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芳蘭中央市場事変 8

 ギルフォードの戦いは海とオールバーの介入によって勝利したという報告を受けた俺だが、俺の方は今のところ一進一退の攻防がずっと続いており、正直活路をイマイチ見いだせないで居るのだが、その状況で俺の階層に新たな死角が現われた。

 チャイナ服を着ている結構若い金髪の男なのだが、無表情で俺に対してジッと見ているように現れたが、何より若い作業員のようなツナギ姿の男性を引きずりながら現れたことが敵であるという証明だ。

 すると、まるで男を追うように現れたのは同じツナギを着ている中年ぐらいの男性で、銃を握りしめて現われチャイナ服を着ている男目掛けて引き金を引いた。

 飛んで行く銃弾を見ずに躱している所を見ると同じく異能持ちだろう事は間違いが無い。

 そちらの人を助けてあげたいが、後ろから飛んでくる衝撃波や包帯による攻撃を躱して攻撃するという工程で必死だったりする。

 チャイナ服を着ている男は中年の一般人へとスタスタと歩いて行くが、その過程でも中年の男性は諦めず発砲していく。

 しかし、どの銃弾も当たることは決して無く中年男性の目の前までやって来た。

 中年男性が持って居る銃の弾丸が尽きてしまったのか、銃の引き金を引いても何も起きないままチャイナ服の男は中年男性の首を鷲掴みにして首を絞めていく。

 絞められていくことへの苦しさから何度も何度も抵抗を試みるが、チャイナ服の男はそのまま首の骨を折るのではと終われるところで、俺が飛ばした斬撃を回避するために腕を引く。

 男はそのまま強く咳をしながら後ろに倒れ、怯えたようにチャイナ服の男から逃げていく。

 あの様子なら逃げ切れるだろうと予想して再び襲ってきた攻撃を回避していると、中年男性の方へと手で銃のようなジェスチャーを作り向ける。

 何をしているのかと戦いながらも意識をそちらの方へと向けるが、撃つような仕草を見せた後中年男性の体が破裂した。


「逃げる相手を容赦無く殺すか…どいつもこいつも…」

「なんの用事だよ。デルタ。お前は市場の方へと顔を出すって言っていたろう?」

「私も最初はその予定だったが、向こうはアメリカ軍の特務部隊とケビンという女が本格的な戦闘に入ってしまってな。相性が悪くこっち等の手伝いに来た。お前達が苦戦していると聞いたので」

「……この男強い。……情報の修正をした方が良い」

「なるほど。ならこちらも本気で挑んだ方が良さそうだ」


 男は腰を落して構えを取り始めるのだが、何やらエネルギーのような物を纏っている気がするが、あれが気というものなのだろうか?

 なら魔属性かとおも思ったのだが、あれはきっと聖属性だろうという結論に出てボソッとブライトに聞いてみた。

 するとブライト曰く「聖属性だね。だから純粋に肉弾戦を仕掛けられたら強いよ」というありがたい意見を貰う。

 いよいよヤバいと思っているとチャイナ服のデルタという男が走って駆け寄ってくる。

 俺の鳩尾目掛けて伸ばす掌、俺はその攻撃をギリギリで回避しつつ後ろの方へと身を引くと今度は後ろから衝撃波が飛んでくる。

 俺は剣で衝撃波から身を守ると、下から這ってくる包帯をジャンプで避けるのだが、それを待っていたかのようにデルタという男が襲い掛ってきた。

 連続で放たれる打撃攻撃を俺は成んなく受止めてから後ろに飛ぶ。


 先ほどまではまだ攻撃する隙があったのだが、三人になると本当に困る。

 全くこっちから攻撃する隙が存在しない上、常に攻撃が俺の方へと襲いかかってくるので動き回らないといけない。

 こっちの体力が尽きるか、俺が離脱できるのが先かの勝負のように思えた瞬間、俺はようやく狙いに勝ったと心の中でガッツポーズを取る。

 デルタが伸ばした腕事吹っ飛ばすのではと思われる程の攻撃が壁を粉砕し、外気が部屋中にやってくるが、そんな外壁を吹っ飛ばした豪快な男はにやけ面をしながら現れた。


「ソラ! 苦戦してる!?」

「してる。だから手伝えレクター」


 レクターは「おうよ!」と言いながら戦いに参加した。



 ジュリは建物に居た人達を安全な場所から逃がしている真っ最中、外でも建物の中でも戦闘音が響き渡り、もうこの施設内に安全な所なんて存在しないのではと思われるほどだった。

