すぐにはラーメンは販売できないみたいです
10話
さて6人からのお墨付きを得て売ろうと思っていることを伝えたら、
『それを売るなんてとんでもない。』
って聞こえたような気がしたが気のせいに違いない。
求められたらこちらに最優先で提供することを条件に許可が出たのだが、実際に商売をしようとしたら商業ギルドに登録して許可を得なければならない。
次の日の昼から商業ギルドへとやってきた。
昼時なこともありほとんど人がいない。
カウンターには一人だけが残っている状態だったのでそこへと行く。
「商業ギルドへようこそ。私は受付のイリアといいます。」
「どうもご丁寧に、私はミナトと申します。」
「本日ははどういったご用件でしょうか?」
「屋台を出したいので出店許可をお願いしたいのですが。」
「屋台ということは飲食系でしょうか?」
「そうなりますね。」というと何となく難しそうな顔をされた。
「飲食系の屋台は十分数が足りていますので商品によっては許可が下りないかもしれませんね。ちなみにどういったものをお考えでしょうか?」
それでも話は聞いてくれそうなので
「まだ誰も作ったことのない料理だと思います。ラーメンっていうんですが。」
「確かに聞いたことのない名前ですね。」
「じゃあ許可をもらえませんか。」
「ですが私が名前を知らないだけで似た料理を知っている可能性もありますので、もう少し詳しい話を伺っても?」
「説明するのは難しいので一度実物を食べてみてくれませんか?」
どんなものかって言われてもここでの食事で麵を見たことがないので伝わりようがないと思ったので試食を提案してみたがどうだろうか。
「わかりました。ただ今はここを離れられないので、他の職員が帰ってくるまでお時間をいただいてもよろしいでしょうか。」
「ええ大丈夫ですよ。ではまた1時間後くらいにここに来たらいいですか?」
「そうですねそれくらいなら大丈夫だと思います。」
「ではそれくらいに出直してきますね。」
約束を取り付けギルドを出てきたが時間ができてしまったので公園で自前のサンドイッチを食べてお昼をすまし近くの薬師ギルドに行ってみた。
何があるのかと思ったらゲームの時と違って陰気な感じで大したものがなかった。
ポーションも質(並)が最高で回復量は俺の失敗作の不味いポーションにも劣る程度だったので優秀な薬師がいないのだろう。
というかよくこれで対応できているなって思ってしまう。
特上ポーションとかエリクサーがあればエルフィナさんの足も回復するのだろうに。
あっでもエリクサーは課金アイテムだったから手に入らないのかもしれない。
さてそろそろいいかと思って商業ギルドへと向かう。
1時間には少し早いがイリアさんは奥の席で待っていた。
「お待たせしましたか?」
「いいえ、早いくらいですよ。何か必要なものはありますか?」
「できたら熱々を召し上がって頂きたいのですが火を使っても大丈夫なところはありますか?」
聞くとギルドの奥に簡素な調理場があるらしいのでそこを使わせてもらうことになった。
完成したらギルドの奥にある個室にもっていくことになった。
調理場でお湯を沸かして麵を茹でると同時にイベントリーから出したスープを軽く温めるといい匂いが充満する。
器に盛り付けトッピングを載せて、焼飯と一緒にもっていく。
匂いがこっちまで来ていたので部屋に入るとイリアさんはお腹が鳴って顔を赤くしていた。
「お待たせしました。これがラーメンと焼飯のセットです。」
「すいません。お恥ずかしいです。」
「お腹が空いておられるなら存分に味わっていただけると思います。どうぞ。」
「いただきます。」と言ってフォークを手にとって麵をすする。
こちらに箸がないのは織り込み済みなのできちんとスプーンとフォークを用意している。
そこからは完食するまでイリアさんを見ていた。
「ごちそうさまでした。これは今までにないものですね。しかもとても美味でした。」
「それは良かったです。こちらも作った甲斐があるというもんです。では申請しても大丈夫でしょうか?」
「もちろんですと言いたいのですがすぐには無理なので時間をいただきたいのです。これに関しては大変申し訳ないです。私がミナトさんを甘く見てしまっていました。大したものは出てこないだろうと断るつもりでした。」
そう言って頭を下げるイリアさん。
「頭をあげてください。時間があればできるのであれば問題はないので。」
「本当に申し訳ありません。ミナトさんが素晴らしいものを提供してくださったのです。私も全力でゼスト商会と交渉し必ず場所を勝ちと取って見せます。」
「わかりました。急ぎではないので話が決まりそうになったら城に連絡をお願いしてもいいですか?」
「大丈夫です。では場所代、売値なんかの細かいことは話が決まり次第打合せさせてください。」
そういう感じで話が決まったので城へと帰る。
城の入り口で「くそうなめやがって次に会うときはお前の娘は息子にかしづいているわい。」と大声で言う男にすれ違った。
なにがあったのかと思ってエルフィナさんを訪ねてみた。
話を聞くとすれ違ったのはダブリン侯爵という男で息子のエブリンとリーナさんの婚約話を持ってきたらしいがうまくいかなかったようだ。
