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玉座の間でジークフリートは一人大立ち回りをしている。多くの兵士に周囲を囲まれながらジークフリートは戦っていた。
そこへセツナを救出した五人とセツナが助けに入る。それを見た皇帝はギョッと目を見開き、後ろにいたはずのセツナがいないことを知って玉座の肘掛けを叩いた。
「くそ! まだ仲間がいたのか! ええい! グレンはなにをしているんだ! まだ、戻ってこないのか!」
苛立つ皇帝は怒りにワナワナと震える。そんな皇帝を見ていたアークライトはざまあみろと言うように鼻で笑った。
「ふっ……」
勿論、皇帝が聞き逃すはずがない。鼻で笑われた事に怒りを感じた皇帝は倒れているアークライトの顔面を思い切り蹴飛ばして怒鳴り散らした。
「なにがおかしい! 言ってみろ!!!」
顔面を蹴られたアークライトが答えることは出来ない。何も答えようとしないアークライトに皇帝は、収まらない怒りを抱きつつ近付いて、グイッと髪を掴んで持ち上げる。
「おい、早く答えろ。なにがそんなにおかしいんだ?」
「ふ、ふふふ。ようやく貴方の困った顔が拝めた」
「き、貴様! この!」
掴んでいた髪を引っ張り皇帝はアークライトを床に叩き付けた。怒りが収まらない皇帝は荒い呼吸を繰り返して肩を上下に揺らしていた。
そのすぐ側ではセツナを中心としたジークフリート達が兵士達を圧倒していた。
玉座の間にいた兵士は精鋭揃いでそう簡単に負けることはないのだが、相手が悪すぎた。ジークフリートは兎も角帝国守護神の一人、セツナが圧倒的に強い。
氷属性の魔法を操り、次々と兵士を倒していく姿に誰もが畏怖する。美女であるセツナが氷属性の魔法を使えば幻想的な光景が生まれ、その光景に誰もが魅了され、その圧倒的な強さに誰もが恐れを抱く。
時間が止まったかのように思わず魅入ってしまう。ゆえに永遠のセツナ。
「くっ……!」
セツナに加えて侵入者達も中々に強い。次々と倒れていく兵士を目にして皇帝は思わず爪を噛んでしまうほどだ。このままでは自分も危ういと身の危険を感じる皇帝は逃げ出そうとするが、何者かに足を掴まれてしまう。
下を見てみるとボロボロになったアークライトが必死になって皇帝の足首を掴んでいた。
「ええい、離せっ! この死にぞこないめ!」
何度も皇帝はアークライトを足蹴にするが、アークライトは死んでも離すものかとさらに力を込める。
「貴様、まだそのような力が!」
もたもたしている内にセツナ達が兵士を片付けてしまった。もう逃げる事は出来ないと悟った皇帝だったが、そこに思わぬ事態が起こる。
「ぐぅおおおおおおおおおおお!!!」
獣のような咆哮を上げながらレオルドが勢い良く玉座の間へと転がり込んできたのだ。しかも、服装は所々焼けてしまいボロボロになっている。
「くそ……! 着替えなんて持ってきてないんだぞ!」
確かにそれも重要だがレオルドはもっと大事な事に気が付いていない。
「ん? あれ? ここどこだ?」
ようやくレオルドは自分がどこに吹き飛ばされたかを認識する。周囲を見回すと倒れ伏す兵士にカレン達がいることが分かった。
そして、さらに奥へ目を向けると玉座の近くにいる皇帝と皇帝の足にしがみ付いているアークライトを発見する。そこでようやくレオルドはここが玉座の間だと理解した。
思わぬ再会に花を咲かせたい所なのだが、それを許してはくれない存在がいる。レオルドが吹き飛んできた方向からゆっくりと帝国最強の炎帝が姿を現した。
グレンの姿を目にした皇帝は先ほどとは打って変わり、強気になる。
「ははははは! やはり、天は俺に味方をしたか! おい、グレン! この不届き者達を焼き尽くせ!」
隷属の首輪で操られているグレンは返事こそしなかったが、レオルドからカレン達に標的を変えて炎魔法を放った。
「ふざけんな! てめえの相手は俺だろうが!!!」
すかさずレオルドがカレンたちの前に飛び出て障壁を張り巡らせて魔法を防ぐ。
「セツナ! 手を貸せ! グレンをここで止める! ジーク! お前はカレンたちを連れて皇帝を取り押さえろ!」
グレンの魔法を防ぎながらレオルドは叫ぶように指示を出した。
セツナは言われてすぐに動き、レオルドの前に氷の盾を作った。そして、ジークフリートはレオルドに指示されたとおり、カレン達を引き連れて皇帝の下へと向かう。
「そっちは大丈夫か!?」
皇帝の下へ向かう途中、ジークフリートはレオルドの事が心配で声を掛けた。
「誰に言っている! 心配する暇があるならさっさと行け!」
その言葉を聞いてジークフリートは確かにその通りだなと小さく笑った。
「わかった! こっちは任せてくれ!」
そう言ってジークフリートは、いつの間にか逃げ出した皇帝を追いかけて玉座の間から出て行く。残ったのはセツナとレオルドとグレンの三人のみ。
一応、気絶した兵士達もいるが三者が意識しているのは互いのみ。それ以外は最早眼中になしである。
「セツナ。一つ聞きたいがお前はグレンに勝てるか?」
「ごめん。無理。多分、良い勝負は出来ると思うけど勝てないと思う」
「そうか。まあ、ここで自信満々に勝てるとか言われたら、それはそれで不安なんだけどな! だが、正直に言ってくれたのはありがたい! ここが天王山だ! さあ、覚悟しろよ、炎帝グレン!」
逃げ回っていたレオルドはここが勝負所だと覚悟を決めて本気を見せる。闘技大会で見せた雷の剣を背中に背負いレオルドはグレンに立ち向かう。
「凄い……! 誰かは分からないけど貴方とならグレン様も倒せる!」
レオルドの事を全く知らないセツナだが、彼が見せる本気の姿に興奮した。レオルドと一緒ならば帝国最強の炎帝も倒せるかもしれないと。





