613話 黒騎士との戦い④
『【空脚】Lv8を取得しました』
『【槍術】Lv10を取得しました』
『【闘気術】Lv8を取得しました』
『【調教】Lv9を取得しました』
『【威嚇】Lv8を取得しました』
ああ、最高の気分だ。
だが、まだまだこれから。
『【暗器術】Lv8を取得しました』
『【暗殺術】Lv9を取得しました』
『【縮地】Lv7を取得しました』
『【読唇】Lv5を取得しました』
『【読唇】Lv6を取得しました』
『【忍び足】Lv10を取得しました』
『【視界共有】Lv6を取得しました』
まずはこの拘束を解くために。
――【廻水】――
『【遠話】Lv6を取得しました』
『【遠話】Lv7を取得しました』
『【重力魔法】Lv1を取得しました』
『【重力魔法】Lv2を取得しました』
『【重力魔法】Lv3を取得しました』
『【重力魔法】Lv4を取得しました』
『【重力魔法】Lv5を取得しました』
『【魔力最大量増加】Lv10を取得しました』
覆う水を排除する。
『【薬学】Lv8を取得しました』
『【発動待機】Lv9を取得しました』
『【多重発動】Lv8を取得しました』
『【多重発動】Lv9を取得しました』
『【無詠唱】Lv1を取得しました』
『【無詠唱】Lv2を取得しました』
『【無詠唱】Lv3を取得しました』
『【無詠唱】Lv4を取得しました』
『【魔力纏術】Lv8を取得しました』
『【芸術】Lv8を取得しました』
そして呼吸を整え、苦しげに呻く目の前のデカブツに目を向けた。
まるで声が違うし、さすがにこいつはマリーじゃない。
そう思いながら念のために仮面を外して確認すると、見えてきたのはゴツゴツとした岩の肌。
巨漢の素顔に少し驚くも、だからと言って何か考えが変わるわけでもなく、【発火】で身体を覆う金属を溶かしながら、マリーの下で戦うことを選んだ代償を払ってもらうべく止めを刺しに掛かる。
――【闇魔法】――『破ぜろ、"黒薔薇"』
懐かしい魔法だ。
かつてドハマリしていたゲームではよく世話になったモノだが、まさかこの世界でも使うことになるとは思いもしなかった。
生み出した魔力球を体内に送り、その中で無数の茨を咲かせて暴ぜさせる。
本来は時限式の魔法というだけだが、魔力体と物質。
両面の特性を持つ【闇魔法】なら、動きを止めた巨漢相手にこのような使い方もできると思っていた。
「だから、腹の中を直接掻き混ぜたんです。あなたほど的が大きいと狙いやすい」
「そ……そんな、こと……どう、やっ……ごがぁあああッ……!?」
これでこの男も終わり。
それより今は、劣勢に転じて逃げ出しかねないマリーの動きを妨害する方が重要だ。
「ははっ、一人も逃がさねぇよ……」
――【精霊魔法】――『精霊よ、生み出せ、豪雨』
――【紫水】――
『【探査】Lv10を取得しました』
『【鉱操術】Lv1を取得しました』
『【鉱操術】Lv2を取得しました』
『【鉱操術】Lv3を取得しました』
『【鉱操術】Lv4を取得しました』
『【鉱操術】Lv5を取得しました』
『【彫刻】Lv7を取得しました』
『【彫刻】Lv8を取得しました』
『【光属性耐性】Lv7を取得しました』
『【石化耐性】Lv8を取得しました』
『【石化耐性】Lv9を取得しました』
満足にアナウンスを眺めている余裕もなく、残る3人に目を向ける。
ひとまず、鎌の女は後回しだ。
先ほどまで足元に広がっていた紋様から霊体のような人影が浮かび上がり、身に纏う防具もお構いなしに次々と俺やデカブツの身体の中へ消えていったが……
いったいどのような効果があるのか。
不気味ではあるものの、今のところ何も異変は感じないし、少なくともあの鎌使いは侯爵から聞いていたマリーの容姿と明らかに違っていた。
だったら先に狙うべきは後衛の二人だ。
こちらの状況に気付き、盛大に霧を生み出しながら離れていく黒騎士と、鎌使いの所へ走り寄る杖持ちの黒騎士。
鎌使いの女も状況を理解し、その杖持ちに向かって走り始めている。
そして精霊体は、雷竜が気付けば消失しており、水と氷の人型は走る杖持ちを守るような動きをしていた。
どっちがマリーだ?
