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霞の咆哮は海に力を 6

 ジャック・アールグレイと海はとりあえずこの施設を完全に破壊するために手っ取り早くダークアルスターの咆哮を使って攻撃し、一瞬で焼け野原が造られた瞬間オールバーは海にだけ聞える声で「この力をマシなことにつかえんかね」とぼやいた。

 海は吹き出しそうになりながらそれをグッと堪え、それを見ていたジャック・アールグレイは敢えて気にしないで居ることにし、結果的にではあるがこの島で行なわれていた問題を解決することが出来た。

 海はアカシを常に気にしながら急いでギルフォード達と合流すると、街中の戦闘は完全に治まっており、アンヌは負傷した警察官などの手当をレクトアイムと共に実行し、ギルフォードは二人が帰ってくるのをひたすら待っている。

 海とジャック・アールグレイが戻ってくると二人の視線はベンチに座って平然とフランクフルトを食べているダルサロッサの方に向くのだが、そんなダルサロッサとギルフォードは海の右肩に佇んでいるオールバーの方に向いていた。


「? オールバー? お前どうしてそんなところに?」

「この少年と契約させて貰った。少年…あの食べ者が食べたいな」


 海は「はいはい」と言って財布を取り出してすっかり元通りになってもう仕事に入っている屋台へと向かいフランクフルトを購入する。

 オールバーはフランクフルトを三口で食べきりその美味しさに別の屋台を見て回っていた。

 どうやらオールバーは初めて食べた人間の食べ物に関心して海を引き連れて動いていくが、ふと治療を一段落させたレクトアイムがオールバーを発見して少し驚く素振りを見せた。

 しかし、レクトアイムとアンヌの心配事は別の方に存在していた。


「アカシはどうしたの? 貴方と海が契約したことは見れば分かりますが…」

「鞄の中で寝ています。先ほど少し…」


 海の説明を黙って聞いてくれた二人はそっとアカシを抱きしめて癒やし始めると、アカシは一分後にはそっと目を開けていく。

 海は心からホッと息を吐き出すと、アカシの方を見る。

 するとレクトアイムはアカシの方を見てそっと告げた。


「アカシ。もう今回の戦いは戦線離脱しなさい。アンヌ。飛空挺を寄越してください」

「僕…まだ戦える」

「駄目です。今軽く体を見ましたがこのダメージ…正直に言えばキチンと入院するようなレベルですよ。ましてや貴方は竜に成り立ての子供。まだまだ体だって慣れていない。この状況でこれ以上戦いの地に向えば酷い目に遭うわ」

「……アカシ我慢しよう」


 アカシはそっと黙り込んでどこか納得できないような顔をしているが、そんな中オールバーが覗き込んで来る。

 アカシはオールバーを見上げていくとオールバーはそんなアカシにハッキリと告げた。


「悔しいという気持ちは分からんでもない。我もそういうときがある。悔しいのならむしろ強くなるためにも今は引くんだ…中途半端な強さはむしろ相方の足を引っ張ることに成る。君の代わりがこのオールバーが引き受けよう。それじゃ駄目かな?」

「……僕強くなれるかな?」

「そうだな。それは分からんな。でも、強くなりたいと思わないとなれないのは確かだ」

「………僕強くなる」


 アカシはそのまま目を瞑って眠ってしまう中、ギルフォードがアンヌに変わって飛空挺を呼ぼうとしたところで港にウルベクト家の専用の飛空挺がやって来た。

 全員で現場に向って走って行き、中からアベルが歩いて現れた。

 いつの間にかアメリカ軍も停泊しており、島の権利を手に入れていた。


「良いんですか? こっちにやってきても。アベルさんは向こう担当じゃ…」

「念の為にこっちに来ただけだ。どうやら都合が良かったようだがどうした? 何かあったのか?」

「実は…」


 アンヌがアカシ離脱とオールバー参戦を一通り説明、アベルは「なら…」と言ってソラに連絡を取ろうとしてスマフォを取り出す。

 連絡を取ると通話がオンになった瞬間に爆発と斬撃音が響き渡っていた。


「今忙しい!! 後にしてくれ!!!」

「何なんだ? 今第二野営地攻略戦をしているんじゃ無いのか?」

「今……今はメメントモリとカールとボウガンとキューティクルと千を超える地雷や銃撃機能を持ったドローンが上空を閉めていながら戦っているよ。レクター、ケビンと一緒に」


