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もう一度覚悟を決める

14話


王都エルウッドに帰ってきてから1週間が過ぎた。


今は王都を発つ準備を終えてリーナさんを待っているところだ。


さてその間にあったことを思い出してみる。


まずはミリアリアさんにお礼を言われた次の日はゆっくりと過ごすことができた。


次の日に呼び出されてエルフィナさんの執務室に行くとカティアがメイド服姿で待っていた。


「彼女には今日から暫定的にミナトの専属メイドとなってもらうことになった。」


「えっ、なんで?何があってそうなったんですか?」


「カティアはミナトが連れてきた。だからミナトの責任以上。」


「うそでしょう?本当にそれだけなんですか?」


エルフィナさんがニヤニヤしながら言ってるから噓だと思うんだけどなぁ。


カティアさんまで噓なきみたいなふりして「嫌なんですか?」って言ってくるからとっさに「いやじゃないです!」って答えてしまったよ。


「まあ冗談は置いといて実際問題カティアはダブリン侯爵の所には戻れんだろう。リーナを助けるためとはいえエブリンに逆らったんだ、戻ったとしてもまともな扱いは期待できない。家にもまだ帰れないそうだからこちらで世話してやるのが筋だろう。」


今度はまじめな雰囲気をだしている。


「まあそうでしょうね。カティアさんが時間を稼いでいなかったら、俺も間に合わなかったかもしれないですから感謝しかないです。」


「そこで私たちも誰かの専属で雇おうと考えてカティアに聞いてみたらミナトがいいというんで決定したわけだ。」


「あれ、そこは本気だったんですね。」


「さすがにそんなことで噓はいわんよ。感謝しているんなら、当然受け入れてやるんだろう。」


「カティアさんはそれで本当にいいの?俺の専属になっても将来のためにならないと思うけど。」


「はい。よろしくお願いします。」


と言って近づいてきて耳元で「私の裸を見たんですから責任取ってくださいね。」って囁かれた。


あれは不可抗力だと思うんでその点は後々話し合おう。


「それで要件はまだあってな。1つはリーナの巡業はまだ終わってないので早急に再開せねばならんという点だ。」


「まあダブリン達のせいで途中で止まってますもんね。」


「そいうことだ。それでなんだが引き続きミナトに同行してもらいたい。」


「もともと同行していたので、それはいいんですけどカティアさんはどうするんです?」


「もちろん彼女はミナトの専属メイドとして同行してもらって構わない。そこは話し合ってくれ。」


「わかりました。じゃあ返事はあとでいいから考えておいてくれる?」


「はい。ご主人様。」


いきなりご主人様って言われるとどうしたらいいかわからないぞ。


「カティアさんもっと気軽にミナトさんで、なんなら呼び捨てでも。」


「・・・・・・。ご主人様こそカティアさんではなく呼び捨てでお願いします。」


「・・・・・・。そこは後で話し合おう。」


俺とカティアさんの間で妙な空気が流れ始めたとき


「ゴホン。そろそろ次に移っていいか?」


「すいません。どうぞ。」


「もう1つは残りの巡業にミナトの力を貸してほしいということだ。今回聞いた話だとエルウンから2日くらいで帰ってきてるじゃないか。それを使わせてほしい。もちろんリーナもカティアもその件は何も言ってない。私の推測だ。」


