希望の戦士 8
上海上陸組による攻防戦も開始から早くも一時間が経過しており、戦場では俺達竜達の旅団の協力もありアメリカ側が大きく押す形になっており、俺はビルの屋上から戦場の様子を見守っていた。
ケビンは相も変わらず桟橋辺りの安全確保へと移っており、ジュリは先ほどのバリゲートの中で治療を続けている。
どうやら例のバリゲードの重要性に気がついたアメリカ軍側があそこを中心に防衛線を引いており、ケビンはその周りで上手く敵を撃退しているようだった。
最もその防衛戦の二キロ先ではレクターがようやくビルから飛び降りて中国軍側に打撃を与えている。
さて、どうしたものか…このまま中国軍が使って居るであろう駐屯地へと突っ込んで行っても下手をすれば犠牲者を一般から出す可能性が高い。
俺個人としてはそんな事態は避けたいところだし、しかしこのまま突っ込んでいく訳にもいかないと考えて少し腕を組んでからふと何かプロペラの様な音が聞えてきた。
下を見ることなく機関銃をぶら下げている軍用ヘリが俺の目の前まで現われ、軍用ヘリは俺目掛けて機関銃の銃弾を見境なしに飛ばしてくる。
まあ俺は自分に当たる部分だけ緑星剣で受止めてから機関銃の攻撃が一旦止んだ所に俺は風を纏った一撃でヘリを真っ二つにしてそのまま撃墜してしまう。
俺からすればすっかり慣れた敵であるため特に苦戦することはないし、そんな事に苦戦するつもりも全く無い。
「駐屯地と思われる場所を狙わないのか? 今なら正面から行けば墜とせるだろう」
「それは墜とせるよ…でもその場合あそこにいる民間人に死傷者が出るでしょ? 今の段階でそれを判断するのは流石に時期尚早だと思う」
ブライトは俺と師匠の会話を聞きながら駐屯地へと視界を真っ直ぐに向けていると、その近くに大きめの少し変わった建物がある事に気がついた。
そこから伸びている横に伸びている建物、どうにもブライトはそこが気になるようでじっと見つめて居る。
まあ今からでも俺が向っても良いのだが、あそこは別に敵戦力が集まっている感じではないので行く必要性もない。
まあ上海を攻略した後で連れて行ってやれば良いだろうと思ってその二つの建物から視界を外そうとしていると何か閃光が見えた。
そう思って俺は緑星剣を呼びだして上手く剣を振って飛んできた大きな銃弾を真っ二つにしてしまうが、その銃弾の重さから爆薬を入れていない純粋な金属で出来た銃弾である事は間違いない。
実際その銃弾は後方にある建物に直撃しても特に大きな爆発は起きない。
あれだけの質量の銃弾を上の方向へと向って真っ直ぐに勢いを落とさない様に飛ばすことが出来るのは超電磁砲しかないだろう。
しかも戦車タイプと思われる兵器があそこにある計算にあるが、あそこは下手をすれば垂直に駐屯地へと向う道と交差する。
あれがあるとアメリカ側に犠牲者が出かねない。
「あれを先に潰してしまった方が良いだろうな…どっちから攻略するかな。二つある建物」
一つは先ほども見た変わった建物でドーム状に支柱のような建物が一つ目、二つ目はそこから横に大きく伸びている建物である。
近いところから攻略すれば良いかと思って俺はビルから飛び出して行き、風竜から契約で手にいれた能力で飛翔していく。
横に伸びている建物の天井を突き破ってミサイルのような物がバリゲートを張って居る治療用の中心地目掛けて飛んで行くのが見えた。
俺は再び風を纏った一撃で全部吹っ飛ばそうとしてみたが、それ以上に早くケビンがいち早く光線で直撃するミサイルだけは狙って打ち落とした。
どうやら俺はこのまま真っ直ぐ例の建物を攻略した方がよさそうだ。
「ブライト戦闘に入るから服の中に入っているんだ。これから鎧を展開する。師匠は?」
「このままで良い。どうせ鎧を展開したら無条件で密封されるわけだしな」
なら良いかと思って俺は星屑の鎧を展開し俺を狙った正確無比な銃弾をギリギリで避けるが、やはり早さなどを考えても超電磁砲だろう。
まるで雷の様な早さで近付いてくるし銃弾を避けるのも接近していけば流石に難しくなっていき、飛んでくる数も増えていくのが良く分かった。
どうやらあのドーム状の建物自体は別段スタジアムの様な機能を持っているわけではなく、幾つかの階層を持つ建物であることは間違いが無い。
一階一階の階層が非常に大きく出来ており、その階層に重そうで大きな超電磁砲を搭載した普通の戦車より大きい奴が普通に鎮座している。
横から伸びているアームが戦車を固定しているようだし、超電磁砲特有の反動をあれが相殺しているのだろう。
しかし、あれだけの超電磁砲の反動を建物が、しかもパッと見ただけで十は下らない数を支えることが出来るのだろうか?
