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北京跡地攻防戦 5

 レクター達を誰かに押しつけたいと彼等と行動してから一時間が経過してそう思うようになり、俺は正直まだまだ太陽が元気そうな顔を覗かせていく中、俺は太陽に向って「元気ですね。良いんですよ。たまには早く日没を迎えても」と尋ねるが、無論そんな言葉を聞いてくれる太陽様じゃない。

 たまには俺の話でも聞いてくれないかなっと想って呟いてみると隣で座ってブライトの背中をブラッシングしているジュリが苦笑いを浮かべている。

 明日に備えてしっかり休みたいのに、どうやら神様という存在は俺に対して無用の試練を与えようとするようで、俺はそんな神様の試練を鬱陶しく感じるだけだった。

 そんな中俺は「フウ」と息を吐き出して両手をベンチに付けながら背もたれに体重を預けたところでポケットに入っている重たい物体に気がついた。

 そう言えば拾った奴そのままにしていたな。

 そう想いながら俺はそれを取り出す。


「それどうしたの?」

「? 拾った。市場で戦ったヴァンが持っていた物体で聞いても「知らない。聞いていない」としか言わなかったから。発信機でも付いているのかね?」

「どうだろう…調べてみようか?」


 ジュリの言葉に俺は甘えることにしてそのまま手渡すと、ジュリはそれを色々な角度からジロジロと見てみるとハッキリとした感じで答えた。

 「観測機だね」というと俺は「何を観測する奴?」と訪ねるとジュリは「魔粒子の濃度かな」と答えた。

 もっともジュリ曰く相当古いモデルらしく、もう五十年ぐらい前の奴だそうだ。


「なんでそんな古いモデルを…その観測機って最新モデルだってあるんだよな? 俺は使った事が無いけどさ」

「そうだね。ある程度強い異能だったりを持っていたり、粒子の濃い場所に何度も訪れると感覚で分かるんだって。最近だと魔導機にも装着されている事が多いから、知らなくても仕方ないと思うよ。少なくとも観測機自体をそのまま買う人ってあまり居ないはずだけど。それこそ専門業をしているなら別だけど」

「それって研究職とか?」

「うん。でも、だからってこんな古いモデルを使うことは無いと思うけど…? これ中が開くタイプだね」


 え? それって中が開くの?

 流石に知らなかったので俺はジュリが中を開けて行くのを横でジッと見つめてみると、丁度真ん中が開いていきまるでそれこそ蓋の付いている懐中時計の用にも見えた。

 テッキリ中には写真でも入っているのだと思ってジュリに聞いてみると、完全に明ける前にジュリが笑顔で告げた。


「残念な事に五十年前にそんなロマンチックな事を観測機には求めていないかな~」

「そうか…ロマンチックなのか。五十年前ってそんなに前なんだ…でも、そうか。父さん達だって生まれていないわけだしな」

「そうだね。まあ観測機に二重蓋にしているって事は多分この下は。やっぱり…」


 蓋が開くと中には見慣れない小皿が付いており、その周りには時計の針のような物がクルクル回っている。

 これまた面白くも無い結果に終わり俺は「なんだ…」と興味なさそうにしていたが、ジュリが最初こそ俺に向って苦笑いを浮かべていたが、もう一度観測機を見て何か違和感を覚えていた。

 だからジュリに対して俺は「どうした?」と聞いた。


「ううん。この観測機の二重蓋のシステムって基本中には石や草を置いてその物体が受けた影響を観測するシステムになっているんだけど…これ後から改造されたみたいだなって。見慣れないシステムが組まれてる」

