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王都で過ごす冬14

120話



孤児院の餅つきに参加できることになった翌日、俺は餅に合わせるものを求めてアヅチ国からきている商人を探していた。


折角久しぶりに餅を食べられるのだから色々楽しみたいのだ。


善哉にしたりあんこをつけたり、その為には小豆が必要だけど持っていない。


だからこうして探しているんだけど見当たらない。


一体どこに店を出しているのか、いつもの商店街近くにないとなるとどこなんだろう。


仕方ないからローラと歩いてみることにした。


中央広場からまずは南へと行ってみるけど、南の広場は閑散としている。


冬だから出歩く人が少なくその為屋台なんかも出ていないようだ。


冷たい風が吹いてきて、ローラがくっついてくるから懐に呼び込んでくっついて歩く。


くっついていると寒さが幾分マシになったような気がする。


そのまま西、北の広場を回ってみたけどどちらも閑散としていた。


今日はもう見つからないかもしれないと思いながら、一応東の広場も見てみようと足を延ばす。


東の広場はまばらではあるが屋台が出ていた。


屋台を回っていると「旦那、お久しぶりです。」とアヅチの商人が声をかけてくれた。


「よかった。探してたんだよ。」


「あっしをですかい。」


「そうなんだよ。」


「何かアヅチのものでお探しの品がおありで。」


「小豆を持ってないかと思いまして。」


「もちろんありますよ。ただここには持ってきてないから今日すぐには渡せないんですけどね。」


そう言って屋台の商品を指さしている。


見たところ干物や佃煮を売っているようなので


「じゃあ今ここで売ってるもの全部買うから売ってくれませんか。」


「毎度ありがとうございます。」


全部の商品を受け取ると屋台を押して商店街に向かって移動を始める。


「ところでどうしていつもの店じゃなくて広場で屋台をしていたんですか。」


「お恥ずかしい話なんですが入荷する商品の量を間違えまして、店の中一杯になってしまって商売をする場所がなくなってしまいまして。」


「じゃあ他にも色々買わせてもらいますよ。」


「いやあ助かりますよ。」


と話しているとローラが話に入ってきた。


「たくさん買うので少しくらい値引してくださいますよね。」


「はは、お嬢さんにはかないませんね。」


その後店に着いたら小豆、醬油、米、もち米、ワカメ、昆布、味噌、干した海鮮を大量に購入したんだけどローラが交渉してくれたのでだいぶ安く買うことができた。


それでも店舗の場所がだいぶ空いたので店主は喜んでいたよ。


「ローラのおかげでだいぶ安く買えたよ。」


「ミナトさんは嫌がらないのですね。」


「どうして。ほしいものが安く買えたら嬉しいもんじゃないの。」


「私の知り合いの貴族の男はお金がないのに値引交渉したら嫌がるので。」


貴族のプライドが値引きさせることを許さないのだろうか。


「俺としては嬉しい限りなんだけど。」


と言ったら笑いながら腕を絡めてくっついてきたからそのまま屋敷に帰った。


次の日は朝から小豆を砂糖と一緒に茹でてあんこを作った。


人によって好みの甘さが違うから調整しながらいくつか用意していたら、メイド達がやってきて味見をしたいというから皿にとって渡したら、甘めの方が人気があった。


小豆を茹で終えたら今度はみたらし用のタレを作って、きな粉も用意する。


明日の餅つきが楽しみになってきた。


次の日、リーナ、カティアとプリシア、ローラ、ユカとチヨちゃんを連れて孤児院へと向かった。


「いやあ兄さん、うち餅なんか久しぶりすぎてテンション上がってまうで。」


「だろうね。俺だって楽しみすぎて色々作りすぎちゃったからな。」


「兄様、私もお餅は久しぶりです。」


「チヨちゃんも一緒に楽しもうね。」


そんなことを言いながら孤児院へとやってきた。


「ミナト殿、奥方たちもようこそでござるよ。」


ムサシさんが迎えてくれる。


孤児院の広場ではテーブルが並べてあってその食器なんかが積んである。


中央には2つの餅つきセットが用意されてあった。


リーナ達も準備に参加して俺とムサシさんで最初に炊き上がったもち米をついていく。


「最初は拙者がまわすのでミナト殿がついてくだされ。」


そう言って杵を渡される。


餅つきは初めてやるから緊張するなぁ。


思いっきり振りかぶって振り下ろしたら米ではなくて臼をたたいてしまい手がしびれた。


見ていた子供たちが驚いた後笑いだした。


「ミナト殿、そんなに振りかぶらずともいいでござるよ。」


「すいません。初めてで思いっきりやっちゃいました。」


そこからは振りかぶらずにゆっくりと杵を当てていく。


ムサシさんが上手に合いの手を入れてくれるからスムーズに餅がつきあがった。


それを細かくちぎって丸めていく。


それを皿において子供たちに配ったらテーブルの上にあんこ、砂糖醬油、みたらしのタレ、きな粉を置いて好きに食べてもらうことにした。


その間に次の分をついていく。


子供たちがのどに詰めないように、アンさんやリーナたちが見ていてくれている。


もう一つ空いている杵と臼ではユカとチヨちゃんが餅つきに挑戦していた。


「いくでチヨちゃん。」「どんとこいです。」「そりゃあ。」「はいです。」「そりゃあ。」「痛いですよ。手は打たないでください。」「ごめん。失敗してもうたわ。」


俺もムサシさんの手をつかないように気を付けないと。


次の分ができたので早速リーナたちと餅を食べる。


久しぶりの餅はあんこにつけても砂糖醬油につけてもどれもうまかった。


リーナはきな粉、カティアはみたらしのタレ、プリシアとローラはあんこたっぷりが気にいったみたい。


子供たちはあんこが良かったようだ。


ムサシさんとアンさんは砂糖醬油で食べていた。


ユカはほおばりすぎて、のどに詰めてチヨちゃんに助けてもらっていた。


その後でぜんざいを作ってみたけど、作った分がなくなるまでみんなで楽しんだ。


こうして楽しい一日が終わって、王都での冬が終わりを迎えた。

読んでくださってありがとうございます。


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