「まあエルフィナさんなら、色々勘づくんじゃないかと思ってましたからばれるのは仕方ないですね。でもあんまり公にしたいわけでもないんですが。」


「ミナトの気持ちもわかるつもりだ。だからそれなりの対価を用意するつもりだ。」


「それは期待してもいいんでしょうね。」


「もちろんだ。」


笑顔でそういうエルフィナさんを信じるしかない。


まあそれにいつかは使ってばれるもんだし、その時に後ろ盾はあったほうがいいだろうと考えて了承しておく。


「ではいつくらいに出発しますか?」


「すぐにと言いたいが準備に時間がほしい。それにリーナのケアもしないといけない。だからまた連絡する。」


「わかりました。」


そう言って執務室を後にするとカティアさんもついてきた。


専属メイドになるらしいのでいいのか?と考えながら部屋へ帰ろうと歩いていると前からグスタフさんがやってきた。


「いいところにいるじゃないか。ちょっと付き合ってくれ。」


そう言ってこちらの返事も待たずに厨房に連れていかれた。


グスタフは厨房につくやいなやコッコのスープの試作と言って口にスープを突っ込んできた。


「あちちちちち。熱いわ!」


「すまんすまんついあせってしまった。」


焦っても人の口に熱いスープをいきなり突っ込むのは勘弁してほしいもんだ。


口の中をやけどしたのでポーションを飲んで回復する。


「おいおいミナト君そんなもの飲んだらスープの味がわからなくなるだろう。」


自分で原因を作っておいて非難するのはどうだろうか。


「大丈夫。」だと言ってスープを器によそう。


飲んでみたが昔の塩辛いだけのスープよりは全然うまいと思う。


カティアさんにも飲ませてみたがダブリンのとこのより美味しいそうだ。


「よかったあ。何回も改良してるんだが不安でな。みんな旨いって言ってくれるんだがミナトの飯を食った後だと自信が持てなくてな。」


「もうちょっと丁寧に出汁とりしたらもっと良くなると思うけど。」


「そうか分かった。といってもコッコがそこまで出回ってないからなあ。」


「そんなにコッコって出回ってないのか?」


「まあコッコは1部の村で育ててる程度だからなかなか入ってこないからなあ。」


「そうなんだ。」


まあこの辺でのメインは角うさぎとボアらしいから仕方ないのか。


グスタフと別れて部屋に帰ってくると、


「これからどうされますかご主人様。」


ってカティアさんに聞かれて


「いやいやカティアさんさっきも言ったけどそのご主人様ってのやめて。」


「ではミナト様でどうでしょうか。それとミナト様もカティアでお願いします。」


「・・・・・・。分かったよ。じゃあそれでいいよ。」


カティアからは強い意志を感じたのでもうご主人様じゃなければいいやって考えよう。


「特にこれといってやることもないんだけど。」


「もしかしてミナト様は無職なのでしょうか?」


痛恨の一撃、カティアの言葉に大きなダメージを受ける。


ミナトは膝から崩れ落ちた、そこへ『こんな可愛い女の子に無職がばれちゃったわね』というティピの追撃。


ミナトは瀕死の状態だ。


「申し訳ございません。軽い気持ちでいってみたのですが、そんなにショックを受けられるとは思わなかったので。別に無職でも問題はないのですよ。」


そういってカティアは慰めてくれる。


「いやいいんだ。本当のことだから。」


「あれだけの力をお持ちのミナト様がなぜです?」


「そっかカティアはダブリンのとこであったのが初めてだから知らないんだ。」


と言ってカティアにこれまでのことを説明していく。


「ミナト様も大変だったんですね。」


「そういうわけで仕事もこれからなんだよ。」


「私もお手伝いしますから安心してください。でもミナト様が冒険者をされるときはどうしましょうか。」


「何か考えてみるよ」とか話しているうちに夜になって、そこでもひと悶着あった。


カティアがお風呂についてきたのだ、しかもメイド服を脱いでバスタオル一枚で。


必死に抵抗して拒否したのだがサラさんと結託して結局全身洗われることになってしまった。


お風呂に入ってすっきりしたのだが、カティアが近くにいると恥ずかしくなってくる。


カティアを見ると少し顔を紅くしている。


それなら1人でゆっくりさせてほしいものだ。


寝る時間になったのでカティアも部屋に帰っていった。


今後のことも考えて転移でチュートリアルの世界に来た。


そこでいろいろと準備をする。


最近はティピがここの空き地に向こうの植物の種とか持ってきて栽培して調味料を増やしている。


さらに果実なんかも現在栽培中だ。


世話は主にG-1がやってくれている。


またライガーとロウガーによって狩られているオークとハイオークも一向に減る気配がないので、どんどん解体してスープとチャーシューにしていく。


ラーメン屋開店準備もばっちりというわけだ。


今回はここでガチャポンにチャージを行い、どんどん回す。


そして前から考えていた通信機もどきを作ってみる。


ライガーを呼ぶときの技術をもとにオーラを流したら音声だけ伝わるようにパーツを作っていく。


しばらくしたらティピが戻ってきたので、


「ここって俺以外は来れないのか?」


『自力ではあんた以外の人族は無理ね。動物とかは持ってこれるけど。』


「自力じゃなければ来れるってことか?」


『そうね。連れてくるためには条件があるけれど。』


「条件ってなんだ?」


『1つはミナトとの深いつながりね。もう1つはあたしの許可ね。両方満たさないと連れてこれないわ。』


「例えばカティアを連れてくるにはどうしたらいいんだ?」


