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前夜祭 3

 レクターが顔面蒼白な状態に対してこれ以上のツッコミはしない事にし、俺はお菓子の入っているお皿から再びバタークッキーを一つ取り出して口の中へと放り込む。

 こうしてのんびりして過ごしていると、この後十二時間後には決戦があるとは思えない感じなのだが、こればかりはどうやって気持ちを引き締めれば良いのか分からない。

 翌朝八時に作戦開始であり、現在は夜の八時出ある為丁度十二時間後には俺達は作戦へと向っているわけなのだが、此所で俺はふと疑問に思った事を訪ねてみた。

 ジュリはともかく海とレクターとオールバーはどうするつもりなのだろうか?

 まさか家に泊まるとか言い出さないよなと思って訪ねてみたが、残念な事にこの三人は泊まる気満々だったりする。

 まあ、海の場合家に誰も居ないし家からだと空港まで遠いという理由だったから「良いか」と納得したが、レクターの場合俺の家から行くより自分の家から行った方が早いのだ。

 なのにこいつときたら、俺達に対して「やだ」との一点張りで人の話なんて聞きやしない。

 とりあえず俺の部屋で寝て貰うのだけは頑固拒否し、少し遅めではあるが簡単な夕食でも作ろうと俺とジュリがキッチンへと入っていき、二人で作った料理を食堂のテーブルの上に並べていると、玄関からチャイムの音が鳴った。

 誰だろうと思って玄関のドアに手を掛けると、レインちゃんのところに行っていたアクアが父さんと一緒に帰ってきていた。

 その後ろには何故かエアロードとシャドウバイヤまでもが付いてきているのだ。


「お帰り。丁度今夕食作りをしているんだ。アクアはともかく何故エアロードとシャドウバイヤが居る?」

「暇だ。ずっと寝ている奴を見るのはな」

「そういう事を聞いているわけじゃ無い。お前達はアカシの側に居ろって言っただろう? どうせレクトアイムとかが見ているとか言って帰ってきたんだろうけれど。そうだ…お前達紅茶飲みまくったろ?」


 エアロードとシャドウバイヤが俺の言葉に対して首を動かして俺から視線を外すが、これは完全に図星という合図である。

 やっぱり嵌まったあげくグビグビ飲んだわけだ。

 紅茶はそういう飲み物じゃ無いと何度言えば…全く理解しない。


「パパ! お腹空いた!」

「そうか。じゃあもう少ししたらご飯になるから先に洗面台で手を洗ってきな。お祖父ちゃんと一緒にな」


 アクアは「は~い!」と元気の良い返事をしながら父さんの手を引っ張って行き洗面所へと姿を消すアクアを見送り、俺はエアロードとシャドウバイヤを追い出そうと試みたが頑固拒否されてしまったので諦めることにした。

