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415話 時間も忘れて

 谷底に広がる森を上空から通過すると、周囲を山に囲まれた窪地に、広い草原エリアが広がっていた。


 高い木々はほとんど見られず、あれが先ほど話に出ていたもう一つの買取所なのかな?


 端の方には倉庫のような、少し場違いにも思えるほど大きな木造の建物が建っており、それだけで狩場が切り替わったことを理解させてくれるが……


 やはり一番は魔物の変化。


 D-Cランク狩場 《廃棄された祭場》には、見るだけで思わず顔を顰めたくなる魔物が多く徘徊していた。



「うは~これがグールってやつか」



 皮膚や眼球はなく、溶けたアイスのように赤黒い血肉を垂らしながら、意外と素早い動きで迫ってくる様々な存在を、



 ――【魔力感知】――



「ふん!」



 容赦なく胸に手を突っ込み、強引に魔石のみを引き抜いていく。


 こんな夢に出てきそうな連中、この世界に降り立った当初であれば、100%チビって夢でうなされていたに違いない。


 だが山ほどの死体と、その死に様を見てきた俺に死角無し。


 今更この程度でビビることはなく、冷静に効率的な討伐方法を考えていたわけだが――



「グール系は倒しても、ヘドロみたいに肉がしっかり残るのか」



 この 《廃棄された祭場》には、手前の 《悲嘆の廃道》にいた武器持ちスケルトンと、それらに腐ったような肉が纏わりつき、動きが素早くなった様々な大きさのグール。


 あとは森の狩場でよく見かけるウルフ系かな?


 腐った四足歩行の犬っぽいヤツまでおり、D-Cランクの複合狩場ということもあって、かなり多様な魔物が存在していた。


 イメージとしては、ラグリース北部にあった 《ベイルズ樹海》。


 あそこの中層辺りにいた魔物が、全部アンデッド系に切り替わったような場所だ。


 よく見れば、やや短足で腰が曲がっており、人というよりはゴブリンに近い姿のグールも多く存在している。


 そして周囲で狩っているいくつかのパーティを眺めていると、基本的には肉のないスケルトンを狙いつつ、寄ってきてしょうがなく倒すハメになったグール系は、血肉の中から骨と魔石だけを無理やりほじくり出すような動きをしていた。



『【甦生】Lv4取得しました』



「んー……肉はいらんのね。オッケーオッケー、それじゃ次行くか」



《廃棄された祭場》も1種以外は全てが【甦生】スキルを所持しており、その最大値は高くてもレベル3。


 唯一の例外となる青白い火の玉みたいな魔物『ホローウィスプ』だけは、かなり面倒そうなスキルを揃えていたが……



 ホローウィスプ:【地縛り】Lv1 【気化】Lv3 【雷魔法】Lv2



 このようにレベルが低く、敢えてここで粘る必要は無い。


 最後のBランク狩場 《忘却のファルマン聖堂》で【甦生】持ちがいなかったら、その時はここでレベル7まで目指そうかなと。


 そんなことを考えながら、高さは20メートルくらいあるだろうか。


 朽ちてはいるものの、それでも荘厳な雰囲気を漂わせるトンネルのような入り口に向かえば、



「おぉ、凄いな……」



 自然と言葉が漏れてしまうほど天井の高い、石造りの巨大な部屋が内部には広がっていた。


 外から見れば切り立った山にしか見えず、ただ掘って広げたような洞窟の雰囲気はまるでない。


 天井にあるいくつもの穴から日の光が差し込んでおり、初めからフェルザ様がそのような作りにしていたのか。


 もしくは【土操術】でも多用しなければ、人がこのような空間を作り出すことは難しいだろう。



(うーん、これは秘密基地の参考になるなぁ……)



 そう思いながら周囲を見渡し――、あはっ。


 口元が緩みながら、何よりも真っ先に魔物へ突っ込んでいく。


 さすがBランクということもあり、魔物は見た目からも決して弱そうには見えない。


 地上にいるのは 《ベイルズ樹海》の深層や、他のCランク狩場でもチラホラと見かける、腹の出た3メートル近いトロルのアンデッド型。


 口から毒々しい紫の色合いをした霧を吐き出すも、【毒霧】レベル3なら問題無いと呼吸だけを止め、そのままイソギンチャクのような触手が生えたドロドロの腹に、肩口まで腕を突っ込む。



