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北京跡地攻防戦 3

 明日の午前五時にアメリカとガイノス帝国両軍による一斉攻撃が決定したが、そのタイミングで俺達は飛空挺で上陸しようという手筈になったのだが、そこで情報機関が重要な情報を手に入れた。

 その情報を手に入れるのに情報機関が多少なり犠牲を出したそうだが、それでも有意義な情報だったのは間違いが無い。

 ジェイド達を万里の長城のとあるポイントで確認したとのことで、何か準備をして居る様子が見られたらしいが、その様子をうかがっている間にメメントモリにバレたようで、そのまま追撃を受けたとのこと。

 今もそこにいるのかは分からないが、少なくとも数時間前の段階で万里の長城に居たと言っている。

 さて、そこで俺達はどう動くのかと言う事だが、当初の予定通り飛空挺で上陸するのか、それともあれの攻略戦はあくまでも両軍に任せることになるのか。

 正直未知数の戦力の固まりであるあれを簡単に陥落させることができるとは思えないが、サクトさん曰く一発程度だったら持ちこたえられる自信があるとのことだ。

 なので参加は強制じゃ無いとハッキリと言われてしまったわけだが、アメリカ政府からすれば俺達は北京跡地の地下にある研究施設攻略に参加して欲しいと思っているらしい。

 ライツ達はどうやら研究施設攻略に行くと言い出したのだが、その理由の大半が「金になりそうな資料がありそう」という理由である。

 まあそうなるとジャック・アールグレイが「行く」と言い出し始め、なんか自然と俺達全員で参加すると言うことになった。

 で、どうやって向うのかと言えば、やはり北京行きの地下列車の路線を歩いて行くであり、そうなると不満を口にするのが約数名。

 だが、地下がどうなっているのか分からない現状、列車で向えば無用な事故になる可能性があるとのこと。

 それに距離もそこまで遠いわけじゃ無いので急いで行けば余裕で到着できるだろうと言うことだ。


 そういうことでホークがライツの妨害を受けながらもなんとか確保したというホテルで一泊することになったのだ。

 まあ、だからと言ってもう出歩く気分では無かったが、エアロードとシャドウバイヤは五月蠅かった。

 どうやら戦いに参加してお腹が空いたらしく、外でご飯を食べたいと言い始めた。

 俺からすればあの戦いの後だからこそ部屋で大人しくしていたいという気持ちが強かったのだが、もうそれは絶対に引かないという意地を見せつけられて俺は折れた。

 もう何処になりと案内してください。

 俺はお前達の思うとおりに動こうじゃ無いか…だから俺の体力を削り取ろうとするのだけは止めて欲しい。

 マジできつかったんだ…肉体的にも精神的にも結構キツかったんだ。

 そこだけは理解して欲しいと思って俺は鞄を手に取っていると、洗面所から出てきたブライトが俺の服へとストレートに突っ込んできた。

 どうやら「行くなら僕も行く」らしい。

 こうして俺はお守りする対象が三名に増えた状態で部屋のドアに手を掛けて外へと出て行くと、満面な笑みを浮かべて立ち尽くしているレクターがそこに居た。

 ああ…俺の体力明日まで持つかね。


「さあ! 行こうじゃ無いか! まだまだ今日は長いぞ!!」

「長いのか…出来れば短ければ良かったと想うばかりだよ。頼むからお前は自分の分ぐらい自分で出してくれよ。勝手に付いてくるのはもう諦めるからさ」

「は~い。では出向こうぞ! この街の娯楽文化へと!」


 娯楽文化に赴くと別の危険性が生じる気がするが、ここで反論したり意見を申したりする際の体力消耗が一番避けたいのでもう文句は言わない。

 流石に危険な場所には行かないだろう。

 このテンションで、この状況で外で遊ぶという事が平気でできる馬鹿野郎達であり、外の人達がこの状況で普通に営業をしているのかという疑問を抱かないのかとも想う。

