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希望の戦士 9

 シャドウバイヤは戦闘機に向って突っ込んでいきそのまま影となりながら姿を一旦消してしまう。

 戦闘機からすれば目の前までやって来た大きな竜がいきなり姿を消したのだがら驚きはするだろうが、それが見つかる前にシャドウバイヤは戦闘機の内一機を打ち落とすことに成功した。

 突然現れてそのまま戦闘機を真っ二つにしてしまう竜に恐れるが、今更逃げられるわけがない戦闘機は大きく旋回してシャドウバイヤを攻撃しようとミサイルとロックするが、そのミサイルが射出されると同時に再び姿を消してしまうシャドウバイヤ。

 再び見失った対象に全体をキョロキョロと確認していると、少し後ろを飛んでいたパイロットが大きなビルに大きな影を見つけ出し、中国語で「まさか」と呟くより前にシャドウバイヤは再び戦闘機を真っ二つにしてしまった。

 後ろを飛んでいた戦闘機がやられ、遂に一機だけになってしまったが、同時にシャドウバイヤがどんな手口で攻撃しているのかようやく分かったパイロット、大きく建物の周りを旋回してシャドウバイヤの方へと向き直るが、再び姿を消したシャドウバイヤ。

 パイロットは今度こそ冷静に近くの建物へと向って突っ込んでいき、その建物が見えると同時にミサイルを撃ち込んでいくが、そのミサイルが当たる直前影は見つからなかった。

 では違う影なのかと思い周囲の建物を探ってみてもやはり見つからない。

 どこにいるんだと思っていると影と考えがいたり同時に「まさか」と先ほどのパイロットと同じように呟くと、衝撃が体中に襲い掛り彼の最後の言葉となった。

 シャドウバイヤは下から上へと向って登って戦闘機を打ち落とし、再び影へと隠れてそのままソラの元へと向って戻っていく。



 俺は飛んで行くと同時に一台の戦車へと向って突っ込んでいき、突っ込むと同時に緑星剣で戦車を切り刻んでそのまま解体してしまうのだが、どうやらこの戦車無人のようで中には誰もいなかった。

 その代わり中には大きな機械が色々な部分にケーブルを伸ばしており、遠隔操作で攻撃をしているのか、それともある程度は自律的に攻撃をしているのかは俺には分からなかった。

 しかし中身が機械だと分かると少しだけだが気持ちが楽になるのは確かで、俺はそのままエコーロケーションを常に建物全体に張り巡らせていると、やはりこの建物全域に全方位に向って戦車が配置されている。

 それもある程度均一にしかも上下のバランスをある程度考えられている配置。

 間違いないだろう。

 これは元々戦車ではなく砲台を備え付ける予定だったが、時間が無く戦車を急遽配置したのだろう。

 やはりこの先の駐屯地は元々敵に狙いやすくする罠で、その為にあの直線上の道路を通りかかった部隊を超電磁砲で襲い、それを攻撃しようとした部隊をミサイルで空襲するのが狙いだな。

 すると対面にあった超電磁砲が俺に向って砲弾を放ち、超電磁砲によって高速で飛んでくる攻撃をギリギリで回避しつつ俺は対面にある戦車に向って駆け足で移動して行く。

 周囲の風を掴んでから障害物は全部破壊しながら突っ込んでいく。


「竜撃。風の型。到達点。風竜回転演舞」


 纏った風は大きな竜の形へと変貌していき、壁を破壊していきながらドンドン威力を高めていく。

 今度は下から上から高速で飛んでくる砲弾をギリギリで回避していくが、正直超電磁砲の要領で飛んでくる砲台なんて避けられるだけ奇跡の類いだ。

 真下からは流石にやってこないので助かっているが、場所次第では足下から襲い掛ってくることもあり得るだろう。

 俺は一台の戦車を破壊した状態で方向を転換しつつ速度を落とさないようにして今度は円状に移動して行く。

 彼方此方から飛んでくると判断すると飛永舞脚で速度を一瞬だけ上げて回避していくと、次々と戦車を沈黙していく。

 三十分後には全ての戦車を破壊することに成功したが、その時点で大分体力を消耗してしまう。

 俺は一旦体力の回復に集中して居ると、ミサイルが再び大量に上空へと向って打ち上げられていき、俺はそれはきっとケビンが打ち落としてくれるだろうと思っていると、ミサイルの方向はそのままアメリカ側ではなく駐屯地方面へと向って進んで行く。