「魔石が掴みやすい大きさでいいねぇ!」



 すると横の影から人型の頭蓋や肋骨が露出した、骨の鎧で身を覆った大型のスケルトンが2体湧き上がるので、振り被る骨の剣も気にせず頭を掴み、背骨を毟るつもりで胸の中に手を入れた。


 ふーん。


 骨の鎧で身を覆っているけど、中は少し肉も存在しているらしい。



 ズボッ。



 まぁ魔石を抜いてしまえば、この手の魔物は機能不全を起こして崩れるから楽だな。



 そして――。


 先ほどから俺に魔法的な何かをしかけている、上空の魔物に視線を向ける。


 ボロボロの黒いローブを身に纏い、骨の杖を所持した髑髏の魔物。



「はっはー! そのスキルの効果はなんなのかなー!」



 資料本では『リッチ』と名のついていたソレを思いっきり地面に投げつけ、1体では足らないと。


 そのまま上空を飛びながら、残り4体もブンブン投げ飛ばせば、待ち望んでいたアナウンスが視界下部を流れた。



『【封印】Lv1を取得しました』



(頼むよ~……)



 なんとも面白そうな名前のスキルなのだ。


 今度は『白文字』であってくれと、そう願いながらステータス画面を開き――、「よしっ!」と叫びながら、その場で小さくガッツポーズした。



【封印】Lv1 視界に捉えた対象のスキル発動を確率で阻害する ただし既に発動しているスキルの阻害、解除はできない 効果時間10秒 魔力消費10



 確率とは言うも、具体的な数値はまったく書かれていない。


 ただ【石眼】や【睡眼】など、詳細がはっきりとしないスキルも多くあるのだ。


 気にしてもしょうがないと気持ちを切り替え、これからの使用場面を想像する。



「ん~秒数は短いけど、所持スキル全てが阻害対象なら、ハマればかなり強いのかな?」



 気になるのは一度【封印】が掛かれば、10秒間は全て阻害されるのか。


 それとも10秒間という中で、一つ一つの発動スキルに確率が適用されるのか。


 ここら辺は今度カルラに試させてもらうとして、難点は発動対象に俺が何かを仕掛けたことが分かってしまう点か。


 先ほども喰らったという感覚はなかったが、リッチが何かを放ち、黒い魔力が俺に纏わりついているのは分かっていたのだ。


 その他枠の魔物専用スキルだから予想はできないだろうけど、戦闘中にコッソリとはいかず、仕掛ければ相手に警戒されることは間違いない。



「まっ、どちらにせよレベルは上げるんだから、そんなことは狩りながら考えればいっか」



 ステータスが伸びるのだから、レベルを上げない手はないのだ。


 今はただひたすら狩り倒すだけ。



 ・リッチ 【甦生】Lv4 【飛行】Lv2 【闇魔法】Lv5 【封印】Lv1


 ・トロルデッド 【甦生】Lv4 【毒霧】Lv3 【踏みつけ】Lv5


 ・デスナイト 【甦生】Lv5 【剣術】Lv5 【影渡り】Lv2



「これなら【甦生】はレベル8まで、【封印】はレベル4かできればレベル5――、あっ、【毒霧】も2つか3つくらいはレベルが上げられそうだな――……」



 覗いた魔物の所持スキルと自分のステータス画面を照らし合わせ、どこまでスキルを伸ばせるのか。


 目標値を定めたら、周囲の目など気にせず、時間も忘れて魔物狩りに勤しんだ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 甦生って死んだら白文字になったりしないかな?……けどレベル10じゃないとアンデッドになりそうで怖い……
[一言] 【踏みつけ】は2~3レベル 【影渡り】1~2レベルは上げられそう、【剣術】は【転換】ポイント増になるし、スキルポイントも貯まりレベル上昇も期待できる。
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