ダニスも頑張る
少し短めです。
13話
時を遡ってエルウンを脱出しミナトたちが湖でやすんでいるときダニスは馬に乗って必死に走っていた。
ミナトから聞いたことは衝撃だった。
侯爵家のバカ息子がリーナ様を襲って、ミナトがボコボコにしたっていうんだから大変だ。
兎にも角にも急いでエルウンの様子を確認しなければならない。
俺はレイチェル団長に事情を説明して、盗賊討伐から抜けさせてもらい一足先にエルウンに向かうことにした。
しかし昼間の盗賊討伐にも走りっぱなしだった馬がもたなくて結局到着したのは昼前だった。
都市の門は壊れていて修理中でかなりの数の兵士が対応に追われていた。
騎士である俺は腕章を見せて中に入れてもらう。
ダブリン侯爵の屋敷へと向かう最中、街の中はダブリン侯爵の噂話で満ちていた。
ダブリン侯爵に天罰が下って屋敷が壊された、ダブリン侯爵が内通していたことがばれて襲われた、息子のエブリンが部下の妻に手を出しすぎて内乱になった、国境の奥、鉄の森からドラゴンが表れて屋敷を襲ったといった感じで市民はうわさ話に興じていた。
とりあえず急いで屋敷に行って驚愕することになった。
本当に屋敷が半壊していたからだ。
屋敷に近づこうとしたら警備兵に止められてしまった。
「申し訳ありませんが危ないので近寄らないでください。」
「私はエルウッド王国第三騎士団分隊長のダニスである。中を見たいので通してくれ。」
そう言って腕章を見せると通してくれた。
中に入ると取り乱したシズクさんがいて俺を見かけると走ってきた。
「大変なんだダニス屋敷が壊れてリーナ様がいなくて探してるんだが見つからないんだ。」
相当混乱しているようだ。
「落ち着いてくださいシズクさん。説明しますから。」
「説明とはなんだ。何か知っているのか早く言え。リーナ様の危機なんだ。まさかダニスお前が犯人なのか。」
こんなに取り乱したシズクさんは初めて見る。
それだけリーナ様のことが大事なんだろう。
「落ち着いてください。犯人は私じゃありませんしリーナ様も無事ですから。」
そういうと少し落ち着いたようだった。
落ち着いたシズクさんは嘆きだした。
「昨日ダブリン侯爵主催のパーティーが行われて私もリーナ様も出席していたんだ。しかし私はパーティーの後の記憶がなくて気付いたら部屋の外が大騒ぎだったんだ。」
これだけのことがあったのに気づかないとは何かがあったんだろう。
薬とか防音結界とか、今は考えてもわからないが。
しかし一つ言えるのはこんなシズクさんも可愛いなぁってことだ。
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(回想)
以前からずっとシズクさんに憧れていた。
彼女はこの国の英雄と言っていいエルフィナさんの娘で若くして近衛の副団長になった人だ。
エルフには珍しい長くて美しい黒髪で身長は170ないくらいだろうか。
胸は平均より少し小さいくらいかな?私的には十分だと思う。
そんな彼女がリーナ様のおつきのメイドになった時は驚いた。
きっと将来の全騎士団の団長になると思っていたから。
私が彼女に初めて出会ったのは王城で開かれた殿下のお披露目パーティーの時だった。
その頃は私もシズクさんもまだ子供で父がエルフィナ様へあいさつに行ったときに元気に「私はシズクです。よろしくね。」って言われて恥ずかしくて「ダニス。よろしく」って言って後で父に怒られたのを憶えている。
次にシズクさんに会ったのは私が新米騎士になった時だった。
その頃はまだシズクさんも騎士団にいて初めての訓練の前に先輩として新米への激励の言葉を壇上で述べていた。
その時のシズクさんは凛々しくてドキッとした。
その後はずっとシズクさんを見かけることはあっても声もかけれなかったんだ。
でも一度だけ新米騎士の訓練後の居残りで倒れていた私に「頑張れよ」ってタオルをくれたんだ。
それからは余計にシズクさんのことが気になっていたがチャンスはなかった。
なぜならシズクさんは近衛の副団長になったからだ。
しかし事態は変わった。
ガチャガチャの神殿が起動されて異世界から呼ばれたミナトが連れてこられた。
連絡を受けて神殿の近くの草原まで迎えに行ったのだが眠っていやがったのでなんなんだこいつ偉い図太いやつだなって思った。