その辺はミリアリアさんは結婚に関してはリーナさんの意思に任せる方針なようで「力づくで襲ってみてもいいぞ」とか言ったとか。
そんなこと言って本当に襲われたらどうするのと思ったが嫌なら抵抗して助けを呼ぶだろうし、抵抗しなかったら相手を受け入れたってことになるようだ。
本来は王族の娘として結婚相手は選べないところが多い中で本人に選んでいいよってことで対策は自分でということだろう。
そこに関してはリーナさんが嫌といえば、例えシズクさんが相手を切り捨てたとしても文句を相手に言わす気もないようだが、もし助けが間に合わなかったらどうするのってエルフィナさんに聞いたらじゃあミナトが守ってやればいいと言われた。
そんな場面に俺はいないだろうと考えていたら、もうすぐ各地の状況を視察するために王族が巡業する予定らしいが今年はリーナさんが行くことになるだろうって。
表を見ると誰が仕組んだのか同行する大半の騎士はダブリン侯爵の手のものになりそうだったので、騎士団長クラスがいないという理由で騎士団長のレイチェル(第三騎士団)をミリアリアさんが、そしてエルフィナさんがシズクさんとダニス(おまけ)と俺(料理係)をねじ込んだそうだ。
シズクさんに勝てるのは各騎士団の団長くらいなので安心してもいいだろうって、軽く言ってますけど俺は初めて聞きましたよ。
そんな訳で巡業に参加することになったので食事のメニューを考えておくことにした。
次の日は商業ギルドに行ってしばらく用事でいないのでまた戻ってきたら連絡する旨をイリアさんに伝えるとその時には、いい報告ができるよう頑張りますと言っていた。
ちなみにあの日ギルドの中ではイリアさんへの質問攻めが行われたらしい。
それから1週間ほどかけて巡業同行へ向けて色々準備していたある日、騎士団長のレイチェルさんとの顔合わせが行われた。
レイチェルさんはリーナさんと同じくらいの身長(150ないくらい)の小柄な方で赤髪のショートヘアーで背中に大剣を背負っていて胸は普通かな。
「初めまして。第三騎士団団長のレイチェルといいまう。ます。」
嚙んでしまい赤面するレイチェルさんにほっこりとした気分にさせられた。
「初めましてミナトです。今回は料理係としてついていくことになりました。よろしくお願いします。」
「その料理係と言われてもピンとこないのですが普段と違う食事になるということですか?」
「普段はどういった食事をしておられるのかわかりませんのでお聞きしても。」
「普段は巡業とか遠征では硬いパンと水にたまに干し肉つくぐらいですね。」
毎回そんな飯なんて嫌だなぁって思ってしまう。
まあこの世界の食事は基本美味しくないし改善していきたいので、屋台、城の食事それぞれ帰ってきたら手を付けていきたいところだ。
「じゃあ試しにこれを食べてみてください。」と言って、市場で購入したコッコのスープと塩おにぎりを渡す。
「変わった食べ物ですね。いただきます。」
「私の故郷のおにぎりっていう料理です。この後巡業で作る予定のものをエルフィナさんにも試食してもらうんですがその一部です。」
て言ってる内に平らげてしまった。
「これが毎食・・・・・・。」
なぜかプルプル震えているレイチェルさん。
何か失敗したかなっと思って「お口に合わなかったですか?」と聞いてみるが
「いえとても美味しかったです。その試食に私も行ってもいいでしゅか」
と噛みながら迫ってくる。
「別に構いませんよ。」
と言ったらそのまま厨房についてきてしまったので厨房ではおおいに注目を集めている。
さて今回は市場で手に入ったコッコを使ったスープと炊き込みご飯、シチュー、オーク肉バーガーなど計10点位を作ってみた。
その間、レイチェルさんはずっと横にいてそわそわしていた。
そしてなぜか料理長もレイチェルさんの横でそわそわしているので「どうかしたんですか?」って作り終わって聞いてみたら「俺にも分けて欲しいな。」って。
仕方ないから今後を考えて試食に同行させたら、厨房から料理長に向かって大ブーイングが起きていた。
流石に全員分もないので2人前くらいおいていったら争奪戦が行われたらしい。
エルフィナさんのところへ向かう前に料理長の名前を聞いたら、グスタフだと教えてくれた。
料理長になって100年になるらしいが元々は騎士団で分隊長をしていたそうだ。
騎士団の中で一番料理が上手かったから料理長にさせられたといっていた。
そしてエルフィナさんの待つ試食会用に用意した部屋になぜかミリアリアさん(セバス、ルリア付き)もいた。
ミリアリアさんに「なぜ女王が?」って聞いたら試食会の話をしたらついてくるっていって駄々をこね、そうしたら毒見役がってついてきてしまったのだとか。
まあいいやと思って中央テーブルに料理を並べて取り皿を渡していく。
今回はこの10品をメインにしてローテーションしていく旨を伝え、試食会がはじまった。
全部高評価でミリアリアさんがリーナに任せるんじゃなくてじゃなくて私が行こうかしらとか言い出して大変だった。
そこはグスタフさんにスープとシチューのレシピを教えるってことでおさまった。
その後はグスタフさんにコッコの骨からとる鶏がらスープの作り方を教えて一日が終わってしまった。
なお試食会に参加できなかったリーナさんとシズクさんは拗ねていたそうだ(エルフィナさん談)。