エルフィナさんとボス
15話
ガタゴトガタゴトとクッションの悪い馬車が王都を走っていく。
門では御者が挨拶だけして通り抜けていく。
馬車に揺られ慣れてないミナトの尻は早くも悲鳴を上げていた。
他の3人が何も言わないので何も言えず早く目的地についてくれと願いながら座っているとエルフィナさんのお尻の下に何か敷いてあるのが目に入った。
なにそれみたいにエルフィナさんを見るとニヤニヤしながらこちらをみていた。
「どうしたんだミナト。人の尻をジロジロ見て。」
リーナさんとカティアからの冷たい視線を感じる。
「人聞きの悪いこと言わないでください。」
「じゃあ見てなかったのか。」
「確かにその辺を見てましたけど、見てたのは尻じゃないです。その下に敷いてるものですよ。」
「ぷぷぷ。そうむきになるなただのジョークじゃないか。」
2人の反応をみて楽しみながらからかってくる。
「知らないのか。馬車用のクッションだぞ。」
「そんなのあるなんて初耳です。前回誰も教えてくれなかったし。」
「それは残念だったな。まあないよりまし程度のものだからな。」
そう言われてリーナさんとカティアを見ると目をそらされた。
ショックだ、尻が痛くてたまらないのを必死に我慢してるのが自分だけだったなんて。
「すいません。前回私の馬車にはおいてなかったので。今回は義伯母様の馬車なのであるだけですわ。」
「なんで教えてくれないんですか。」
「そのぉ、話を聞いた義伯母様が面白そうだから見てみたいと・・・・・・。」
なんてこった、前回悶絶していたのを知ってエルフィナさんはわざと言わないように念を押したらしい。
こんなおっさんの悶絶してる顔なんて見て何が楽しいのか理解に苦しむところだ。
その後、「悪い悪い」って言いながらクッションをくれた。
それから20分くらい走って人気がなくなったところで馬車を降りると、馬車は王都へと帰っていく。
そこからは屋台型機甲トラックを出すとエルフィナさんが助手席に乗ってきた。
リーナさんとカティアは屋台のところだ。
「これはトラックじゃないか。ずるいぞミナト。私にも運転させてくれ。」
「エルフィナさん運転できるんですか?」
「こう見えてもグランツー〇スモで好タイムを出したことがあるぞ。もしくは文字Dだな。」
「それゲームじゃないですか。危険ですから駄目です。」
「つれないこと言うなよ頼むよ。」
あまりにもしつこいので運転を代わったら大変な目にあった。
そこから爆走しまくって途中でたまたまそこにいたコボルトを轢いて、盗賊を轢いて、最後にゴブリンを轢いて、一日目の目的地の湖近くにターンをかまして止まった。
「いやぁ楽しかったなぁ。」
「こっちはひどい目にあいましたけどね。」
後ろではリーナさんとカティアが目を回していた。
火をおこして小屋を出して準備している間にエルフィナさんたちは水浴びしてくるようだ。
エルフィナさんが「ミナトもくるか」といってきて、リーナさんとカティアが「「別にミナトサンなら」」みたいなことを呟いていて反応に困る。
もちろん行きませんけど、エルフィナさんはニヤニヤしてました。
夕食が出来上がるころ3人が戻ってきた。
「覗きに来なかったのかミナト。真面目でつまらないぞ。」
「戻ってきていきなり何言ってんの。そんなことしてばれたら人生詰みますよ。」
「そこは覗かれる側のお前に対する好感度しだいだろ。」
「じゃあエルフィナさんは覗く俺を見つけたらどうするんですか?」
「その場では優しく見逃してミリアリア、セバス、ルリアに覗かれたんだって言いふらすかな。」
それって人生終了のバッドエンドに直行ですやん。
「見つかってその場で最低とののしられるよりひどいですよね。」
「当たり前だろ。私の裸を見たなら代価を払ってもらわないとな。だが向こうの2人なら笑って許してくれそうだぞ。この3日くらいの間に何があったんだ。」
「別に何もないですよ。そんなこと言ってないでさっさとご飯にしますよ。」
エルフィナさんに言ったらからかいまくるだろう。
みんなで集まってご飯にする。