「師匠。超電磁砲搭載型の大型戦車が十台建物の片方の側面にあらゆる階層にあるんだけど、アームで足場を固定して反動を軽減しているのは分かるけど、あれをやっていて建物は持つわけ?」
「建物は大きいのか?」
「ああ縦に大きく伸びていてパッとはドームのように見えるんだ。一階一階は大きく出来ており、三階から上に超電磁砲を搭載した戦車がある感じ」
「そうか…ならその建物自体その為に作った物じゃないのか? 中がよく見えたら見て見ると良い。頑丈に作っているだろうが、その分中はスッカスカだと思う」
「ねえ。それってその為だけに周囲の建物を壊して作ったって事? それとも元々在る建物を改造したの?」
「改造したのかもしれないな。あの建物の形状元々はスタジアムとかそんな物の為に開発したけど、戦争が始るからその為に中を改造したんだ。多分国が買い取ってさ」
「かもしれんな。ドーム型は戦車を搭載するためだろうが、もう一方はどんな建物だ?」
「横に長く出来ている建物で中には恐らくミサイルを搭載した戦車みたいな奴が配備されていると思う。さっき建物の天井をぶち破ったかと思うと大量にやって来ていたから」
まだ出てこないところを見ると一回ミサイルを飛ばしてから次のミサイルを飛ばすまで時間が掛るのかもしれない。
なら先にあっちの長い建物を攻略するべきか?
「ソラ。先に戦車を潰せ。ミサイルは空中への滞空時間が長い分だけ撃ち落としやすいし、飛んでくるのにも時間が掛る。魔導を使う事が出来る部隊が至る所にある以上簡単には突破できんが、超電磁砲は別だ。あれは真っ直ぐに突っ込んでいくことしか出来ないが、その分早さがある。あれが有る限り下手をすれば建物なんて盾にはならない。そのまま真っ直ぐバリゲートへと突っ込んでいくぞ。今はお前を狙っているからそんな事も無いが、もしお前が先に横に伸びている建物を襲撃したら向こうに行く前にバリゲードを突破する」
「ソラ! 横から戦闘機だよ!!」
ブライトの言うとおり右側から戦闘機が三機俺目掛けて突っ込んでくるのだが、どうやら銃火器やミサイルで墜とせるとは思って居ないようで、突っ込んで打ち落とそうとしているようだ。
無論そんな攻撃が出来ると思えないが、念に念を入れて俺は俺の影の中に隠れているシャドウバイヤを読んだ。
戦闘機を足場にしてそのまま回避していると、戦闘機は建物を大きく旋回してまた突っ込んでこようとしている。
「シャドウバイヤ。あの戦闘機を落としてくれ。被害が出るかもしれない。俺はこのまま戦車を攻略する!」
「仕方ない…ならこの戦いが終わったら食べ物を要求するぞ」
「それ死亡フラグって言うんだよ…黙っていってこい!」
「フム。仕方ない…」
シャドウバイヤは翼を大きく羽ばたかせて戦闘機目掛けて突っ込んでいく。