『連れてきたいの?』


「だから例えばだよ。」


『フーン。まっいいけど。そうね連れてきたかったらカティアと体液の交換をしてミナトとの繋がりを作って、そうしたら私がここへ入る許可を出すことになるわね。』


なかなか難易度が高いようだ。


まあでもそうかそれくらいの関係の相手以外は連れてくるべきではないな。


色々と秘密も多いから気を付けよう。


ということでここでの活動はティピに任せっぱなしになりそうだ。


次の日にはルシードとして冒険者ギルドに行ってオークを売ってくる。


少しでも多くの人にオーク肉を食ってほしいからな。


カティアに関してはエルフィナさんのところでミナトの手伝いと称して仕事をしてくれるようだ。


その後簡単な依頼をこなして2日ほど過ごした。


4日目


その日は朝からエルフィナさんに呼び出されて、帰って来てからリーナさんの元気がないから気分転換させてくれって言われたのでどこかへつれだすことにした。


カティアに聞いたら王都から少し北西に行ったところに景色のいい丘があるというのでピクニックに行くことにした。


厨房へ行ってお弁当を用意する。


それからリーナさんを誘って出かけた。


変装したリーナさんも久しぶりに見るが寝不足なのか顔色が少し悪い。


門を出て北西へと向かう。


「顔色が悪いようですけど大丈夫ですかリーナさん?」


「ご心配をおかけしてすいません。ですが大丈夫ですよ。それと今はミーナと呼んでくださいね。」


「もしつらくなったら言ってくださいね。」


「ありがとうございます。」


ほんとに辛くなっても言わない気がするのでこちらで気をつけておかないと。


30分くらい歩いて丘を上ると大きな木があったのでそこでゆっくりすることにしてシートを敷く。


そこから見える花畑はとても美しかった。


「ここはいつ来てもきれいですわ。」


「ここにはよく来られるんですか?」


「普段は公務もありますからそんなにはこれませんけど、ミナトさんが来られる前はシズクが気分転換にたまに連れてきてくれました。」


「そうでしたか。じゃあもっと違うところのほうがよかったですか?」


「いいえ、ここは気に入っている場所ですから。」


「それなら良かった。」


こうして話を聞くとまだまだリーナさんのこと知らないんだと感じるな。


「今日は、お弁当を作ってきたので一緒に食べましょう。」


「お弁当とは何ですの?」


「出かけたりするときにもっていく携帯食みたいな感じですね。」


そう言ってシートの上にアイテムボックスから箱を出していく。


メニューは定番だがおにぎり、だし巻き卵、タコさんウインナー、コッコの唐揚げ、アスパラのベーコン巻、野菜スープ、後はデザートにフルーツのタルト。


「とてもおいしそうですね。」


「どうぞ好きなものを食べてください。これお手拭きです。」


「いただきます。」


そう言って野菜スープを少し飲んでリーナさんの手が止まってしまう。


「もしかしてお口に合いませんでしたか。」


「そんなことはないんですが、最近あまり食欲がなくて。せっかく作ってくださったのにごめんなさい。」


「謝る必要はありませんよ。もしかしてあまり眠れてないんじゃないですか?」


「お恥ずかしい話なんですが、あまり寝てないんです。」


「良かったら寝れない原因を話してもらえませんか?なにか力になれるかもしれません。」


そういうとしばらく無言の時間が流れる。


焦らせないようにじっと待ってみる。


こちらが変な態度になると空気を察して話しにくくなるからじっと待つ。


待つのは得意だ、なんせ日本では部下の悩みを聞くことも多かった。


そうして10分くらいたったころ。


少しうつむきながら「最近寝ようとすると夢に出てくるんです。それが恐ろしくて。」


ゆっくりと語りだすリーナさんの話に耳を傾ける。


こういう時は焦らせないのが肝心だ、つまらなそうな顔とかは絶対してはいけない。


「何が出てくるんですか?」


「夢にエブリンが出てくるんです。そして毎回私に襲い掛かってきます。」


あの日の経験がよみがえってくるのだろう。


「毎回抵抗するんですがその度に殴られて。」


そういうリーナさんの目には涙が溢れている。


「その後、お、お、押したお、」


震えているリーナさんを抱き寄せて頭に手をおく。


「言いたくないことは言わないでいいですよ。」


「こんなことで情けないですよね。でも怖くて。自分でもなんとかしようとするんですけど・・・・・・。」


今、傍にシズクさんがいないことも堪えているんだろう。


シズクさんがいてくれたら1人で寝なくてもいいだろうし、すぐに優しく抱きしめてくれるだろう。


ミリアリアさんもエルフィナさんも毎日忙しいのがわかってるから頼れず苦しんでいるんだ。


「リーナさんは毎日りっぱにたたかっているんですね。そういうのって他人にはわからないですもんね。」


そう言うとリーナさんは泣き出してしまう。


抱きしめて頭をなでていると寝息が聞こえてきた。


誰かに言えて安心したのかもしれない。


膝上にリーナさんの頭を載せてそっとマントをかけてあげる。


『彼女も大変ね。何とかしてあげなさいな。』


ティピが言ってくるが俺が何かできるだろうか。


彼女はこの国のプリンセスで、俺は何も無い一般人だ。


うかつなことはしてはいけない気がするんだが。


『何か問題になっても責任を取る覚悟があれば大丈夫でしょう。前にカッコよく助けるって言えたんだから。そんなとこだけおっさんぽく考えないで覚悟を決めなさいな。じゃないとその力は宝の持ち腐れよ。』