今日はこの前リーナさんが食べれなかったということで、コッコのから揚げと、だし巻き卵と野菜スープ、おにぎりというメニューになった。
2人は美味しいと絶賛していたが、エルフィナさんは酒はないのかって騒いでいた。
夜は小屋を3人で使ってもらい、俺はロウガーに見張りを頼んでトラックで眠る。
次の日の昼過ぎにエルウンに到着したらシズクさんとレイチェルさんがすごい勢いでやってきた。
「リーナ、無事でよかったです。私がふがいないばかりに申し訳ありません。」
「ミナトーーー。ご飯がまずかったよう。」
そんな2人をエルフィナさんが連れていった。
その後、ダニスがやってきてこの10日間くらいのことを説明してくれた。
「すまないな後始末全部任せてしまって。」
「それは別にいいんだが、気のせいかなんかミナトと2人が距離が近くないか?」
「気のせいだろ。それよりもダニスだってシズクさんと楽しく仕事できたんじゃないのか?」
ふっふっふってけん制しあって笑いあう。
「お二人は仲がいいんですね」ってリーナさんが言ってくれてお互い離れる。
エルフィナさんが連絡事項を伝えてすぐに出発となった。
レイチェルさんだけは引き下がらなかったので連れていくことになった。
屋台型機甲トラックのことは絶対に口外しないことをエルフィナさんから念押しされていたが、もしばらしたらミナトの料理ずっと禁止って言われて全力で頷いていた。
その日のうちに次の村について、要件を済ましていく。
その調子で次々に村、町を回っていく。
4日目のコッコ村はコッコの飼育しているというので俺とカティアで別行動をとる。
村の中を回って小屋がある家に行ってコッコと卵を買って回る。
何故かカティアがすごく距離が近いし、そわそわしているので気になって仕方がない。
そうやって家を回っていったら途中で少女に手をつかまれる。
「すいません。お兄さん急に失礼なんですがうちのコッコも見てもらえませんか。」
「いいよ。案内してくれるかな?」
そう答えると手を引っ張って村奥の家に連れていかれた。
その家の小屋で買われていたのは普通のコッコ3倍くらい大きなコッコだった。
鑑定ではコッコの覚醒したビッグコッコとなっている。
「これは立派なコッコだね。」
「でしょう。さすがお兄さんお目が高いですね。何羽か買われませんか?」
「買わせてもらいたいけど、親御さんなしで売ってしまっていいのかい?」
「・・・・・・。お父さんはいなくて、お母さんはケガしてるの。だから私が売らないと薬が買えないの。」
うつむいてしまった少女に悪いことをしたような気分になる。
「そうだったんだね、ごめんね。よかったらお母さんのところに連れて行ってくれるかな?」
「・・・・・・。なんで?お兄さんも悪いこと考えてるの?」
急にそんなことを言われるとは思わなかったので一瞬止まってしまった。
横からはカティアの冷たい視線が。
「ミナト様・・・・・・。」
「そんなこと考えてないからね。ただ持ってる薬で治るものか診てみようと思っただけだから。」
「お兄さん薬を持ってるの?でもお金がないの・・・・・・。」
「そんなことは気にしないでいいから。会わせてくれるかな?」
「わかったの。」
そういって家の中へと連れて行ってもらう。
家の中はかなり散らかっていて、この家のお母さんが動けなくなってからこの少女が1人で頑張ってきたのがわかる。
そのまま奥の部屋へと入っていくとベットに眠る細身の女性がいた。
「どうしたのマリー。そちらの方は?」
少女はマリーという名前のようだ。
マリーちゃんはお母さんの所へとかけていく。
「お母さんこのお兄さんが薬を持ってるから会わせてって。」
するとお母さんは苦しそうになんとか起き上がりこちらをにらみつけて
「お帰りください。薬なんて買うお金はうちにはありません。どうせあなたも私の身体を触りたいだけでしょう。ゴホッゴホッ。」
そういってうずくまる。
「お母さん大丈夫?」
「お母さんは大丈夫だからね。」
どうしようかと思っているとカティアが前に出る。