そしてミナトの印象は変わらなかった。
普段は遠慮してるのに引きがいいというか、滅多に出てこないリーナ様が訓練所に来られて挨拶されたときにすぐさま友達になってほしいと言って本当になってしまった。
しかもシズクさんとも、その2人は騎士団の連中みんな声かけたくても実行できずに見守ることしかできないのに、うらやましくて、みんな妬みでしばらくミナトの訓練は地獄になった。
ミナトはそれからは訓練休みの日は必ずリーナ様とシズクさんと話すようになった。
私は最初の縁もあってずっと世話を焼いている内に、ミナトのことが分かってきて友達になったが、ほかの騎士たちはミナトに嫉妬してあまり近づかなかった。
そうしたらある日ミナトが明日もリーナさん達に会うんだがダニスもどうだって声をかけてくれた。
嬉しくて浮かれていたのかもしれない。
ミナトにシズクさんに気があるのがばれたような気がする。
それからはシズクさんとも気軽に話せるようになっていった。
(回想終)
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そんな可愛いシズクさんにいつまでも萌えていられない。
「シズクさん大丈夫です。リーナ様はミナトが王都に連れていきました。」
そう言ったらシズクさんに肩をつかまれて揺さぶられた。
「本当だな。それは本当なんだな。」
「シズクさんほんとうですから落ち着いてください。私は盗賊討伐の途中だったんですが、野営の見張りの時にミナトにあってこちらのフォローを頼まれましたから。」
そう言うとやっと手を離してくれた。
そしてミナトから聞いた話をシズクさんにしたら、
「今すぐエブリンの身柄確保に行くぞ。」
と言われて半壊した屋敷に連れていかれてしまった。
中はひどい状態でそこら中でうめき声が聞こえていた。
階段を上り3階の廊下で意識を失っているおそらく服装からエブリンと思われる者が見つかったがシズクさんはいきなり蹴飛ばした。
「お前ごときがリーナ様を襲っていいわけないだろう。いつも気持ち悪い目でジロジロみてきおって。」
さらに何回か踏みつけている。
そしていつの間にかどこから出したのかロープでぐるぐる巻きにしてしまった。
エブリンの顔は本人かわからないくらいに腫れていて判別ができない。
しかしシズクさんは起きろと言わんばかりに平手打ちをしている。
途中で「だぶげ・・・・・・。」って意識が戻った気がしたがまたぐったりしている。
そんなシズクさんを宥めてエブリンを引き摺って外へ出るとダブリン侯爵が駆け寄ってきた。
「お、お前たちわしの息子に何をしている。この屋敷もお前たちの仕業か。」
シズクさんは絶対零度のような視線でダブリンを睨んで
「この不届き物が息子ですか。ではあなたも同罪ですので身柄を確保させていただきます。」
と言ってダブリンを縛りだした。
「シズクさんいきなり縛っては不味くないですか。仮にも侯爵ですし。」
「お前たちワシがだれかわかってるのか!ダブリン侯爵だぞ。今すぐにほどかないと命はないと思え。」
「すみませんが耳の調子が悪くてよく聞こえません。」
シズクさんはそう言って縛った二人を引き摺って牢まで連行したのだった。
私はというと警備隊に協力を求め屋敷のけが人をひとまとめにして治癒師、薬師を集めに街へと奔走していた。
ダブリン侯爵の評判が悪いのかあまり協力的ではない。
おかげでその日のうちに治癒できたのは5分の1くらいで全員重傷だが命の危機はないため焦らずにやることにした。
二日後、盗賊討伐から騎士たちが戻ってきたので事情を説明するとレイチェルさん以外は顔色が悪くなっていた。
もしもダブリン侯爵の企てが成功していたら、将来の立場が約束されたものだったのが失敗しているので今後を考えたら明るくはなれないだろう。
私からしたら同情の余地はないのでしっかりと働いてもらうことにした。
レイチェルさんはずっとミナトが戻ってくるまでご飯が不味いとぶーぶー文句を言っていた。
私はあと1週間しんどかったがシズクさんと働けて満足していた。
そうしてリーナ様たちが戻ってきたのだったが、ミナトの横に知らないメイドがいるのとなんかリーナ様たちの距離が近いような気がする。
いったい何をしてきたのかミナトに問い詰めたい気分になった。




