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レオルドは疲れているセツナの元へと近付き、声を掛ける。
「大丈夫か?」
「ん、平気。少し張り切っただけだから」
「そうか。だが、無理はするな。手を出せ」
いきなり手を出せと言われて首を傾げるセツナだが、悪意も感じないのでセツナは素直に応じた。
「……少しは疑った方がいいと思うぞ?」
「どうして? 貴方からは悪意も下心も感じないよ?」
言われればその通りなのだが、なにか釈然としないレオルドは無言でセツナの手を握った。
「なにするの?」
「俺のスキルは魔力共有だ。だから、お前と魔力を共有する。今の俺はゼアトの非戦闘員と魔力共有をしているから膨大な魔力を持っている」
「でも、私とまで共有したら余裕がなくなるんじゃ?」
「問題ない。俺自身の魔力もまだ余裕がある。それよりもお前に魔力切れで退場でもされる方が俺にとっては痛手だ」
「それなら、お言葉に甘えて」
早速、レオルドはセツナと魔力共有を行った。手を繋ぐだけの簡単作業である。エロゲの世界だというのになんとも陳腐な方法だ。どうせなら、身体を重ねればいいのにと思うがそういう仕様なので仕方がない。
ただし、レオルドは手を繋ぐだけにしているが明確な方法はない。つまり、なにが言いたいかと言うと魔力共有の方法は無限の可能性を秘めている。
「さあ、来るぞ」
「準備は出来てる」
セツナの魔法によって凍り付いていた世界は、ジュウジュウという音と共に溶けて消え去る。そして、凍り付けになっていたはずのグレンがゆっくりと二人へ向かって歩いていた。
「ちっ! さっきので終わっておけばいいものを!」
「やっぱりグレン様は強い……!」
「行くぞ、セツナ!」
「うん!」
掛け声を出してレオルドは得意の水魔法を繰り出す。それと同時にセツナも氷魔法を放った。
二人が放った水の槍と氷柱が一斉にグレンへ襲い掛かる。
水の槍と氷柱がグレンを貫かんとするが、直前で二つの魔法は煙のように消えてしまう。
「蒸発させたのか!」
「まだ! あの程度はグレン様なら朝飯前! だから、続けて!」
「ああ、そうだったな!」
しかし、二人が魔法を放とうかとした時、突如として足場が溶けてしまう。もっと正確に言えば、二人の足元が溶岩へと変わったのだ。
「土と火の複合か!!!」
忘れがちであるが、グレンは火と土の二つの属性を操る。その二つを掛け合わせた溶岩魔法もグレンの得意技だ。
「セツナ!」
「任せて!」
溶岩に変わった足元を飛んで避けた二人は空中で息を合わせたかのように水魔法と氷魔法を掛け合わせて足元の溶岩をかき消した。
しかし、着地した瞬間をグレンは狙っていた。着地すると同時にレオルドの眼前にグレンが迫る。
「くぅっ!!!」
劫火の拳に炎魔法を纏わせたグレンの拳がレオルドに直撃する。障壁を張り、両腕を交差して拳を防いだがグレンの拳は障壁を打ち破りレオルドの腕へと当たった。
ジュウッと皮膚の焼ける音が聞こえ、レオルドは苦痛に顔を歪めながら吹き飛んだ。
「ぐ……くそ!」
数メートルほど吹き飛ばされたレオルドはすぐに体勢を整える。体勢を整え直したレオルドはグレンへ目を向けるが、すでにグレンはレオルドから標的をセツナに変えていた。
「はあっ!!!」
自分の方に向かってくるグレンに向けてセツナは氷魔法を放つ。氷と炎、相性が悪いわけではないのだが技量の差が出てしまう。
セツナに近づくグレンは飛んでくる氷魔法を自身の炎魔法で打ち消している。
少しでも距離を取ろうとセツナは後ろに飛ぶが、すでにグレンはセツナの懐へ飛び込んでいた。
「っ!」
灼熱の拳がセツナに触れるか触れないかの瀬戸際にレオルドが二人の間に飛び込んだ。
「やらせん!」
障壁を張り、自身の体を盾にするレオルドはそのままグレンに殴り飛ばされる。その後ろにいたセツナもレオルドと一緒に吹き飛ばされた。
「がっ……!」
「うぅ……っ!」
レオルドのおかげでダメージは少なく済んだセツナは腕の中にいるレオルドに声を掛ける。
「大丈夫!?」
「問題ない。と言いたいがさすがに何度も受けすぎた。火傷が酷い」
そう言うレオルドの腕は赤々と染まっており、非常に痛々しいものとなっていた。それを見たセツナは自分では冷やすことしか出来ないと申し訳なさそうにレオルドの腕を冷やした。
「ごめんなさい。私にはこれくらいしか出来ない」
火傷で激痛を感じていた腕から痛みがなくなっていくのを感じたレオルドはセツナへ不敵に笑いかけた。
「ふっ。痛みが消えただけで十分だ!」
「でも、ちゃんとした治療を受けないとその腕が……」
「ああ。下手したら切り落とさなければならんな。だが、その前にグレンを倒せばいい! まだまだこれからだぞ!」
立ち上がるレオルドの元へグレンが迫る。炎を纏わせた灼熱の拳がレオルドに向けられる。対するレオルドも拳を握りしめて、グレンの拳にぶつけた。
自殺行為に等しいレオルドの行動にセツナは驚いてしまう。
「そんなことしたら、貴方の腕が!」
「ああああああああああああっ!!!」
そんなこと知ったものかと言わんばかりにレオルドは腕を振り抜いてグレンを後退させた。
「うそ……」
「舐めるなよ、グレン。格下だと思っていると火傷するぜ?」
グレンの拳に触れたせいで火傷を負ってしまったレオルドはまるで痛みを感じないとニヤリと口角を釣り上げた。