 しかし、残念な事に外に居る人達は普通に営業をしているし、特に現れたあの新兵器に対する危機感が存在しない気がする。

 俺達とは危機管理がズレているのかもしれないが、俺の目の前に同じように危機管理がズレている人間が複数名いるので気にしないことにした。


 結構繁華街は賑わっており、まだまだお昼と言うこともあり賑わいが半端ではない。

 この街の人達だけ戦争という真実からは遠ざかっているように思えるが、この街の人達は中央市場で起きた一連の戦いやその際に生じた被害はどう感じているのだろうか。

 この街の防衛維持するべき組織はもう存在しない上、もしこの街で問題が起きた場合警察でどうにかできるものなのだろうか?

 中華系の食べ物ばかり選んでその場で食べて行く面々だが、正直マジでお腹が空かないのだ。

 ブライトも基本は同じようで全く食べ物に手を付けようとはしないが、そんな中俺の中にある「なんでこの状況でお腹が空くんだ」という疑問をまたしても吹っ飛ばしてくれる人が居た。

 オールバーが海に奢って貰いながら色々と口に放り込んでいる。

 エアロードとシャドウバイヤほど汚くは無いが、それでもあまり丁寧とは言い難い食べ方。


「ソラも奢っているんですか?」

「いや…レクターは自分で払っている。エアロードとシャドウバイヤは奢っているけど…流石にブライトはお腹が空いていないのか黙っているけど」

「全く空いていないわけじゃ無いけど…今食べると夕食に影響が出そうだし…」

「偉いな~ブライトは。何も考えないでひたすら食べる奴らとは違うな~ホント少しぐらい遠慮をしないかな?」

「「しないな」」


 断言されました。

 まあ良いけどね…俺だって別に言うことを聞いてくれると思っているわけじゃ無い。

 俺は流石にフラフラするのも疲れると思って海と一緒に近くのベンチに座り込んで「フウ」と息を吐き出す。

 エアロードとシャドウバイヤとレクターはひたすら食べ物を漁りまくっている。

 凄い行儀が悪い事この上ないが、まあもう突っ込むのも疲れるから言わない。


「なんであんな戦いの後でまだはしゃぎ回ることが出来るんだ? 俺は疲れ切ってしまったよ」

「ソラの場合最初っから三対一をしていたわけですからね。疲れる具合は他のメンツより多いですよね」

「まあな。海はどうだ?」

「僕は……疲れるって言うほど戦っていないかな? 正直不完全燃焼気味というか…戦いの結果そのものにも不満があるけど…もう少し全力で戦えたかなって」

「海は真面目だな。そんなに思い詰めるようなことじゃないし、真面目になるような事でも無いさ。戦いなんてその場の状況でいくらでも変化するんだ。海は十分良く戦ったよ」

「その通りだ。まあ小僧の課題はもう少し状況を見ながら戦う術を癖にした方が良いな」

「オールバーも結構きつめなアドバイスだな。いや…アドバイスというよりは苦言か」

「同じ事だと思うぞ。アドバイスも苦言も似たようなことさ」

「どうだろうな…違うと思うけど…」


 どうにも真面目になってしまうので閑話休題を訴えかけ、話題をシフトする事にした。

 あの戦いの後で真面目な会話も出来ればしたくない。


「しかし、この街の人達は皆あまりあんな感じの事件が起きても動揺とか無いんだな」

「と言うよりはあまり意識していないだけじゃ無いですか? 多分ですけど」

「だな。なんかこう…気にしていないというのが正解というか。まあそれもどうかと思うけどな」

「まあ悲観的になって皆が俯いて生きるよりマシだと思う。まあ脳天気になるよりはマシだけどね…脳天気になるよりは」


 ブライトはそんな言葉と共にエアロードとシャドウバイヤの方をジッと見る。

 あんな戦いの後で脳天気に食べて回る姿は俺もどうかと思う。


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