「失礼な方ですね。思い上がらないでください。あなたの身体なんかにミナト様は興味ありません。ただの善意です。私の身体ですら触らないのに。」
あれぇ最後の部分はおかしいよ。
いくら専属メイドでもそんなことはできないでしょう。
「何言ってるのカティア。」
「事実じゃないですか。」
「普通はそんなことしないよ!それとも他のメイドはそんなに触られてるの!」
「エブリンは会うたびにメイドのお尻とか撫でまわしてましたけど。わ、私は触らせてませんよ。」
最後に顔を赤らめてカティアがいうがあれと一緒にされるのは心外な気がするなぁ。
そんなやり取りをしているとマリーのお母さんがふきだした。
「すいません。薬を持っているとマリーに近づいてわたしにちょっかいをかけに来る人が多かったもので疑ってしまいました。診ていただけますか?」
そういって上着を脱いで、胸を手で隠す。
その間カティアによって目はふさがれてました。
そんなことしなくても後ろを向くのに。
カティアが手を離したのでマリーのお母さんに近づくと右胸の横からお腹にかけてひどい状態だった。
横腹の1部はどす黒くなっていて壊死しているかも。
これは小ポーションじゃあ治せない。
この壊死しているところは切って中ポーションをかけるしかないかな。
「このどす黒くなってるところは切らないと治りませんね。かなり痛いと思いますが我慢してください。」
「わかりました。何か嚙ませてもらっていいですか?」
そういうので布を巻いた木の棒をかませる。
そしてポーションを用意して
「いきますよっ」って声掛けしてからナイフで一気に切る。
その瞬間、血が噴き出るがすぐに中ポーションをかけるするとみるみるうちに傷口がふさがっていく。
痛みに耐えた反動でお母さんがベットに倒れこむ。
カティアに濡れタオルで血で汚れたところを拭いてもらい、お母さんには布団をかけて家を出る。
「お母さんもう治ったの?」
「これで大丈夫だと思うよ。あとはこれを飲ませて様子を見てね。」
そう言って滋養強壮ポーションを渡す。
それからエルフィナさんに合流したら今日はここにとどまるといわれたので、結局ビッグコッコを買えなかったので明日もう一度あの家に行ってみようと思った。
次の日にマリーちゃんの家に行ったら元気になったお母さんがいた。
「昨日はありがとうございました。あの薬のおかげでとても調子がいいんです。改めて、私はマリンといいます。」
「マリーだよお兄ちゃんありがとう。」
「どういたしまして。ミナトです。」
「カティアです。」
昨日は買えなかったのでビッグコッコを買いたい旨を伝えるとタダでいいと言われたがそこはちゃんとお金を払って6羽ほど購入した。
ついでに鑑定で見つけた有精卵も売ってもらいティピに預ける。
こうしてコッコ村を後にしたのだった。
次の目的地の前に野営をしてビッグコッコを調理してみたがコッコよりも断然美味しかったのでレイチェルさんは倒れるまで食べ続けてエルフィナさんに怒られていた。
それからは2週間、村と町を回り国の最東端のミド村に近づいていた。
途中で隣国との境にあるミドガルド砦によってからミド村にいくことになった。
砦ではエルフィナさんとリーナさんが大人気でした。
今ミドガルド砦にいるのは第一騎士団で団長はガルシアさんという筋骨隆々なおじさんだった。
夜には宴会を開いてくれるというので料理は俺が担当することになったよ。
大量にコッコを仕入れたばかりなので唐揚げを作ることにした。
塩、醬油、の2種類の唐揚げを大量に揚げていく。
隣でレイチェルさんが物欲しそうにしているので1つだけ口に入れてあげる。
幸せそうに頬張るレイチェルさんをみてなぜか騎士団の皆さんは驚いていた。
そして宴会がスタートしたら唐揚げがどんどん減っていった。
「これは旨いな。いい腕をしているなミナト。レイチェルがなついてるのが不思議だったがこれを食えるならわからんでもない。しかも酒によく合う。」
そう言ってこちらの肩をバンバンたたいてくる。
「はは。ありがとうございます。よかったらこれを少しかけてみてください。」
そういってレモン汁を少し渡す。
「これも酸味が加わってうまいぞ。がははっは。」
