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芳蘭中央市場事変 9

 ジュリが建物裏の搬送口になっている場所で戦い始めているとき、海は立体駐車場へと足を踏み込んでいた。

 というのも今の海は電子関連の機器に対して過敏になっており、立体駐車場に何故か多数の機器が配備されており、外からでもトラップだらけだと判断出来たわけだ。

 海は出入り口になっているゲートに仕掛けられている赤外線センサーをポーチに入れてある道具を使って解体、そのまま足を踏み込むと今度はワイヤーが出入り口のゲートの機材裏へと繋がっており、そこには小型ではあるが爆弾が仕掛けられていた。

 典型的な古い罠を爆弾の方を先に解体してからワイヤーを解除、そのまま罠を近くの機材近くに纏めて隔離しており、改めて中に入るとドローンが何やら赤外線センサーをぶら下げて飛び回っていた。

 そっと柱の陰に隠れてやり過ごす中、海とオールバーはそのドローンが抱えている小さい小箱のような物を見逃さなかった。

 もしかしたらという思いが脳裏を過った海はそのまま遠距離から先ほど拾った爆弾を投げ付ける。

 すると赤外線センサーに触れた物体を検知すると、ドローンは警告音を発した一秒後には爆発してしまう。

 遠くに居るのに海の足下にまでドローンの破片が飛んできた所をみると、やはり威力はかなり高いと判断出来た。

 すると、海とオールバーの予想通り近くに居た他のドローンが周辺へと飛んで現われ探索し始め、ものの三十秒ほどで元の場所へと戻っていく。


「あのドローンは決った手順とルートで飛んでいるみたいだ。いくら最初に投げた爆弾の威力があると言っても…」

「あのドローンの爆発の方が強かったな。ドローンの破片は海の足下に届くぐらい強力と言うことだ」

「うん。一つ一つ丁寧に排除していこう。足下にも気を付けないと。さっきから赤外線センサーを使った罠とアナログ方式のワイヤー式の罠の二種類があるね。それもワイヤー式は手榴弾をそのまま活用している。罠の作りも意外としっかりしている」

「ほう…分かるのか?」

「うん。学校の授業で軍事科目で習うんだけど、アナログ式も赤外線センサー式も結構しっかりした作りをしているのが分かるよ。でも、両方とも手作りの品だ。流石にある程度流通しているような品と比べると半歩ほど見劣りするから。前にソラに見せて貰ったから分かるよ」

「あの少年はお前のそんな物を見せているのか? まあ小僧の最終進路先を考えるとその辺も授業範囲なのか? だが、中等部というのはまだ本格的な範囲は習わないものじゃ無いのか? よく知らんが…」

「選択式の科目で習うから…ある程度安全に配慮した解体もしたことある」

「…安全に配慮した解体? 何だその斬新な言葉は…聞いた事も無いぞ」

「爆弾の代わりに警報音が鳴るタイプのトラップを使って解体するんだよ。士官学校ではそういう専用の授業道具もあるから」

「そうか…何かイマイチ納得できないが。まあいいか。トラップを一つ一つ解体しながら先に進むとするか」

「上に誰かいるのは間違いが無いけど…この建物十階建て。五階にいるのは分かっているんだけど…」

「何かあるのか? まあトラップを仕掛けているような奴だ。どんな攻撃を仕掛けてくるのか心構えをしておく必要はあるだろう」

「うん。そうなんだけど…その五階にだけは何も仕掛けていないようだから。本人は五階から未だに動こうとしていないから準備をする期間は十分にあったはずなんだ」


 準備をする期間は十分にあったのに、準備を一切する気のない敵の動きが正直海は不気味に感じて居たのだが、オールバーは一つの肥田のような物を持ち合わせていた。

 こういうトラップを仕掛けて回る存在、竜の中にもそこそこ存在するのだが、決まってそういう存在はある程度の共通点があるのだ。

 オールバーは心の中で「外れて欲しいが…」と祈って海と共に上に進んで行き、オールバーはいざとなったときの対策を幾つか練っておき、海は一つ一つのトラップを解除していくき、飛ぶドローンは赤外線センサーに注視しつつ後ろから接近して素早く破壊と解除を繰り返して上に進んで行く。