 まあアンヌとレクトアイムが見て居てくれるだろう。

 俺は再びキッチンへと戻っていき、追加の料理へと戻って行くのだが、手を洗ったアクアがキッチンへと入ってくるのだが、その両手がびっしょり濡れている。

 ジュリがタオルを取り出してアクアの両手をしっかりと拭き取る。

 父さんはその間に食堂でもうすっかり座り込んで新聞を見始めているのだが、あの人新聞なんてさほど見ないくせに格好付けて…。

 アクアの前だからと思って見ているだけなのだろうが、どうせ十分もしないうちに飽きるに決っている。

 その間にアクアに手伝って貰って黙々と料理を作っていく俺とジュリ、人数分以上の料理が出来上がってしまったが、まあこのメンツなら食べきるだろう。

 俺は他の面々を大きな声で一階から呼ぶと、俺の部屋から駆け出してくるのはレクター。

 鬱陶しいテンションだな。

 叫び回って食堂へと入っていくレクター、海とオールバーはそのまま歩いて食堂へと入って所で俺も食堂へと入る。

 俺の「頂きます」と言うとアクアが一番大きな声で「いただきます!」と返してくれた。


「そう言えば師匠は?」

「ジェイドとの戦いの後の事を考えてもう帝城で準備に入っているよ。お前達が勝てばそのまま数日後には帝城で最後の儀式だな」

「最後の儀式…詳しい話は僕達は聞かない方が良いんですよね?」

「聞いても無駄だな。詳しく知っているのは死んだ先代の聖竜と死竜だけで、他は誰も知らないのだからな。ソラも。私も。誰もな」

「僕も知らないんだ。先代からは何も聞かされていないから。大凡の検討ぐらいなら付くけどね。それも推測になるから下手な希望や絶望を抱かせるわけにはいかないし」


 ブライトはそんな事を言いながらフランスパンを千切ってクリームシチューへと付けて口へと運んでいく。

 表情が綻ぶブライトについ微笑んでしまう一同。

 レクターだけは黙々と食べて行くのがどうにも苛ついてしまう。


「死の領域に入るって話だったよね? それって帝城じゃ無いと出来ないの?」

「うん。勿論探せば幾らでもあるとは想うよ。実際始祖の吸血鬼は死の領域に入って死領の楔を持ち出しているわけだからね。多分今の中国の何処かにあるんだよ。出入り口が。そんな出入り口になりそうな場所は幾らでもあるし、何処でも出来ると思うよ。ただ…帝城は無間城とは対になる場所であり、同時に長年僕達聖竜が根城にしてきた場所だからね。地脈というか…霊脈みたいな力場があそこは帝国内でも一番強いからね。それを逆に利用すれば入り口ぐらい簡単に作れるよ」

「力場か…地方によっては龍脈なんて呼ばれているものだな。要するに星には力の流れが在り、その流れのことを言うんだよな。そして、その流れには一定の間隔や条件で集まりやすい場所があって、帝城はその一つ。じゃあもしかしてジェイドが万里の長城に居たのは?

「うん。多分万里の長城一対が力場なんだと思うよ。あそこを使ってエネルギーを集めたんだよ。て言うよりはそれをレインちゃんと死領の楔を使って万里の長城までずらした」

「? なんで?」


 レクターが疑問に思うことは当然のことで、俺達だって全く同じ意見だったりするのだから。

 ずらす意味が良く分からない。


「元々力場はよほどのことが無いと固定は出来ないんだよね。それこそ帝城のような物が無いと固定は出来ない。だから力場は流れに身を任せて作る事が出来ても固定は難しい。でもその力場をある程度ずらす事は出来るから。それを死領の楔とレインちゃんの能力を利用することでずらして力場を利用した」

「そのずれってそんなに大きくズレるもの?」

「ううん。ママ。本来はそこまではズレないよ。でも、数十キロ程度はズレると思う。そのずれを目的の場所まで移動させる必要があるの。だって力場は移動出来ても一度作られている儀式場はずらせないから」


 それはある。

 一度作ってある儀式場はずらす事は出来ないが、それでも力場ならずらす事が出来るはずだ。


「例えば江戸時代なんかに描かれた江戸の龍脈みたいな物でも今ではズレている可能性はあるわけだ」

「うん。力場は人の流れや環境でも大きめにズレるからね。最も多分そこまでズレているとは思えないけどね」

「じゃあ多分北京辺りにあった力場を儀式場までずらしたのかな?」

「だね。じゃないと四神と呼ばれているエネルギー生命体を回収しても無間城を起動させる条件は満たせないよ。無間城は普段眠っているけど目覚めさせるには力場を使う以外に無いから」

「だから力場を使ってエネルギーを吸い上げ、その時に吸い上げたエネルギーで起動させて四神の半分のエネルギーで動力にする。だから四神を一体でも目覚めさせて、連鎖的に他の四神も目覚めさせつつ、竜達の旅団のメンバーをアメリカに一旦固定させてその隙に回収する手筈を整える。その間にレインちゃんに死領の楔を入れて力場をずらす力場をずらす準備をしつつ、ロシアを時間稼ぎ程度に利用して本命である中国ではウォンに足止めをさせつつ儀式を行なう。ある程度決っていたことだったわけだ」


 念入りに進んでいた準備の果て。


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