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プロローグ

この世界にはある伝説の詩がある


〔人の憎悪が世界を覆うとき、すべては闇に満ち世界は滅ぶだろ。

 だが、聖石なる“光賢の玉”を真に使うことが出来れば

 世界は永久の平和を手に入れることが出来るだろう〕


時は、戦乱の世


様々な国同士が領地拡大や権力のために醜く、悲しみの終わりがない争いを繰り返していた


いつになれば争いのない平和の世がくるのだろう


誰か、未来に光を


新たなる統治者を


伝説の“光賢の玉”を真に扱う者を


そう願わずにはいられなかった


季節は巡り、人々の心も少しは落ち着いた頃にとある三つの国では新たな命が誕生しようとしていた


一つ目は通称〔烈火の弓矢〕正式な国の名は〔焔の国〕。火薬技術や石油などで有名で弓矢の名手が多く、戦では恐れおののく小国もいる。だが怠け者が多い他、犯罪や貧困など国は発展していなく道中の整備も整っていないため貿易もあまり盛んに行われていない


二つ目は通称〔苛烈な孤高〕正式な国の名は〔豪の国〕。一代にして帝国と呼ばれるまでになったが、名の通り現皇帝は苛烈で領土を広げることに執念を燃やし戦を繰り返していた。武術に秀でた者が多く国の内政は比較的落ち着いているが富と名声、権力に目がくらむ政務官たちが水面下で足の引っ張り合いをしている。鎖国的で謎に包まれている


三つ目は通称〔歴戦の覇者〕。正式な国の名は〔武賢の国〕。四百年の歴史を持ち緑と海に囲まれた貿易と商売などが有名。先進国で高度な工業技術や科学力を持つ上に学問や武術に優れた者が多いなど異国の旅人たちが移住してくるなど人が住みやすい国。唯一奴隷制度がなく貧富の差も激しくない。そしてこの国には伝説の”光賢の玉”があり皇室が代々守護していた