 予想を超える異常な展開を前に全員が驚く前に引いていた。

 ジャック・アールグレイはタバコに火を付けて「どうすればそこまでヤバくなる?」と訪ねていたが、通話の奥からケビンが「知りませんよ!」と叫んでいる。

 ソラ達はそのまま通話を切ってしまう。


「何故あんな事に…メメントモリが向こうに居ることは予想していたが…」

「おかしいな。ボウガンとキューティクルはこっちに居たはずなのに…どうして向こうで暴れ回っているんだろう」


 アベルと海が少しだけ考え込んで居るとオールバーがハッキリとした口調で喋り出す。


「これは予想だが。向こうの戦局が予想以上の速度で押しているからでは無いのかな? 本来の予定を超える速度で向こう側が攻勢を強めている。だから時間を稼ぐ目的で主力を投入した…」

「なるほど。あくまでも自分達の計画をある程度進めるまでの時間稼ぎが目的か。今向こうが激戦区と言う事か? どうする?」


 ギルフォードから言葉に全員が一旦詰まってしまうが、オールバーがハッキリと口を開いた。


「我と少年が向こうに向えば良い。他のメンツは良くも悪くもどうやら異能持ちのようだし…竜と共に戦えば恐らくこの香港なら攻略できるだろう。我と少年で向こうの応援に行くというのはどうだ?」

「海…任せても良いか? こっちは俺達でどうにかする。その代わりと言っては何だが向こうの援護は君とオールバーに任せる」

「分かりました。こっちはお願いします。師匠。俺を上海まで連れて行ってください!!」


 アベルと共に海は乗り込んでいき一緒に飛空挺で上海へと戻っていった。



 俺達が第二野営地前でどうして激戦を繰り広げることになったのかと言えば、向こうから連絡が来る三十分前まで遡って説明をしないといけない。

 先陣が真っ先に第二野営地の場所と細かい陣形を確かめようと思ったとき、メメントモリがその先陣を全滅させた。

 こうなった以上俺達でメメントモリを退けてから主力を投入するしかないと言う話になり、俺達でメメントモリへと戦いに挑みに行った。

 しかし、いざ会いに行ってみるとメメントモリ以外にもう三人ほどいた。

 メメントモリが一番右端におりそこから左端へと向って順番にキューティクル、ボウガン、カールが並んでいた。

 やっべー…ラスボスクラスの化け物が四人並んでいる上絶望感が半端ない。


「ソラ…地雷が凄い…上にはドローンが飛び回っているし…此所。怖いぞ」

「エアロード。俺も同じ事を考えていた…圧力も凄いけど…なんだこのラスボスが四人で襲ってきた感じ。RPGで言ったら無理ゲー状態だろうに」

「ヤバい…俺でも分かるほどヤバい」

「ソラ…私に逃げても良いですか?」


 レクターとケビンが逃げ出しそうになるのを俺は必死で止める。


「君達進撃速度速いぞ…まさかジェイドの準備が整う前に到着しそうだ。と言う事で私達と遊んで貰おう。まあ死んだら仕方が無いな…」


 メメントモリがそんな言葉を吐き出した瞬間俺達の戦いは急遽始った。

 エアロードはレクターとコンビに成って貰い、シャドウバイヤは俺の影からの援護、ブライトも俺の服の中から地雷を排除していく。

 シャインフレアもケビンから離れないようにしっかりと行動して戦ってはや三十分以上が経過したとき、周囲に霧が突然立ちこめた。

 キューティクルの表情が憎しみ一色に変わり果てると海が姿を現した。

 見慣れない竜と共に。


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