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魂は叫ぶ 4

 ギルフォードは島の上空を飛んでいる複数の戦闘機をジッと見送り、同時に対岸にそっと見える明るい光で包まれている島をジッと見つめ、行くなら今かと思って後ろを見ると、ダルサロッサがギルフォードからの視線に気がついて体を震わせながら少し大きくなっていく。

 ギルフォードぐらいなら余裕で背負えるように大きくなると、そのままギルフォードを背負ってから一気に飛翔し始める。

 冷たい空気がギルフォードとダルサロッサを襲うが、ダルサロッサが仄かに暖かいのでギルフォードは特に気にならなかったが、それでも襲う風だけは何かと少しきつく感じる。

 それも到着するまでの我慢であり、ダルサロッサがバレないようにと水面ギリギリで飛んでくれているのだから此所で自分が我儘を言ってはいけないと我慢した。

 バレないように一旦島の周りをクルクル回って状況を確認、街外れにある海岸に素早く降り立つとそのまま一旦二人で身を隠す場所を探し出す。

 すると木々と草が生い茂っている場所なら隠れられそうだと考えて直ぐに身を隠した。

 五分ほど隠れて誰も来ないことを確認してから一旦出発、近くにある大きな街を眺めてみようと場所を移動して行き、街を一望できる場所まで移動する事に。

 と言ってみたがぱっと見で発見できなかったので一旦街の端へと移動しようと思い木々を避けて歩くことにした。

 人が来れば隠れるが今の状況ではむしろ隠れない方が良さそうだと考えたし、森の中だとむしろ人が通っていることに気がつかないと考えた上での結論。

 こういう場合むしろ隠れながら動く方が相手が見えないで危険なのだ。


 無論ある程度は隠れながら移動するし周囲には気を配っているが、それでもいざとなったときのポジショニングには神経質になる。

 近くに隠れる事が出来る場所を常に用意し、周りには常に意識を向けてから足音を立てないように周囲の音には敏感になる。

 少し遠回りには成ったが、それでも大きな街に到着することには成功してとりあえず人が居ない場所を目指して雑居ビルへと入っていく。

 中に人が住んでいない事を念入りに確認してから一番上の階の階段に近い部屋を確保してから一旦腰を下ろす。

 ギルフォードは背負っていた鞄をそっと下ろし自分の側に置いてから息を吐き出し、ダルサロッサは体を再び小さくしてからその場に座り込む。

 やっと落ち着けたことに安堵してギルフォードは鞄の中から携帯食料を取りだしてそれをダルサロッサへと与えた。


「島が多いとどうしても海洋同盟を思い出すな」

「かもしれんな。私からすればあまり想い出の強い地では無いからな。私自身が訪れたことは無い。何せ私の先々代の話だからな」

「竜の寿命は五百年だったか? 先々代という事なら千年ぐらい前に話か?」

「そういうことだな。まあ全員が五百年という分けじゃ無いけどな。エアロードの先代のようにもう千年以上生きている化け物も居るぐらいだしな…」

「そんなに生きているのかエアロードの先代は」

「あれは文字通り竜界の化け物だ。知識は豊富だからな…なんでその子供があんな感じなんか分からんが…」

「まあ…馬鹿だと聞いているけど。先代は賢いのか?」

「そうだな。その上慈悲深く誰よりも優しい竜だ。そういう人の元で過したからこそ誰よりも人を見下さない竜になれたのかもな」

「? と言う事は先代のエアロードもそういうことか?」

「先代はエアロードとは名乗っていなかったがな。まあ人を見下さないのは風竜一族の代々の特徴でもあるよ。あれはそういう生き物だと思えば良い。珍しい方だがな。中々記憶の継承をしないことでも有名だ。実際エアロードも先代からは記憶の継承をしていないはずだ」

