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398話 見えない答え

 最重要の隣国にも無事、国として認められたあと。


 そのまま細かい仕事をいくつか終わらせた俺は、監視業務についているリル以外は自由時間となっていた夜の上台地で、アリシアにお礼の言葉を伝える。



「アリシア~ありがとね。早速下台地に設置してきたよ。教会なんて作れないから崖の中にボンと置いただけだけど」


「私達は教会に拘りなどありませんから、場所はどこでも大丈夫ですよ」


「下台地に神具を使う人なんているんですか~?」


「いるいる。鍛冶師のロッジは職業選択だってしてるし、今回新しく来た3人も普通に使うはずだよ」


「あら、あの3人も亜人かなと勝手に思っていましたけど、使う方の人達なんですね~」


「あれ? 一応3人とも人間だけど、もう知ってるんだ?」


「もちろんですよ~皆お風呂に入りながらよく眺めていますから~」


「え!?」



 フィーリルの発言に衝撃が走るも、こればかりはしょうがないか。


 あの場所なら下を見渡すためにあると言っても過言ではないし、アリシアには何かあれば力になってあげてほしいと伝えているのだ。


 俺自身があちこち移動していてほとんど留守にしているのだから、不在時に見守ってくれているのならより安心できるってもんである……たぶんだけど。



「あ、そうだそうだ。ちょっと渡したいというか、見せたいモノがあって、リアはどっかにいる?」


「奥の森だと思いますから……ちょっと待ってくださいね」



 そう言って意識が一時的に無くなれば、川の方から釣り竿魔道具『凄六』とデカい石の壺を持ったリアが歩いてきた。



「100匹くらい釣れた」


「いやいや、釣り過ぎじゃない……?」



 魔道具『凄六』が凄いのか、【釣り】スキルを持ち込んで本気で挑んでんのか分からないけど、どう考えてもやり過ぎである。



「リア、獲るなら食べられる分くらいにしないと駄目ですよ~?」


「そうだそうだ。粗末にしたら罰が当たるんだから、まだ夕飯食べてないし、3匹くらい頂戴――」



 そう言いながら近づいた時。



 ボトッ。



 一瞬目が見開き、持っていた『凄六』を地面に落とすリア。


 すぐにその眼は鋭く俺を捉え、その圧に思わず息を呑む。


 え、なに、今ので怒ったの?


 それとも俺の悩ましい『欲』に、もう突っ込みを入れてくるのか?


 事態が飲み込めず、固まったまま思考だけが巡っていると、壺を持ったままサササーッと、物凄い速さで俺の目の前に立つリア。



「あ、あの、ちょっと、怖いんでブッ!」



 そしてなぜか頭に一発、水平チョップを喰らう。



「ッ……!?」


「いだっ……ちょっと痛いんだけど!」



 が、驚愕の表情を浮かべているのはなぜかリアの方で。


 そのまま漏らした言葉に、俺まで強い衝撃を受ける。



「ま、負けてる……?」


「ファッ!?……ア、アリシア、フィーリル、ちょっとこっちに!」


「「??」」



 地面はまぁ平らだ、測定に支障はないだろう。


 となれば、やることは一つ。



「リア、壺置いて、ピンと立って。もっとしっかり、ピンと! そう、そのまま!」



 そして俺も背中合わせに立ち、正面を見据えながらアリシアとフェリンに声を掛ける。



「「どっちが高い?」」



 自然と重なり合う言葉。


 対してアリシアとフィーリルは、頭の上部を数度サワサワした後、すぐに答えを出してくれた。



「あらら~ロキ君の方がほんの少し高くなってますよ~?」


「ッ!?」


「マジか……」


「本当ですね。いつの間に伸びたんでしょうか?」


「ちょ、ちょっと待って、そのまま、ちょっとだけ……」



 どうする……


 一時は謎の若返りスキルがレベル上昇して成長ストップ。


 最後は強制不老の可能性まで考えていただけに、予定通りあるべき成長期が訪れてくれたのは非常に喜ばしいこと。


 それにこのまま隠れている可能性のある【魔力回生】を使用できれば、空白スキルは【魔力回生】と【ステータス表示】で確定的になる。


 背が縮めばそれだけで判別できるのだから、これほど分かりやすいことはないが……


 しかし本当に縮んでしまえば、また子供姿のまま暫く過ごす必要が出てくるのか。



「ロ、ロキ君? 大丈夫ですか?」



 いや、それでもやるべきだ。


 デバフが絡む可能性もあるのなら、なるべく早く空白スキルの正体は見極めた方がいい。



「ごめん、大丈夫だから。もう1回、慎重に測ってみてくれない?」



 言いながら、かつてゼオに教えられた『肉体を望む年齢まで戻す』という効果をイメージしつつ、心の中でスキル名を唱える。



 ――【魔力回生】――『肉体を13歳に戻してくれ』



 たかが1歳程度。


 ならばカルラが使用できているわけだし、魔力が足らないなんてことはまず有り得ないだろう。


 さぁ、どうなる――。



「ん~やはり、ロキ君の方がちょっとだけ大きいですよ?」


「そうですねぇ~もしかして小っちゃいままの方が良いんですか~?」


「なんて贅沢……」



(魔力が、減らない……?)