大きい力は扱うには責任と覚悟が伴う、だからといって女の子が泣いているのに、この世界に来てすぐに良くしてくれたリーナさんのために使わないならエブリン並みにくそ野郎な気がしてくる。


前に覚悟は決めたんだもう何があっても責任は取ると新たに覚悟を決める。


「ありがとうティピ。」


『いいのよ。私とミナトは一蓮托生なんだから。あんたが迷ったり逃げ腰になったらいつでも気合を入れてあげるわ。』


この世界に来てチュートリアルをとってティピに会えて良かったと心から思う。


日が暮れる少し前にリーナさんは目を覚ました。


俺と目が合った瞬間に顔がまっ赤になっていく。


「よく眠れましたか?」


と言うとあわてて跳び上がり「す、すいません。重くなかったですか。」と言いながら距離をとるリーナさん。


「大丈夫ですよ。可愛いリーナさんの寝顔を見れて役得でした。」


いっそう顔が赤くなっていくリーナさん。


そんなリーナさんにそっと近づいて手を取る。


びくっとするリーナさんに「今度からうなされたら俺を呼んでください。」


て言ってペンダントを渡す。


「これは・・・・・・。」


「これは遠くの人と会話できるものです。」


「大国にのみある通信機と同じものですか?」


少しリーナさんの目つきがきつくなる。


おっとそんなものがあるとは知らなかった。


「そんなものがあるとは知らなかったですが似たものですね。」


「基本王族以外は知りませんからびっくりしました。どこで知られたんですか。」


ちょっと疑われているかも


「召喚される前の世界では普通にあったものなんですがこの世界にもあるとは思わなかったです。」


「そうでしたか一瞬疑ってしまってすいません。そうですよねミナトさんは召喚者でしたよね。」


すぐに信用してくれるのもどうかと思うが、


「いいんですか。そんなに簡単に信じて。」


「ミナトさんのことはそれなりに知っているつもりですから。」


「それならいいんですけど、じゃあ使ってみましょうか。確かリーナさんもオーラを使えましたよね?」


「使えますわ。シズクほどは無理ですが。」


「それなら大丈夫です。俺は離れますからペンダントの先に付いてる石にオーラを流してみてください。」


そう言って丘下までおりるとリーナさんの声が聞こえてきた。


「聞こえますかミナトさん。」


「よく聞こえますよ。」


作ってみたが試してないからちょっと心配だったが大丈夫みたいだ。


木のところに戻ると


「こんなものをいただいていいんですか。」


「いいですよ。寝れないときはいつでも呼んでください。といってもこのペンダント俺以外にはつながらないんですけど。」


「ありがとうございます。でも本当にいいんですか。呼んじゃいますよ。」


「いつでもどうぞ。それでリーナさんが元気になれるんなら喜んで駆けつけますよ。」


「私の部屋に夜に来ているのがばれたら大変ですよ。それでも頼っちゃいますよ。甘えちゃいますよ。」


「リーナさんが嫌じゃなければ責任を取る覚悟もありますよ。」


「ミナトさんは私に優しすぎです。」


「俺で嫌なら専属メイドのカティアに行かせますよ。」


「最後のは不合格です。」


そう言って唇を尖らせる。


「カティアさんも同じ思いをしてると思うんで支えてあげてくださいね。」


そう言われて確かに彼女も事件の被害者だったことを認識した。


昼は明るくふるまってるから気付かなかった。


「リーナさんも優しいですね。」


「彼女も私の恩人ですから。」


「さてそろそろ帰らないとエルフィナさんに迎えをよこされそうだ。」


そう言って笑いながら帰ったらエルフィナさんに怒られたのだった。


次の日カティアにもペンダントを渡しておいた。


事情を言ったら「それはミナト様に気づいてほしかったです」って唇を尖らせていた。


それから2人に何度か呼び出されたがまあそれはおいておこう。




そして今に至る訳だがリーナさんとカティア、そしてエルフィナさんがやってきた。


「あれエルフィナさんも行くんですか?」


「何か問題でもあるのか?」


「いいえないですけど。王都から出て大丈夫なんですか?」


「ミリアリアが何とかするだろう。それよりも今回は急ぎだからな私も行ったほうがいい。」


そう言って馬車に乗り込むのだった。

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