 そして、五階へと繋がる道の途中で身を屈み隠れそっと五階へと顔を覗かせる。

 敵は身の丈はあろうかという巨大なライフルを肩に背負っており、口笛を吹きながら自然な立ち振る舞いでウロウロしていた。

 海は改めて五階中を確認してみたが、視界で確認できる範囲では何も無い。

 なら死角になっている場所や、エコーロケーションでも探しようのない範囲でトラップを仕掛けているのかもと警戒する。


「厄介なタイプだったな…どうしたものか…」

「どういうこと?」

「罠を仕掛けるタイプには色々在る。最小限にトラップを仕掛け、敵の動きを誘導しようとするパターン。大体はこういうパターンなのだが、時折いるんだ。ああいう風にトラップを仕掛けるのは戦うスタンスだからというパターンがな」

「どういう意味?」

「ようするに罠こそが戦うスタンスになっていて、罠を仕掛けて回るのは勿論、罠を即席で使う事が出来るし、どんな物でも罠に変えてしまうぐらい賢い。そういう人間は戦術や戦法の中にすらも罠を取り入れる事が出来る。罠は基本使い捨て。引っかからないのならばそれはそれで基本放置だ。罠をワザワザ回収しに行く奴はいないだろう?」

「勿論。だって罠だし…」

「そうだ。それが罠だ。だが、ああいう奴は罠は回収するし、ああやって普通に立っているが、体中に罠を仕掛けているだろうし、それこそ分かりやすく例えれば罠の暗器使いだ。色々な場所にまるでその場所の部品のように隠すことが出来るし、素早くその場で組み上げて使う事も出来る。そういう人間は…存在はかなり厄介だ」


 五階の中には隠すだけの場所が十分存在し、その殆どは車である。

 座席は勿論のこと、エンジン部分に解体して隠すことだって出来るのだ。

 罠なんていくらでも隠すことが出来る。

 形なんて誤魔化しようがあるのだから。

 起動さえさせなければ十分センサーの類いを誤魔化すことが出来るはずだし、何よりもそういう所に隠すことが出来る人間は逆に組み上げる事もまた出来る。

 ああやって何もしないで待っているようで、恐らくこの場所は沢山のトラップで一杯一杯になっているのだろう。


「で? そろそろ出てこないかい? 君。僕と一緒に遊ぼうや」

「まあ…バレるわな。戦うときは常に奴の動きに気を使い、適度に距離感を縮めるんだ。開けすぎると奴にトラップを仕掛ける隙を与えてしまう」


 海は「分かった」と言ってゆっくりと身を乗り出し、改めて敵と対峙する。

 薄緑色の短いショートの男性、細い体に真冬のこの時期に寒くは無いのかと疑いたくなる半袖の薄着に長ズボン、やけにポケットが多い服で何かを隠すスペースは十分確保されていた。

 男は精悍な顔立ちでどこか中性的にも取れるので下手をすると女に思えるが、やはり声などからも男である事は間違いが無い。

 背負っている身の丈はあるであろう巨大なライフルをふと下ろすのだが、その動作一つ一つすら神経を尖らせないといけない。


「ええやん。神経尖らせてんな。良い感じに遊べそうやん」

「その関西弁は元々ですか? それともただの口調ですか?」

「いやキャラ設定やで。だから所々関西弁や無いろう? でも…ようここまでこれたな。しかも罠を解体しながら。言っちゃあなんや、結構仕掛けていたと思うで…」

「ええ。大変でしたよ。でも、最低限の技術はあるつもりですから」

「ほう…最近の士官学生は凄いなぁ。僕はこれでもおつむは良い方でな…学校では成績はトップやねん」


 朗らかに笑うが海とオールバーはバックステップで距離を取ると、先ほどまでいた場所が爆発した。


「なんや。やるやんか…」


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