アーカード王国編 1
136話
アーカード王国は特殊スキルを持っていて、住んでいた国を追われた者たちが集まって作られた総人口20万くらいの小さな国である。
農業はそれなりに盛んで他国へと麦、野菜を売ることによって他の物資を購入している。
最近そのアーカード王国に難民が流れて来ている。
難民自体は毎年やってくるから珍しいものでもないので、最初は誰も気にしていなかった。
しかしここに来て様子が違うことにアーカード王国第二王子で大臣の一人グランが気が付いた。
グランはすぐに調査を開始したがそのころには難民の数は1万人を超えていて、国内の物資の流通に支障が出始めている状態にあった。
王都以外ではまだ問題の報告はあがってきていないが、王都では物資の量がお幅に減っている。
それもそのはずグランが気づくまで役人達はいつも通りに難民に物資の提供をしていたのだから。
グランはすぐに支給品の調整に入ったが、残りの物資はどう計算しても冬を乗り切るには足りない。
近隣の国へと売買する量を減らそうと交渉したが、急に予定量を減らされては困るという返事があったので、では多めに買わせて欲しいと伝えたがまだ返事はない。
それだけでも頭を抱えてしまいたいのに、難民の住む場所が足りなくて、難民たちが広場や空き地を占拠しているとの訴えも起こっている。
王都では毎日大臣たちが対策に追われている。
「グランよ、難民問題は何とかなりそうか。」とケイン王が尋ねる。
「父上、申し訳ありません。未だ解決のめどは立っておりません。このまま冬を迎えると住民の大半が飢えることになってしまいそうです。」
「ふむ。それは困ったものだ。」
「さらに難民も増え続けており、町や村に割り振っているのですが受け入れきれずにあふれてしまいそうです。」
「それなら難民の村を作るために国土を広げるのはどうだろうか。」
「それも検討していまして、只今ケイオス兄上が騎士団を率いて森へと向かう準備をしています。」
「朗報を待つしかないな。」
この後、アーカード王国第一王子で騎士団長でもあるケイオス・アーカードが国土を広げるために森へと騎士団を率いて侵攻するが負傷者が増えるばかりで成果はあがっていない。
むしろ物資を消費するだけの結果に終わっている。
さらに悪いことに難民は止まることなく増え続けている。
近隣の諸国からの援助も期待できない状況でグランは一つの決断をくだす。
それは大国エルウッド王国で貴族の側室になった妹、プリシアに頼るという決断である。
最近エルウッド王国は大きく発展しているという噂だからもしかしたら援助してくれるかもしれない。
しかしこれは微妙な手であることはグランが一番理解している。
仮に援助を受けられたとして、あまりにも大きな借りを作ってしまうとアーカード王国の立場はなくなってしまうことになってしまうだろう。
だからこそエルウッド王国の女王陛下に直接頼むことはできない。
それでも何か手を打たないとアーカード王国の民が飢えることになるのだ。
グランは自らの力が足りないことに悔しさを憶えながら筆をとった。
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・・・・・・。
手紙をプリシアに出してから1ヶ月が経過した。
そろそろ手紙がプリシアのもとに届いただろうか。
国内にいる難民は2万に達しようとしている。
このまま冬を迎えると多くの住民と難民が飢えに苦しむことになるだろう。
最悪なのは住民が決起して内乱状態になることだ。
今はまだ各町や村に難民を割り振って何とかなっているが、少しずつ不満は上がってきている。
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・・・・・・。
さらに1ヶ月が過ぎた。
未だにプリシアからの返事は来ない。
近隣の国に嫁いだ妹からわずかではあるが物資が届けられた。
これにはケイン王、グラン、大臣たちも喜んだ。
問題が解決したわけではないが、それでも朗報と言えるだろう。
さらに良い報告があった、それは今年の収穫が例年よりも多くなりそうだということだ。
これでもしかしたらと喜んだのもつかの間、悪い報告がやってきた。
兄のケイオスが森で地竜に遭遇して負傷してしまったのだ。
唯一の救いはケイオスが死ななかったことだろう。
この報告を受けて領土の拡大は絶望的になり、皆が気落ちしてしまう。
それから3週間が過ぎた頃、プリシアからの手紙がやってくる。
これが良い返事なのか悪い返事なのかは開けてみないと分からない。
手紙を受け取ったグランは、手紙を読むために部屋へと戻って行った。
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