-〔焔の国〕- 


それはまだ日差しの強い暑い時間帯だった


「お妃様お生まれになりました。王子にございます」


産婆が寝台に横たわった妃に生まれたばかりの赤子を見せる


すると妃は喜ぶどころか顔を歪ませた


「…また後継者争いが増えたわ」


「でも九番目ですから第一王子の脅威になるとは思いませんが…」


妃は王子が生まれたことに納得がいかないようだった。それはこの国の王室においては争いを招くことにしかならないからだ


「甘いわ。皆が殺気立って王位を狙っているのよ」


「しかし、まだ赤子にございます」


「赤子だからといって見逃してくれるとでも?王妃や他の妃たちが何か仕掛けてくるはずよ。…王にも似ていない上に、顔に痣があるなんて不吉だわ」


生まれた赤子には顔の右上から額にかけて火傷のような痣が広がっていたのだ


「どうされますか?」


「後宮での私の体面もあるから、ひとまずは育てるけど十歳を迎えたら宮の外で暮らしてもらうわ」


「かしこまりました。して、王子の名は?」


「…“無玖”だ」


「“無玖”にございますか。炎の文字は入れないので?」


焔の国の王室の王子たちは、代々”炎”の文字が入っていた。だが、妃は赤子に”炎”の文字を付けなかった


「炎を入れる有望性があるとは思えない。…こんなことなら姫を生むべきだったわ」


焔の国で生まれた王子は母親に歓迎されず不運にも己の人生を決められていた



-〔豪の国〕-


それは朝日が差し込む心地よい時間帯だった


「陛下‼お喜びください。元気な眉目秀麗な皇子がお生まれになりました」


「なんと‼皇子であったか」


鎧を纏った陛下と呼ばれた男は嬉しそうにおくるみに包まれた赤子を、侍女から受け取る


「陛下に似ておいでです」


「うむ。皇后よ大儀であったぞ…。世継ぎを生んでくれて感謝いたすぞ」


「陛下…」


陛下は寝台に横たわる皇后と呼ばれた女の傍にいき、労いの言葉をかける


「目元は皇后に似ておるかのう。…ん?この痣は?」


「痣にございますか?」


「あぁ。肩に翼のような痣がある」


「まぁ。まことに‼これは良いことですわね」


生まれた赤子には左肩に翼のような痣があった。この豪の国において翼は縁起が良いとされている


「…。決めたぞ。この子の名は”翼功”だ。大空を舞う鳥のようにのびのびと育ってほしい。私はこの子を強く、武術に優れた子に育てるぞ」


「“翼功”…。とても良い名にございます」


豪の国で生まれた皇子はその名に期待を込められ、後継者として人生を歩んでいく



-〔武賢の国〕-


それは夜も更けて満月が光輝く時間帯だった


「…まだ生まれんか?」


「はい陛下。大変な難産にございます。皇后様のお体が持つかどうかっ…」


絢爛豪華な宮殿の長い廊下で心配そうに、陛下と呼ばれた男は待っていた


「「父上‼」」


そこに、市場に視察に出かけていた二人の皇子が母の容体を聞き戻ってきた


「お前たち、戻ったか」


「はい。して、母上の容体は?」


「うむ。難産で苦しんでおる」


「母上…」


「「「陛下‼」」」


「どうした、騒々しい」


しばらく廊下で待っていると、数名の内官たちが慌てた様子でやってきた


「実は鵬光殿に祀ってある“光賢の玉”が光輝きだしたのです」


「何⁉」


「あまりに突然のことで動揺が広がっております」


「何かの予兆なのでしょうかっ」


「…。まさか、今から生まれてくる子がまちに待った”光の巫女”なのでは?」


「可能性はあるの」


世界の聖石なる”光賢の玉が”が光輝くことは武賢の国が建国して以来、初めてのことだった


「っ、お生まれになりました‼月のように麗しい皇女様です‼」


「なんと女の子か!」


「はい!さらに、皇女様の鎖骨には三日月のような痣がございます」


「っ、これは間違いないですね」


「あぁ。ついに”光の巫女”が誕生した」


武賢の国の皇室には言伝えがあった。それは生まれた女の子に三日月の痣があるとき、”光の巫女”となり真に”光賢の玉”の力を開放できると…。


「「「陛下、おめでとうございます」」」


「うむ。すぐに民たちにも知らせるのだ」


「「「御意」」」


「母上はご無事か?」


「ご無事でございます。まるで皇女様も皇子様方が戻ってくるのを待っていたかのようでございます」


部屋の中に入り寝台の上で憔悴しきった皇后のもとに駆け寄る。傍には生まれたばかりの赤子が眠っていた


「皇后よ」


「…陛下」


「「母上‼」」


「あなたたちも…。心配をかけました」


「何を言う。こんな愛らしい皇女を生んでくれて感謝するぞ」


「ふふ。また賑やかになりますね」


「そうだな。どれ、よく父に顔を見せてくれ」


陛下は慣れた手つきで赤子を抱く


「とても良い顔をしている。皇后や皇子たちに似ておるな」


「そうでございましょう?ですが目元は陛下に似ていますわ」


「そうか?」


「父上、私にも抱かせてください」


「あ、私も‼」


「ハハハッ‼早速皇女は人気だな」


「だってこんなに愛らしいんですもの」


皇子たちは生まれた妹が可愛くて仕方がないようだ


「して、この子の名は考えていますの?」


「あぁ。月夜が輝く日に生まれたのだし“月詠”と名付ける」


「“月詠”…。良い名にございます」


「この子はきっと母上のような美しく、優しく穏やかな人になりますね」


「まぁ。お世辞が上手なこと」


武賢の国に生まれた皇女は大勢の者たちから祝福を受け、その名に世界の希望が託された


この同じ日に生まれた三人は後に数奇な運命に翻弄さることになる


特に”光の巫女”には壮絶な運命が待ち受けていた











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