「だから馬鹿だと?」

「そういうことだな。出なければあんな風に賢い人から竜一の馬鹿は生まれないだろう? まあ先代はあの馬鹿については少々頭を悩ませているようだが…」


 ギルフォードも携帯食料を取り出してスナックバーの様な食べ者を口に咥えてそのまま半分ほどでへし折る。

 口の中に入れた携帯食料を食べながら「なんでだ?」と聞いたギルフォード。


「エアロードの一族は他の竜とは少し違って過す場所がある。代々風の谷の一族と共に生きてきて、風が谷を通り過ぎて何時でもその風を感じて生きているんだ。一度行ってみると良い。あそこは良いぞ」

「ほう…お前が褒めるとな」

「最もあそこで過ごすとなると少しばかり考えるがな…生きづらい場所ではある」

「どんな場所だ?」

「両サイドの崖には街が崖の中と外を繋ぐ形で作られていて、無数の大きな橋が架けられているんだ。気持ちの良い風が年中巡っていて夏でも比較的涼しく冬は寒すぎないベストな気候だと言える」

「ほう…と言う事はお前は俺達に会う前はそこに居たのか?」

「時折滞在して居た。あまり長居すると先代が五月蠅いので鬱陶しく感じるとまた出て行く感じだな。だが先代曰く千五百年ぐらい前には強い突風が年中吹き荒れていて困っていた時期もあるそうだ」


 ギルフォードは鞄の中から水の入った水筒を取りだして一口だけ含み、口の中を潤して改めて「なんでまた?」と聞き返す。

 風の谷の一族にとっては別に困る話ではないのでは無いかと考えたギルフォード。


「強風は流石に困るさ。橋を渡って行き来する一族に取ってその橋を渡っている間に突風に吹かれたら最悪死者が出るしな。実際当時はそれなりの死者を出したようだし。何せ当時はまだ吊り橋時代だったそうだからな」

「それは出そうだな。でもそんな生きづらい場所じゃ人も減っていくんじゃないのか?」

「さっきも言ったがそういうことさえ覗けば比較的過ごしやすい気候なのは確かだ。それにそれ以降そんな事件が起きたのかと言えばそれは無いそうだし、そういう意味で今でも人気の高い場所だよ」

「ほう…あまりそういう場所で過ごしたいとは思えないな…」

「お前はそうだろうな…だが一度行ってみると良い。本当に良い場所だ。当時カメラを持っていたら取ったんだがな…」


 ダルサロッサはカメラを自らが持っていたブライトが作ってくれた耐熱用の鞄から取り出して窓へと移動してからシャッターをきる。

 ギルフォードは「ほどほどにしておけよ」と告げたから一旦背を壁に預けた。

 そこまで聞いてふと想う。

 じゃあダルサロッサの故郷はどんな場所なのだろうと。


「ダルサロッサの故郷はどこだ? 流石にあるんだろう? 帰らないだけで、お前達にとって故郷と行っても良い場所が」

「……あそこを故郷だと考えて良いのかは分からないが。皇光歴の世界の赤道にある少し小さめの火山のある島がある。名前を『エンドラ島』という。そこが位置を我々炎竜の故郷には成る。そして…お前達の一族の発祥の地でもある」

「? 海洋同盟じゃ無いんだよな?」

「ああ。そこには昔には少し大きめの街が存在していたんだ。そこの一族の長が代々『不死鳥』という魔法を宿しており、私の祖先はそれを求めてあの地に舞い降りた。それ以来からの付き合いだな。もっともその祖国が滅びて海洋同盟へと移動して数年後に決別したそうだが…」

「愛想を尽かしたんだったか?」

「どうだろうな…痺れを切らしたという言い方もある。どのみち私には関係の無い話だ。それを今更ではあるがあまり良い事だとは思えないしな…」

「いつかそのエンドラ島にも行ってみたいもんだな。今でもあるんだろう? 島自体は」

「あるよ…もう誰も住んでいないとは思うがな。あそこは火山の噴火が定期的に起きるから人が過ごすには難しい場所だからな」


 ギルフォードはそんな場所に想いを馳せる…祖先の故郷を想像しながら。


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