「見慣れないシステム? それってどんな?」

「えっと…多分だけどこれ探索機になって居るみたいだね。この中心の凹んでいる部分に物体を置くと何かを探すことが出来るようになって居るみたい。でもどうして…」


 確かにヴァンはこれをまるで「誰かから貰った」みたいな言い方だったし、ウォンがこんな物を求めているとは思えない。

 となるとヴァンはこれをどこから入手したのだろう。

 カスタムして居ると言うことは誰かがこれを使って改造したと言うことなのだろうし。


「でもこれそうとう大事にしていたみたいだね。擦れた痕とかあるけど、でも大きな傷とかそれ故に補修をした痕があまりないから。五十年前のモデルなんてもう使って居る人も居ないだろうに。これ最近まで補修をした痕があるね」

「と言う事はこれを誰かが使っていたと言うことか?」

「そうなると思うけど…でもこれがいつ頃補修されたのかは流石に分からないよ。補修パーツも別段真新しい感じはしないし…色がハッキリと違うからここを補修したのは分かるけど、それも自分で型を作って補修している感じだし」

「どれだけ器用なんだ? 自分で形を作って補修してしまうって」

「頼んだって線もあると思うよ。ソラ。それをヴァンが誰かに本当は頼まれていて依頼主を教えるつもりが無いだけじゃ無い?」

「それもそうだね。別に改造から補修まで古いモデルを取り扱っていない人達がいないわけじゃ無いし。中には父親とか祖父とかの遺品として大切にするって人も居るわけだし。ただ、それを武装集団が持っていたというのが。でもまあ…」

「うん。今回の戦いには一切関係なさそうだね。でも聞くだけ聞いてみたら? 後で捕まっているって話の場所まで行けば分かると思うし…流石に知らないって事は無いよ」

「だな。知っていたが話したくない理由か…後ろめたい理由。盗んだか、依頼の報酬として奪った…どっちかな?」

「両方最悪だよね? 僕としてはどっちも嫌だなって思うよ」


 ブライトは観測機をジッと下から見ていくと何かに気がついたのか「あっ」と声を上げた。

 俺は何事なのかと思って訪ね返すとブライトは「下に何か書いてあるよ。擦れて見えないけど…」と告げる。


「? ベルソーク工房? あのベルソーク工房?」

「? そんなに有名な工房なのか?」

「うん精密な機械を手掛ける古い工房だよ。多分老店の分類に入るんじゃ無いかな? 百年は続いて居るって話しだし」

「へえ。ただ機械を扱っているだけか?」

「ううん。正確には人形を扱っているお店だけど…結構変な噂も聞くかな」


 悪い噂では無く変な噂という辺りがジュリの性格が良く出ている気がするのだが、まあジュリが言う悪い噂というと本当に取り返しが付かないレベルでの悪いだからな。

 まだ救いがある程度で見ておこう。


「生きた人形を作っているとか、中には魂が入った人形を作ったとか色々聞くな。基本オークションでは大体一品は必ず出展されるはずだし、コレクターも多くて人気なんだよ」

「俺の周りで買っている人居ないけど?」

「…サクトさんはともかくガーランドさんやアベルさんが欲しがるとは思えないけど? まあ子供に与えるって言っても若い人に人気があるという話も聞かないし」

「まあイメージは沸かないか…と言うかそもそも帝国であまり販売していないんじゃ?」

「そうだね。でも帝国領土内で造っているって聞くな。まあ何処にあるのかは詳細は知らないけど。でも結構南の方の渓谷とかで隠れて造っているって聞いた」

「偏屈なんだね」

「ブライト。あまりそういう言葉を言う物じゃ無いぞ」


 口が悪くなって貰っても困るのでとりあえず注意しつつ俺はジュリが持って居た観測機を自分の鞄の中へともう一度入れる。

 この後、ヴァンにもう一度聞いてみることにしよう。

 これが誰か別の持ち主があるのならその人に持っていった方が良いだろうし。


「しっかし…元気だな~まだ動き回って居るぞ。そろそろ体力とか大丈夫なのかね?」


 何かを買っては楽しげに食べていたり、かと思えばとにかく遊んでいたりと忙しそうだ。

 ああ…体力が一瞬で無くならないかな?


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