンスターをエルウッド王国のミドガルド砦に誘導します。」
と副団長のサリアが提案してきた。
「それではエルウッド王国に被害が出るぞ。」
「このままでは我が国の民が蹂躙された後でエルウッド王国へといってしまいます。どのみち迷惑をかけるならガルシア団長に頼りましょう。」
「わかった。私は父に報告に向かう。」
「私は騎士団を率いてミドガルド砦に向かいます。」
そういうと騎士の大半を率いてサリアはモンスターに突撃していく。
ケイオスは一人を伝令に出し急いで王都へと駆けるのだった。
アーカード王国の城の中でケイン・アーカードは頭を抱えていた。
先ほど血相を変えた息子のケイオスがモンスターの氾濫とそれをエルウッド王国に押し付けてしまったという報告を持って帰ってきたからだ。
これでエルウッド王国に大きな損害が出ればただでは済まない。
こちらから手を打とうにも何も思いつかない。
モンスターがどうなったのか、はたまた騎士団は?まだ情報は何も得られていない。
ケイオスも報告をして倒れてからまだ目覚めていない。
大臣たちと協議したが答えは出ない。
2ヶ月が過ぎた頃、分かったことはミドガルド砦が半壊したことと、捕らえたものが遺跡荒らしをした犯人の一人だということだけだった。
犯人を差し出しても、わが国がモンスターを押し付けたことに変わりはない。
我が国の騎士も帰らぬまま、エルウッド王国からの使者がやってきた。
使者とともに帰ってきた騎士たちから話を聞くと、道中使者は怒っていたという。
危うくエルウッド王国の英雄エルフィナ・エルウッドが死ぬところだったというのだ。
憤慨する使者の話を簡単に言うと、今回の件についての責任をどうするのか弁明に来いというものだった。
どうしたらいいのかわからず自室にこもる王のもとに娘がやってきた。
「お父様、少しいいですか。」
彼女はこの国の3女プリシア・アーカード正妻の血を一番色濃くついだ子でケインにとって一番かわいい子だ。
「どうしたんだいプリシア。」
「今回の件での使者に私がエルウッドに行きます。」
「何もお前が行かなくてもいいではないか。」
「しかしケイオスお兄様は国を継ぐ方、グラン兄さまはこの国の頭脳となる方、お姉さまたちはすでに他国へと嫁いでいます。適任は私しかいません。これはグラン兄さまと相談して決めたことです。この国がエルウッド王国に敵意があったわけではないことを示すには王族が責任を取るために行くしかありません。」
「・・・・・・。すまない儂に力がないばかりに。」
「いいえ。私も王族の一人として覚悟はしております。」
王ケインには優柔不断で決断できないところがあった。
そのせいでエルウッド王国に何も手を打てずに使者がきてしまった。
こうなったら誰か王族が命を賭して弁明に行かねば戦争になってしまうかもしれない。
もしくはどうしようもないくらいの賠償をさせられるか、どちらにせよ国の民は苦しまないといけない。
そうならないためにプリシアは覚悟決めたのだった。
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ミナトは頭を抱えて悩んでいた。
どうしてこうなったのか、俺が何かを間違えたのだろうか、答えが出ないので少し思い起こしてみることにした。
ミドガルド砦にてモンスターを退けた後、一部始終を目撃した第一騎士団に手荒な歓待を受けていた。
3日3晩飲み明かすという歓待だ。
肴は今回の戦いの話と唐揚げだったのでおれは全力でコッコを揚げ続けた。
歓待されてなくない?