一瞬悩むも、勢いよく地面を蹴り上げ、杖持ちの方に狙いを定める。
仮にマリーが離脱を図るなら、足を使うよりは転移に必要な5秒程度の時をどうにかして稼ごうとするだろう。
今更合流したところで何を狙っているのか、それは分からないが……
霧に向かって牽制の【風魔法】を数度放ちながら向かうと、視界の先に生み出された氷色の壁がみるみるうちに巨大化していく。
それはかつての戦争で見た氷壁がかわいらしく思えるほどの規模で、よほど俺との接近戦を避けたいのだろうとは思うが――
――【火魔法】――『炎拳』
拳に魔力を込めて打ち抜くと、目の前の氷壁は大きく爆ぜながら抉れていき、その中を白く煌めく【灼熱息】を吐きながら駆けていく。
すると、相手の想定よりも早く壁を抜けてきたからだろう。
まだ合流できていない杖持ちが足を止め、細身の剣を抜きながら焦りも隠さずに叫び散らす。
「くっ……この世界の異物め……!」
それは清らかさを感じさせる女の声。
この時点で杖持ちがマリーじゃないと予想できたが、ここまで来たならついでだ。
真っ直ぐに降下し剣を振り下ろすと、魔力の纏わりついた剣を両手に掲げて抗ってくるも、所詮は後衛。
耐えきれずに自らの剣が仮面を割って頭部にめり込んでいき、ほどなくして抵抗する力は失われた。
と、同時に強く地面を踏みつける。
――【烈震】――
そしてすぐに地面と空を蹴り上げ、大地に広がる霧に向かっていくつもの広域スキルを放っていく。
『【時魔法】Lv8を取得しました』
『【精霊魔法】Lv8を取得しました』
『【精霊魔法】Lv9を取得しました』
――【水流】――
『【魔法射程増加】Lv10を取得しました』
『【裁縫】Lv9を取得しました』
『【魔力自動回復量増加】Lv10を取得しました』
――【烈風】――
『【結界魔法】Lv8を取得しました』
『【無詠唱】Lv5を取得しました』
『【心眼】Lv10を取得しました』
――【雷魔法】――『天雷』
『【広域探査】Lv8を取得しました』
『【医学】Lv8を取得しました』
エルフだった女も消えた今、残すは逃走しているようにも見えたアイツだけ。
ならば転移を阻害し続け、必ずここで殺し切る。
そのつもりで追うと、薄らいだ霧の中で片膝を突き、左手をこちらに向けて掲げる黒騎士の姿を確認する。
何かを放つつもりか……?
そう判断して両手で顔を覆いながら接近すると、
「ま、待て! 待ってくれ! もう降参するから止めてくれ!」
叫ぶ男の声が聞こえてきたことで、困惑しながら少し距離を空けて降り立つ。
「……あなたは誰ですか?」
「私はビズィ。番外の一人であり、元オルトラン王国の傭兵ランキング1位――」
「で、マリーは?」
「し、知らない! この戦地が見えるところにはいる、んごぉ……ッ!?」
これ以上は不要と感じ、【縮地】で一気に近づき首を力任せに刎ね飛ばす。
『【神聖魔法】Lv8を取得しました』
『【魔力操作】Lv10を取得しました』
『【光魔法】Lv9を取得しました』
死ぬ覚悟があるならかかってこいと、わざわざ戦う前に忠告までしているのだ。
人の命を狙っておいて、白旗振ったら助けましょうなんて、そんな温い判断をするわけがない。
それよりだ。
王城では俺の目の前で転移し、途中途中に戦況を把握していると分かる内容で話していたのだから、7人の中にマリーはいると思っていた。
しかしこの男の言い分を信じるなら、マリーは黒騎士を移動させただけでこの戦いに参加していなかったか、もしくは途中で入れ替わり、この付近で戦いを見ていたということになる。
もしくは、ないと候補から外していた鎌使いがマリーの可能性もあり得るのか?
そう思って先ほどまでいた辺りに視線を向けるも、
「ん……?」
なぜかその姿が見当たらない。
どういうことだ……?
怪訝に思いながら周囲を見回そうとした、その時。
「?」
背後でまだ効果の続いていた【砂硬鱗】が僅かに反応を示したことで、半歩身体をズラしながら振り向く。
と、同時に何かが鼻先を掠め、直後には吐き気を催すほどの重い衝撃を受けて吹き飛ばされてしまう。
何が起きた!?
混乱しつつも立て直し、迫る相手に応戦するも――
(はえぇ……ッ!!)
その動きは素早く、既に切っていた【時魔法】の自己加速を一気に『フォース』まで引き上げるが、それでも防戦一方。
ガードに回した腕を弾かれ、その直後には何かに手首を斬り飛ばされるも、そちらに意識を回している余裕すらない。
せめて態勢を整える時間を。
僅かでもいいから動きを止めろ……!
「っがぁアアアアア!」
叫びながら威圧の上位互換である【咆哮】を唱えると、一瞬怯み、仕切り直しといわんばかりにその相手は距離を取る。
黒い仮面に身体を覆う黒いローブ。
相手は今までにも見てきた黒騎士だ。
しかしその手には刀が握られており、黒いローブの隙間からは白髪とも銀髪ともとれる、長い髪がしな垂れていた。