大笑いして酒をぐびぐび飲んでいる。
その後ガルシアさんに絡まれ続けて宴会は終わった。
次の日ミド村に向かう最中エルフィナさんが
「ガルシアはエルウッドで唯一私より年上のエルフだ。だから昔の戦争時代も知っていると思うから聞いてみたのだが話したがらないな。」
って教えてくれた。
きっと話したくないような経験をしたんだろう。
そんなことを話しながらミド村に到着した。
ここから鉄の森はすぐ近くだというので今後を見据えて行ってみようと思う。
エルフィナさんにそのことを告げると、「ここにはしばらく滞在するから行ってきていいぞ」って許可をもらったので早速行くことにする。
一人で行こうとしたんだけどカティアは「私も専属メイドとしてついていきます。」って言ってついてきた。
森の前までやってきたが昔のゲームの時に見た森が広がっていた。
森の入り口に転移用の印をつけてから入っていく。
少し行くとゴブリンが出てきたがカティアが槍で貫いていく。
それからはゴブリン、コボルト、ウルフと次々に出てきたが全てカティアが倒してしまった。
奥へと進んでいくとオーク、ホブゴブリン、オーガと段々と強くなってきた。
カティアでは厳しくなってきたので棍棒を取り出して倒していく。
基本的にはチュートリアルの時のオークより数段弱いので楽ちんである。
倒しながら進み続けていたらカティアが倒れてしまったのでここで野営することにした。
周囲をロウガーに警戒してもらい火をおこして休む。
目を覚ましたカティアに「きつかったんだったら言ってくれればいいのに」って言ったら
「レベルアップしすぎて倒れてしまいました。」
っていわれてちょっとハイペースで狩りすぎたようだ。
しかも俺とパーティー組んでるので経験値取得10倍もあって一気に10くらいレベルアップしたみたいだ。
反省して気を付けないと。
森で一夜を過ごして次の日カティアさんはレベルアップしたというだけあって昨日は苦戦していたオークやオーガも倒していた。
さらに奥に入っていくとミノタウロスがあらわれた。
ついに牛を見つけた、と思ったらテンションが上がってきた。
とりあえず一匹倒してから、2匹は気絶させてティピに預けて飼育することにする。
それからはまたカティアが倒れるまでやってしまった。
その時カティアは「ミナト様は肉屋が肉を見るような目でミノタウロスを狩っていたと」呟いた。
仕方ないじゃんこの世界でまだ牛肉を見たことないんだから。
その日の夜は解体したミノタウロスの肉をステーキにしてみた。
味付けは塩、胡椒だけだったが
「あのミノタウロスがこんなに美味しいなんてびっくりです。」
ってカティアはおかわりをしていた。
俺も美味しすぎて4枚も食べてしまった。
カティアの話では北のローランディア王国では、ブルという牛のモンスターがいるらしいがその肉はこのミノタウロスよりも硬くて食べにくいそうだ。
今度はステーキソースも用意して食べようと思った。
次の日はさすがに狩りはやめて帰る方向に進んだ。
こういう時はマップが便利だ。
もう一日かけて森を抜けると日が暮れていたので野営して、次の日の昼にミド村に戻ったら何か雰囲気がおかしいことに気づいた。
村長の家に向かう途中とリーナさんが走ってきて、
「ミナトさん大変なんです。モンスターが、それで義伯母様が・・・・・・。」
「ちょっとリーナさん落ち着いてください。まずはこれをどうぞ。」
そう言って水を飲ませる。
「ごめんなさい。」
落ち着いたみたいなので「何があったんですか?」と改めて聞いてみる。
「昨日の夜にミドガルド砦のガルシア団長から義伯母様に応援要請があったんです。なんでも隣の国の騎士がこちらに引っ張って来たとかで、しかも大型のボスモンスターもいるので手に負えそうにないから至急来てほしいと。それで義伯母様はレイチェルと一緒に先に村の馬で行かれました。」
エルフィナさんなら大丈夫だと思うけど一応追いかけてみるか。
「わかりました。すぐに追いかけましょう。」
そう言って村を後にする。
