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魔力を練り上げたレオルドは床を踏みつける。すると、レオルドが踏みつけた足元から土の棘が発生してグレンに襲い掛かる。
どのようにして土の棘を避けるのかをレオルドは見逃さないようにグレンを見ていたが、グレンは拳に炎を纏わせると土の棘をあっさりと粉砕した。
「はあっ!?」
避けるか、防ぐかと予想していたレオルドはグレンの行動に思わず戸惑いの声を上げてしまう。
(ふ、ふざけんな! さっきのはそう簡単に壊せるような魔法じゃないんだぞ!)
レオルドが先程グレンに放った魔法は土魔法のソルスピーナ、地面から土で出来た棘が敵を襲う魔法である。
勿論、そう簡単に壊されるような魔法ではない。そもそも魔法で固められた土の棘を壊せるような人間などそうそういない。
まあ、そうそういないと言ったがレオルドがこれまでに戦った相手だとギルバートやベイナード、リヒトーやシャルロットならば簡単に壊せる。
ただ、シャルロットだけは魔法によるが。他の三人は身体強化を施せば物理的に破壊してくる。もはや、怪物でしかない。
「ダメ! 気を取られちゃ!」
「ッッッ!!!」
ソルスピーナがグレンに粉砕されてレオルドは僅かな時間、その事に気を取られていた。その隙をグレンは見逃さずレオルドに炎を放った。
油断していなかったとはいえ、自信のある土魔法をグレンに粉砕された事で気が逸れていたレオルドは眼前に迫る炎を防ぐ事が出来なかった。
あと少しで丸焼けになりそうだったが、寸前の所でセツナが氷の大盾を作ってレオルドを炎から守った。間一髪だったが、セツナはレオルドを守れた事にホッとした。
「すまん。助かった」
危うく死んでしまうところだったレオルドは助けてくれたセツナに頭を下げる。
「もう分かってると思うけどグレン様には生半可な魔法は通じない。だから、次は油断しないでね」
「ああ。十分わかった」
セツナに注意されてレオルドは改めて気を引き締める。グレン相手には一切気を抜けない。二度目はないのだから。
(ふう……。使うか)
一度冷静になったレオルドは今まで使わなかった魔力共有を使うことにした。
元々レオルドは自前の魔力が一般の魔法使いよりも遥かに上だ。そこに加えて魔力共有というスキルを活かして、運命48でラスボスにまで登り詰めた男なのだ。
運命48ならば悲運の死を遂げるレオルドだが、ここでは違う。運命に抗い続け、逆境を跳ね除けようと努力を続けた。
その結果が今である。ゼアトの領主となり、多くの民に慕われているおかげでゼアトの非戦闘員と魔力共有を施しているレオルドは、はっきり言って魔力だけならば世界一である。
そんなレオルドが躊躇わず魔法を行使すればどうなるかなど、想像するに容易い。
「数の力を思い知るがいい!」
レオルドは魔力共有について色々と試していた。普段からしていれば勝手に魔力を他人から拝借してしまうのだが、意識すれば操作が出来る事が判明していた。だから、レオルドはひたすらに魔力共有の操作を覚えた。
そのおかげで魔力共有できる上限が増えた上に、オンオフのように自分の魔力と魔力共有している魔力の使い分けが出来るようになっていた。
そして、今それを解き放つ。
「ライトニングブラスター!!!」
極大の閃光といえる電撃砲がレオルドの手から発射される。真っ直ぐに飛んでいき、グレンへと直撃するかに思われたがグレンも負けじと灼熱の閃光を放ってライトニングブラスターを掻き消した。
(まあ、魔力だけでごり押しできるわけないか)
魔力だけならレオルドのほうが圧倒的に上ではあるのだが、それだけで勝敗が決まる世界ではない。確かに魔力が多ければ多いほど有利な事は間違いない。しかし、結局は使い手次第で変わる。
膨大な魔力を持っていても上手く扱えなければ宝の持ち腐れ。そのことをレオルドも理解はしているが、まだまだ十全に扱うことは出来ていない。
(だったら、やる事は決まってるよな〜)
魔力が豊富にあり、セツナという心強い味方までいる。なら、自分のすべき事は決まっているとレオルドはセツナに目を向ける。
「セツナ! 俺が魔法で撹乱するから、お前は特大の一撃を頼む!」
「わかった。任せて!」
それからレオルドは縦横無尽に駆け回り魔法を連発していく。魔力だけは豊富にあるので一切手を緩めることなくレオルドは魔法を放ち続けた。
雷、土、水の三つを巧みに使い分けてレオルドはグレンの注意を引き付ける。
土魔法で足元を崩し、水魔法で濡らして、雷魔法で痺れさせるといった戦法でレオルドはグレンを攻めるが、一向に倒せる気配はない。
(ああ、くっそ! 全部防がれる! こっちがどんだけ魔法を撃っても予測してたのかって言うくらい防がれる!)
レオルドが悪いわけではないのだが、グレンは長年の戦闘経験からレオルドの行動をある程度までなら先読み出来ているのだ。だから、レオルドの攻撃は当たらない。
(だが、それでも構わん! セツナが決めてくれるならそれでいい!)
自分はサポートに徹すればいいと考えているレオルドは、とにかくセツナの為に時間を稼ぐ。
「悠久の刻を経て尚融けず、無垢なる氷は穢れを知らぬ。永久の眠りに就き給え、刹那の狭間に閉ざされるがいい!」
レオルドの耳に届いたのはセツナの詠唱。気付けば吐く息は白に染まっている。レオルドは白い息を吐きながらセツナに目を向けると詠唱が完了しており、後は放つだけとなっていた。
急いでその場を離れるレオルド。セツナはレオルドが射程範囲内から離れたのを確認して、最大の一撃を放つ。
「白銀の氷結神話!!!」
世界が凍りつく。セツナの眼前に広がる光景は何もかもが凍りついた白銀の世界。
「ふう……」
自身が放てる最高の魔法を放ったセツナは一息吐いた。流石に魔力を使いすぎたようで、その額には汗が滲んでいた。
「凄いな……」
一息吐いて休んでいるセツナの元にレオルドが目の前の光景に驚きながら歩いて来る。