「なんで…駐屯地へ…」

「誤作動か? 恐らく状況を考えればあのミサイルも機械で動かしているんだろうしな」


 通信機が鳴り出すので俺は通信機をオンにするとアクアの声が聞えてきた。


『パパ? その近くにミサイルが飛んでるよね? それ最初っから戦車を破壊されたら駐屯地を破壊するように設定されているみたい。誤作動とかじゃないよ…何か狙いがあるんだと思う! パパ! 止めて!』


 なんでだ!

 なんで中国軍は駐屯地を襲う!?

 俺は考える前に駆け出しており風を纏った緑星剣をしっかりと握りしめ、大きな風を纏った状態で俺は駆け出しているのだった。



 一人の少女は実の兄と父親が無事である事を毎日祈っていた。

 何でも無い数ヶ月前突然徴兵されてしまった二人、そしてそんな二人とは柵を越えた反対側に自分達は閉じ込められている。

 何度も何度も見えている大きな柵の先にきっと兄はいると、そしてこの柵を何度も何度も恨みそうになった。

 戦いが始るからお前達は戦いに参加する者を支えるんだ。

 そんな事を平然と言われ、毎日毎日戦う兵器を作り、戦う者達の治療を、戦う者達に食べ物を作って回る毎日。

 母も決して体が強い方ではないのに、それでも必死で頑張っているのは「いつか会える」と信じていたからだ。

 でも妹はうっすらと覚悟していた。

 いや…もしかしたらこの野営地にいる皆が覚悟しているのかもしれない。

 自分達はもう二度と大切な人には会えないのかもしれないと、そしてこのまま死ぬのかもしれないと。


 少女は毎日のように祈り、毎日のように手を合わせて何度も何度も祈っている日々の中それは突然起きた。

 まだ上海へと上陸は果たされていなかったはずだが、第一野営地であるこの場所は真っ先に狙われやすい場所。

 それ故にここは半分囮のような役割をもっており、それが無事果たされる事を祈るだけだった毎日の中、その最後の希望でもあった作戦は何者かによって潰された。

 誰もが野営地から見えた戦車が配置されている場所が襲撃されている瞬間、ドンドン火の手が伸びていき最後には攻撃が完全に止む。

 それが何を意味するのかなんて誰にも分かっていた。


 少女の母親はテントから出てきて自分の娘である少女を探し出し力一杯抱きしめる。


 そんな事しかできなかった。

 この野営地最後の役目は寝返ることを阻止するために野営地そのものをミサイルで完全に破壊する。

 そうすることで野営地をアメリカ兵が襲撃し無差別に殺したと流布する事で戦う者達を鼓舞する事だった。

 少女は目の前までやってくるミサイルがハッキリと見え、その瞬間に瞳から溢れ出る涙でドンドン視界が悪くなっていく。

 どうして自分がこんな目に遭ってしまうのかと、どうして自分達がこんなことをしなければ成らないのか。

 幼い頃何度も夢に見た王子様。

 どんなピンチにも駆けつけてきて、泣いていたら助けてくれるヒーローこの世界にいないのかと。

 いなかった。


 神に祈っていたら助けてくれるわけがなかった。


 仏に祈れば目の前に現れて奇跡を起こしてくれるわけがなかった。


 戦っていれば奇跡が起きるわけでもなかったんだ。


 それが最後のと気になってようやく意味が分かったとき、少女は最後に「ヒーローなんていないんだ」と呟いた。

 その時少女の視界に溢れてくるミサイルの前に立ち塞がる一人の鎧を着た英雄がミサイルの全てを打ち落とし爆炎から野営地を守った。

 その姿は正しく『ヒーロー』だったに違いない。


 神も仏もきっといないが、それでも泣いていたら助けてくれるヒーローは…奇跡の戦士は目の前にいた。


「ふざけるな!! 例えどんな理由があったとしても…ここにいる人達を殺して良い理由にはならない!!」


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