 市場の方ではケビンがアメリカ軍の特務部隊と共に行動を開始しており、障害物を挟んだ攻防戦が続いて居る。

 正面玄関の方は今ギルフォードが見ており、海は市場と建物の間にある立体駐車場へと向って移動しているという報告を受けていた。

 一体何人で襲っているのかまるで分からず、報告では十人は超えていると言われている。

 ソラとレクターの所には三人、ギルフォードと海とオールバーが撃破した一人、ケビンと特務部隊が五人相手しており、それ以外にも結界を張っている術者でもう十人。

 そんな時だった。

 避難している人達の群れがいきなり爆発するという不測の事態にジュリの体が軽く吹っ飛ぶ。

 別段体が重いわけじゃ無いジュリは体を強く壁に激突させるが、それでもなんとか身を起こすと、爆発の中心にスマフォを片手に操作しているギャル風の女性が立っていた。


「簡単に死んだ。ちょー受けるんですけど! 写真撮ろ! あれ…? 死んでない? 何それ。空気読めよ!」

「貴方も襲撃者ですか?」

「だったらどうだって話じゃん? 当たり前だし。ウチ達がそれ以外の何に見えるってはなしじゃん」

「どうして殺したんですか? ここにいる人達は何もして居ないじゃ無いですか!」

「え? インスタ映え? この沢山在る死体の上で写真撮るウチ…ちょー受ける!!」


 ジュリは立ち上がると足下の影に隠れていたシャドウバイヤが影を発生させて援護する構えを見せ、ジュリの背中にくっ付いているエアロードも戦闘のためにとジュリの周りの風を動かして行く。

 ギャルは「殺んの?」とスマフォを片手に腰から警棒を取り出す。


「勝てるって思ってるわけ? ただの一般人が? 受けるじゃん」


 ジュリはタブレットを取り出して攻撃する構えを取るが、それでもギャルは全く異に返す事は無かった。

 むしろ自分が負けると言うことすらをまるで想像していないギャル。

 ジュリは活路があるとしたらそこしか無いと思った。

 明らかにジュリに対して油断している素振りを見せている。

 ここで誰かを呼べばソラを困らせるしか無いと思ったのだ。


 今ソラもそれどころじゃ無いぐらいの戦いをしており、レクターが入ってようやく活路を見出したと言っても良い。

 そんな状態でジュリは「自分が足を引っ張るわけにはいかない」と気持ちを引き締める。


「私達が援護する。思いっきり戦えジュリ」


シャドウバイヤからのそんな応援に「うん」と答えてタブレットを操作し始める。

 ギャルは悪そうな笑顔を向けてジュリへと目掛けて走ってくる。

 決して足が速いわけじゃ無く、普段からソラやレクターや海の動きを見ているジュリからすれば十分対処出来る範疇だった。

 突っ込んでくるギャルに対して風の銃弾を浴びせるが、ギャルは風の銃弾による攻撃を警棒で叩き付けて爆発させることで阻止する。

 ジュリは彼女の体を影を使って後ろへと引っ張りそのまま吹っ飛ばす。

 後ろに吹っ飛ばされたギャルは少し驚きの表情を浮かべていたが、直ぐに体勢を整え直して自分の後ろの影を見る。


「影も操るんだ。ぶっ殺そ」


 力一杯近くの壁を蹴り飛ばすと蹴った部分が大きな爆発を起こして崩壊し、そこには大きな大穴を作り出す。

 ギャルは中からターレーを取り出してそれを持ち上げながらジュリ目掛けて吹っ飛ばした。

 エアロードが軌道を大きく横に逸らすが、その際に積んでいるガソリンにでも引火したのか大きな爆発にジュリは巻き込まれそうだった。


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