表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
985/1088

三月十二日から始る回想譚 0

 もしこの英雄譚をいつの日か振り返る日がやってくるのなら、俺はきっと笑顔で自分の子供達にでも語り聞かすのだろうと今になって想う。

 このプロローグの時点ではもうすっかり日本では春の香りがやってこようとしている三月上旬の出来事であり、卒業という言葉があちらこちらから見聞きして居るような現状。

 師匠にまつわる最後の事件も無事終わり、世界は少しずつ…異世界連盟を中心に復興の兆しを見せていた。

 今にして思えば俺はどれだけジェイド相手に無謀な戦いを挑んでいたのかをしっかりと理解出来、同時にあれだけの戦いを俺達は乗り越えることが出来たのかを理解した。

 今日三月十二日は正式にアックス・ガーランドが軍を辞める日となっているが、これは表沙汰には一切成っていないらしく、部下にも見送りさせないという徹底ぶり。

 家族には言っているらしいが、俺ですら前日父さんから聞かされるまでは知らなかったのだ。

 そんな俺はガイノス帝国立士官学校の卒業式をボイコットして何をしているのかと言えば、そんな師匠に「お疲れ様でした」という意味を込めてプレゼントをもってきていたのだ。

 無論最初は俺は普通に卒業式には参加しようと思っていたのだが、ジュリから「ソラ君出席して何するの?」と言われてしまったら反論の余地は一切無かった。

 そもそもレクターに関しては「卒業式には参加しないでくれ」と学校側から涙を流しながら訴えられたらしく、今日は外で別の意味でのストライキを起こしているらしい。

 卒業式の日に、学校の適当な教室で、たった一人でストライキを起こしているという意味があるのかないのか全く理解出来ない行動を起こしているらしいことを俺はジュリから先ほど聞いた。

 ジュリはそんな俺に「ガーランドさんの所に行ってあげて」と言われたのだが、むしろジュリこそ「なんで出席するの?」と聞いたらジュリは「私は送辞があるから」と笑顔で言われた。

 そう言えば俺も二週間ぐらい前に頼まれた気がしたが、俺は先生達に対して「これ以上悪目立ちしたくない」と言って丁重に辞退したのだ。


 そうか…俺が辞退したから優等生で有名なジュリに矛先が向いたのか。


 俺の場合優等生と言うよりは現在在校生の中で実技と筆記の総合科目で最も成績が良いのが俺だからと言う理由と、新聞などのニュースには敢えて記載していないが、戦争終結者という事で功績があるからだろう。

 ジェイド達との戦いは敢えて父さん達が俺の名前を出さないようにしているらしく、俺自身もお願いしたのだ。

 あの戦いで功績を貰おうと思っていないし、何よりもその後にあった師匠を取り戻すという過程で俺は十分報酬は得ている。

 他の面々と違って俺は異世界連盟から報酬金も貰っていないのだ。

 レクターも辞退したと聞いた時は本気で驚いたが、本人曰く「卒業後の功績にして貰った」と言い出したところで全員から「残念な子」扱いを受けていたことは記憶に懐かしい。

 そんな風に物思いにふけっていると、俺の服の中で温々していたブライトが「来たよ」と俺に一声を掛けてくれた。

 師匠が建物の門を潜って軍の本部に頭をそっと下げたのをしっかりと確認して俺は師匠へと歩いて行く。

 師匠はまだ杖をつきながら歩いており、医者曰く完全に元通りは難しいが日常生活に問題なくなるにはそう時間は掛からないと言われたそうだ。

 もう師匠は戦えないのだ。


「師匠」

「ソラ? どうして此所に」

「ん。お疲れ様でした」


 俺はそう言いながら花束をそっと手渡すと、師匠は少しだけ照れくさそうにしながら花束を受け取った。

 師匠と共に歩き出す中師匠はふと俺に聞いてきた。


「そう言えば最終決戦の時と私が復活した過程は付いていかなかったから知らないが…教えてくれないか?」

「良いけど…気になる?」

「ああ。弟子がどんな戦いをしていたのかな」


 俺は語ることにした。

 ジェイドとの最後の戦いとその後に起きた不死皇帝のエピローグを。

 まずはジェイドとの最終決戦から語るべきだろう。


 俺は口を開いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