「あ、いや違くて。予定通りいけば、2ヵ月後くらいにはフェリンとアリシアも超えて、たぶんフィーリルと同じくらいにはなるのかなって。いやいやこれは、装備の製作も一度中断しないと」



 それとなく会話は合わせるも、頭の中ではまったく違うことばかりを考える。


 マジかよ……


【魔力回生】の効果が発動しないとなると、若返った現象はそもそもスキルじゃない可能性もあるのか。


 そうだとすれば、残りの空白スキルは――。



 人を、生き物を殺すことで経験の一部を得る能力。



 これが初めからスキルとして備わっていたということ……?


 くそっ、どこまでいっても答えが見えなければ予想の域を抜け出せない。



 はぁ――……



 まぁどうせすぐに試す機会は訪れるのだ。


 答えに近づくためには、本当にデバフ効果が俺自身に発生しているのか試していくしかないか。


 それより今は、本来の目的を。



「背も大事だけど、それよりリアに渡したいものがあって呼んだんだから、凹んでないでこっちに注目」


「?」



 ドン!



 そう言いながら目の前に取り出したのは、ヴァルツ王家の地下から回収した特大サイズのストレージルーム。


【空間魔法】の所持者くらいしか持ち運べないなら売り物になるとは思えないし、拠点にもまったく必要性がないので、クアド商会用の特別な保管倉庫にでもしようかどうしようか。


 悩みながら存在をそのまま忘れていたわけだが、よくよく考えればこれも魔石で補助をするタイプの魔道具である。


 ならば専門のリアに一度託すべきかなと考えていた。



「リステが言うには、どこかにいる転生者が作った説濃厚らしいけど、どう?」


「魔法陣で効果の増幅と使用条件を限定させてる?」


「俺に聞かれてもさっぱり。分かっていることは使用者の魔力が『1』だけ消費されるから誰でも使えて、その魔力で使用者を識別しつつ、不足分は下の魔石収納箱から供給されていることくらいかな」


「……凄いね。この魔法陣の中身を解析できれば仕組みが――……」



 案の定、背丈のことなど忘れて夢中になったな。


 やはりこの手の内容がリアには一番ハマるらしい。



「飽きたらベザートのお店に運ぶから、しばらくはリアに貸しておくよ」


「うん。1週間くらいもあれば十分だけど、これは細かく調べてみたい」


「だからさ」


「?」


「この魔法陣ってのが解析できたら、いつか転移陣を作ってよ」


「転移陣?」



 最終的な目標だな。


【魔法学】や【魔道具作成】の作成もジョブ系に該当しているので、俺では仮に取り組んだとしても相当時間が掛かるし、そんなことをするくらいなら俺は狩りをして強くなりたい。


 でも好きでスキルも備わっているリアなら、早い段階でその域まで到達する可能性だってある。



「魔法陣ってこれと、あとはダンジョンの最奥にあった転移陣しか俺は見たことがないんだよね」


「……」


「なら魔法陣の仕組みやその手の知識に強くなれば、複製不可能な神の創造物なんて呼ばれているモノも、リアならいつか作れるのかなーって」


「神の、創造物……」


「そっ、人じゃ作れないモノを作るって、凄く神様っぽいでしょ?」


「……本気、出してみる」



 プライドが刺激されたのかな。


 横の二人は若干不安そうだけど、リアの目に珍しく光が灯っているのだから、これは成果物にも期待しつつ全力で応援しておこう。


 人に迷惑を掛けない範囲でやりたいことができるのなら、それが一番いいのだから。



 となると、ここは邪魔しちゃいけないかな?


 そう思いながらも前回の経緯があるため、一応声を掛けておく。




「明日からジュロイ王国に行く予定だけど、こないだみたいに一緒に行く?」

ここで自国の開拓編は終了となります。

ほとんど成長していないので(【転換】をゲットしたくらい)、ロキの手帳は今回お休み。

キャラクター一覧も新しいのは町長と魔石やのお姉ちゃんくらいなので、次章が終わった時にでも更新しようと思います(たんぽぽちゃんは追加しておきました)

というわけで、13章開始は明後日から。

引き続き楽しめそうな方はお楽しみください。

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― 新着の感想 ―
[一言] この1話は、下級女神が中級女神くらいになる課程を見てるのかな?
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