--------------------------------------------------------------------
時刻はミナトが村についたころ、砦では激しい戦闘が行なわれていた。
ガルシアは声を張り上げ部下を鼓舞しながら戦っていた。
エルウッド王国の精鋭第一騎士団といえども襲来するモンスターの多さに少しずつ苦戦し始めていた。
この群れを引っ張って来た隣国アーカードの騎士も奮戦しているが厳しい状況だ。
そこに大型のボスモンスターがあらわれた。
「愚かなる人間ども。今は亡きわが主の遺産に手を付けた報いを受けてもらうぞ。」
そう言ってボスは雷撃を放ってきた。
これにより砦は半壊して、負傷者が一気に増えた。
ガルシアがボスに攻撃するがあまりきいてないようだ。
ガルシアがボスの攻撃で吹き飛ばされたところでエルフィナとレイチェルが駆けつけてきた。
「大丈夫かガルシア。」
「なんとかなだが相当厳しい。砦もあのざまだ。全滅もありうる。」
「私が行くからお前は下がれ。レイチェル、ガルシアを運んでくれ。」
「了解。」
「いやいい自分で行ける、それよりもレイチェルはほかの団員のカバーを頼むこのままじゃ死人が出そうだ。」
ガルシアがゆっくり下がる間にレイチェルは大剣を構えて走っていく。
そして次々にモンスターを屠る。
エルフィナはボスへと対峙する。
「よりによって幻獣の麒麟とは。誰かが遺跡の主の宝に手を出したか。」
そう呟いて剣と盾を構えて
「麒麟よ聞いてくれ。お前の主の宝に手を出してしまったことは謝るから怒りを鎮めてくれないか。」
「ふざけるな!貴様らが謝ろうがあれは戻ってはこない。」
そう言って前足をふるう。
それを何とか受け止めて反撃に出るがわずかなダメージしか与えられない。
「くそ、足さえ万全ならば倒せるだろうに。」
そうエルフィナは片足を失った際に能力値が本来の半分になってしまっていた。
しばらく麒麟と打ち合いを続けるが倒すのは厳しい。
大技を撃ちたいが隙がない。
そこへレイチェルが駆けつけてきた。
「レイチェルすまないが時間を稼いでくれ。」
「了解。」
レイチェルが麒麟に攻撃を加えていく。
そのすきにエルフィナは契約している幻獣シルフィードの力を借りてオーラを練り上げる。
「レイチェル離れろ。くらえ真空烈漸!」
同時に麒麟も技を放つ「斬撃雷爪!」
技がぶつかり合い、押し合うさなかエルフィナの義足が耐え切れずに折れる。
エルフィナは技の余波を受けて吹き飛ばされていく。
「ぐはっ。やはり無理だったか。」
ダメージが大きすぎて立ち上がれない。
エルフィナが敗れたことにより士気が大きく落ちる。
すべての騎士に絶望が襲ってくる。
「こんな所で終わるとは、ミリアリアすまない。守れなかったよ。」
「残念だったな。貴様が万全であれば我が敗れていたかもしれんがな。せめて苦しまないようにしてやろう。」
そういって麒麟が爪を振りかぶる。
諦めて目を閉じるが一向に攻撃は来ない。
眼を開けるとそこには、この世界に来て日の浅いミナトが立っていた。
-------------------------------------------------------------------
リーナさんを連れてミドガルド砦に向かうと砦はすでに半壊していた。
砦の外ではまだ戦闘の音が聞こえてくる。
しばらくして負傷したガルシアさんが戻ってくる。
「リーナ様お逃げください。ここは多分もう駄目です。エルフィナが今戦っているが厳しいでしょう。」
「そんなに状況は悪いのですか?」
「今まで対峙したことのないボスクラスです。今のエルフィナでは・・・・・・。」
そういって倒れそうになる。
とっさに支えてから、よく見たら鎧はボロボロでそこかしら傷だらけだった、急いで中ポーションを飲ませると呼吸が落ち着いてきた。
ガルシアを寝かせてから砦の外に出ると見えるのは麒麟だった。
確かにあの麒麟はゲームの時に上位プレイヤーの小烏丸さんが連れていたような。
現状はわからないがレイチェルさんが足止めしてエルフィナさんがオーラを練り上げているのが見える。