宴も終わり今回の顛末を報告するうえでガルシアさんが全員に箝口令をだしてくれて、表向きは麒麟は第一騎士団とエルフィナさんが協力して退けたという話にしてくれることになった。
俺はピンチの英雄を助けたことで名を連ねることに。
ミリアリアさんには全て伝わるが真実を知る人は少ないほうがいい。
その話も終わったら、砦の改修もしないといけないし、報告のため俺、エルフィナさん、リーナさん、カティア、レイチェルさんで先に王都へと帰った。
屋台型機甲トラックで飛ばして帰っても1週間はかかってしまった。
王都にこのまま乗り込むのは不味いので、途中で降りて通りすがりの馬車に乗せてもらってから王都へ。
エルフィナさんがミリアリアさんに報告をするとすぐに物事は進んだ。
まず第二騎士団と大工がミドガルド砦に派遣されて負傷者を含む第一騎士団は王都へ帰還。
その後、第一騎士団に褒賞が渡される式が行われた。
そこでまずは事件が起きた。
ミリアリアさんが「今回我が国の英雄エルフィナのピンチを救ったミナトと我が娘リーナを婚約させることにした。」
なんて言ってしまったのだ。
俺はそんな話は何も聞かされてなくてどうしたらいいのかわからなくて固まってしまっていた。
その間カティアがわき腹をずっと抓っていた。
これには多くの反対意見が貴族から寄せられたがミリアリアさんの宣言が覆ることはなかった。
救いはリーナさんが嫌がってなかったことだ。
これで嫌がられてしまったら俺は立ち直れないだろう。
実際は本当にいいのかって思うけど、これを断るとリーナさんに恥をかかせることになるので素直に喜んでおこう。
リーナさんは俺の好みのど真ん中なのだから。
この話はおいといて更なる事件が俺を待っていた。
今回の件に関してはアーカード王国の第一騎士団副団長のサリアさんの話を聞いて、事情を理解したミリアリアさんとエルフィナさんが大臣たちと協議した結果、エルウッド王国は砦が壊れるくらいの被害だったので、大事にせずに軽く賠償くらいに考えて説明を求める使者を送ったのだが、この使者がまずかった。
ある大臣推薦の使者だったのだが、遣わされた彼は熱狂的なエルフィナさんのファンだったのだ。
そのため厳しくアーカード王国で演説したようだ。
彼は帰って来て、堂々とアーカード王国の王族が弁明に来るようにしましたと報告したらしい。
その報告を聞いたミリアリアさんは大きなため息をついていた。
ストレスのためか毎日ラーメンを要望された。
そして3週間後にアーカード王国からの使者達がやってきた。
今回の件の首謀者の首を差出し、事情を説明し、最後は第三姫のプリシア・アーカードをこの国の自由にして構わないと伝えてきたのだった。
今度はミリアリアさんとエルフィナさんがため息をついていた。
来てしまったものは追い返すわけにもいかない。
追い返すとアーカード王国との関係が悪くなってしまう。
そんな訳でしばらく2人からの要望で料理を担当していたのだが、エルフィナさんがこっちをじっと見つめながらにやって笑った気がした。
「ここにいいのがいるじゃないか。」
「そうですわね。ミナトさんは女の子は嫌いですか?」
「なんですかその変な質問は、女の子が嫌いならリーナさんの件も即断ってますよ。」
「ですよねぇ。ならかわいい子はたくさんいても問題ないわよね。」
「この世界は一夫多妻だ。問題ないだろう。」
「まあそうみたいですね。俺はまだ一夫多妻を実践してる方を見てないですけどね。」
「あらあらそんな方はたくさんいますわよ。」
「そうだぞ。ガルシアなんかは妻が40人はいるぞ。」
まさかだよあのガルシアさんが40人もいるとか。
「それは驚きの情報ですよ。」
「だろそういうことでミナトに任せた。」
「うふふ、よろしくお願いしますね。」
「なんのことです?」
この時にもっとしっかりと問い詰めておくべきだった。
次に執務室に一人で来いと、よばれた俺の前には女の子がたっている。
身長はカティアより少し高いくらいで綺麗な金髪はミディアムくらいの長さだ。
胸は平均と思われる。
「ミナトこの子はプリシアっていうんだ。これからお前の専属だからよろしく。」
「いきなり何の話ですか?何でここでまた専属メイド?」
「ミナト様よろしくお願いしますわ。」
「そういうことだ。彼女のことは任せた。」
そう言って強引に追い出されてしまった。
部屋にプリシアを連れて帰ると、出迎えてくれたカティアに抓られる。
「痛い、痛いよカティア。」
「ミナト様、誰なんですかこの娘は。」
「エルフィナさんから専属メイドだって預けられたんだよ。」
って言ってると
「ミナト様大変ですわ赤くなってますわ。」
とプリシアが撫でてくれる。
それをみたカティアがまた睨んでくる。
さらにそこへリーナさんがやってきた。
以前は休みの日しか会うことのなかったリーナさんが婚約宣言からはちょくちょく部屋に来るようになったのだ。
普段なら嬉しいことなのだが今は最悪だ、時が止まる。
そうして頭を抱えることになったのだ。
座らされた俺の横には腕を絡めてくるプリシア、正面には膨れているカティアと怒っているリーナさん。
どう考えても俺は悪くないと思うんだが・・・・・・。




