王都で過ごす冬13
119話
ミルキーが開店してから2週間が過ぎた。
その間にメリッサさん、リリスとリリイ、アンジェは学園へと帰って行った。
リーナ、カティア、プリシアと一層仲良くなるなか、本格的に冬が始まって王都は雪で真っ白になっている。
今日はリーナは城で仕事、カティアとプリシアもお手伝いに行っているから、ローラと2人でお茶を飲んでいる。
お茶請けにはシュークリームを作ってみた。
「このシュークリームというんですか、とても美味しいですね。ところでどうして3つもあるんですか。」
「中身が違うんだ。ホイップクリーム、カスタードクリーム、両方入りとなってるんだ。今ローラが食べてるのはホイップクリームのやつだね。」
「全部中身が違うんですね。楽しみですわ。」
というローラの頬っぺたにはクリームが付いている。
「クリームが付いているよ。」といってクリームを指で掬って舐めると、頬を赤らめながら「ありがとうございます。」
と言って俯いてしまった。
ローラと出会ってまだ1ヶ月ちょいくらいだけど可愛い、いい子だと思った。
さて昼からは各ギルドへと足を運ぶことにした。
アイアンウッドは人材不足だから職人に移住してもらわないといけない。
ローラも一緒にきて手伝ってくれるみたいだ。
幸いどこのギルドでも冬は仕事が少ないのかぶらぶらしている人材はたくさんいた。
おかげで冬が明けたらアイアンウッドに移住してもいいという職人を確保することができた。
ローラが付いてきてくれたことも大きな一因だったりもする。
余っている人材を紹介してほしいと伝えた各ギルドの窓口の男の対応は最悪だったんだけど、ローラがお願いしてくれたらコロッと態度を変えて、たくさん紹介してくれた。
まあ人材さえ手に入れば文句はない。
そのまま孤児院へと足を運ぶとムサシさんとアンさんが外で何かをしているのが見えた。
「こんにちは。ムサシさん、アンさん何をしているんですか。」
「おお、ミナト殿ではないですか。そちらは」
こちらを向いたムサシさんがローラを見たので「こっちはローラといって俺の奥さんです。」と紹介する。
「ローラと申します。よろしくお願いいたします。」とローラが頭を下げると
「ご丁寧にどうもでござる。拙者はムサシというでござる。こっちは婚約者のアン殿でござる。」
「アンと言います。ミナトさんにはいつもお世話になっております。」
と返してくれる。
「ムサシさんとアンさん婚約したんですね。おめでとうございます。」
「ありがとうでござる。ミナト殿との出会いがなければアン殿と出会ってないと思うと感謝しかないでござる。」と照れている。
「こちらこそムサシさんにはお世話になってますから。それで今は何をしていたんですか。」
「同郷の物からもち米をもらったでござるから餅つきをできないかと木を彫っていたでござるよ。」
「もち米があるんですね。それはいいですね。」
良いことを聞いた、うちの領内でもぜひ栽培して餅を作ろう。
「よかったらミナト殿も参加するといいでござるよ。」
「ミナトさんならみんな大歓迎ですよ。」
「いいんですか。じゃあ餅に合うものを用意しておきますよ。」
「3日後の予定でござる。」
「わかりました。奥さんも連れてきていいですか。」
「もちろんでござるよ。」
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ムサシさんと別れて孤児院の中にお邪魔するとレンちゃんが迎えてくれた。
そして院長室へと連れて行ってくれる。
院長室では院長のジャミスさんが書類とにらみ合っていた。
「ジャミスさんお邪魔します。」
「ミナトさんではないですか。エルウッド孤児院にようこそ。そちらは。」
「こっちは妻のローラです。」
「ローラと申します。よろしくお願いします。」
「エルウッド孤児院、院長のジャミスです。よろしくお願いします。」
「何か書類を見て考えておられたみたいですけど、何かあったんですか。」
「いえいえただ単に役所の方から、孤児を身請けしたい貴族がいるという通知が来たので、考えていただけですよ。」
「役所の紹介ならまともな貴族なのでは。」
「会ってみないことには何とも言えませんね。」
ジャミスさんは以前に身請けしようとした貴族によって疑心暗鬼になっているようだ。
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その後は孤児院の子供たちと遊んで、おやつを一緒に食べて過ごした。
おやつはもちろんプリンを提供したよ。
子供たちは大喜びしてくれて、ムサシさんもなんだかんだ言いながらお代わりしていた。
孤児院を出た後はローラと街をぶらついてみた。
「今日は付き合わせて悪かったね。あんまり楽しくなかったんじゃない。」
「いいえ。今日はまたミナトさんの一面を知れて良かったですわ。」と言って腕を絡めてくる。
ローラの温もりを感じながらそのままゆっくりと歩いて屋敷まで帰った。
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