おそらく風の幻獣の力だろう放出されるオーラが緑色に代わっていく。
そして技が放たれて技と技がぶつかって激しい風が辺りに吹き荒れる。
飛ばされないようにリーナさんとカティアを抱き寄せる。
見えたのは義足が折れ飛ばされたエルフィナさんだった。
「義伯母様ぁ。」
倒れて動かないエルフィナさんを見てリーナさんが叫ぶ。
麒麟がエルフィナさんに近づいていく。
「嫌あ、義伯母様が殺される。だれか・・・・・・。ミナトさんお願いですから義伯母様を助けて。」
そういって泣きじゃくる。
「ミナト様でも流石にあれは・・・・・・。」
覚悟は出来ているリーナさんを助けると決めた時から。
そして今リーナさんが泣いている。
「任せてリーナさん。必ず助けて見せるから。」
そう告げて麒麟のもとへ駆けていく。途中でライガーに飛び乗って一気に加速する。
麒麟の足が振り下ろされる前にライガーが体当たりで吹き飛ばす。
ライガーから飛び降りてエルフィナさんの前に立つ。
「エルフィナさん助けに来ましたよ。」
啞然としているエルフィナさんは
「遅いぞ。」
って言い返してきた。
「あとは任せてくださいな。何とかしますから。」
「そうか、頼む。」
そう言ってレイチェルと下がっていく。
その間ライガーと麒麟が打ち合っている。
フルアーマーユニットを出して「トランスフォーム!」と叫んでユニットを装着する。
そしてオーラを開放していく。
麒麟がこちらに気づいた瞬間に大きく跳んで麒麟を蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされた麒麟が驚愕している。
しかしすぐにこちらに向かってくる。
麒麟の攻撃をかわしながら、反撃を入れていく。
隙をついてライガーが麒麟に嚙みつく。
「ぐわあああああ。」
苦しむ麒麟に追撃をかける。
ライガーに砦から遠くへ離すように伝えると、麒麟を大きく投げ飛ばす。
そして全力でオーラを練り上げて飛び上がる。
「くらえ、イナヅマキーック」
渾身の跳び蹴りが麒麟に刺さる。
衝撃で風が巻き起こり、辺りは砂ぼこりで見えなくなる。
麒麟はみるみる小さくなっていく。
「死にたくないでしぃ。」って可愛くなっている。
こうなるととどめを刺しにくい、どうしようかと考えていると『あんたが契約してあげたらいいんじゃない。』
ってティピが言ってくる。
「幻獣って1体しか契約できないんじゃないの?」
『そんなことないわよ。特にミナトはオーラが多いから大丈夫でしょう。』
「そうか、なら麒麟俺と契約するなら助けてやるぞ。」
「契約するから助けてほしいですぅ。でも一つだけお願いがあるの、主の遺跡だけ何とかしてほしいです。」
「まあそれくらいならいいよ。」
そう言って体液の交換をして契約したら麒麟の姿が変わってティピみたいな感じになった。
「名前を付けてほしいですぅ。」
「麒麟は前は小烏丸さんからなんて呼ばれていたんだ。」
「我が主を知っておいでなのですか?主は雷切と呼んでおられました」
「昔に何回か遊んだことがあるくらいかな。そうかでも女の子になってしまったから雷華にしよう。」
「わかりました。これからは雷華とお呼びください。」
こうして新たな仲間が加わった。
ユニットをリリースして戻ると砦では騎士団一同が待っていた。
そしてリーナさんが走ってきたので受け止める。
「ミナトさんありがとうございます。」
「いえいえ約束しましたからね。」
って言ってたら騎士がみんなやってきてもみくちゃにされてしまった。
こうして騒動は終わったのだった。
麒麟に関してはエルフィナさんが第一騎士団全員で討伐したことにしてくれた。
これで大騒ぎにはならないだろうと安心していた。
後日、王都では第一騎士団への褒賞が用意され式が行われた。
その時にミリアリアさんが
「今回我が国の英雄エルフィナのピンチを救ったミナトと我が娘リーナを婚約させることにした。」
なんて宣言したものだから大騒ぎになってしまった。
これからどうなるのだろうか・・・・・・。
ブックマークありがとうございます。




