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エピローグ:悔しさから学んだこと

 俺とライツは肩で息をしており、ある意味戦いは俺の価値という形で決着を迎えたのだが、皆からすればこの状況にイマイチ分からなかっただろう。

 ライツは負けたという顔をしているのに、俺はそんな風な感じを皆受けないのだろうが、ギルフォード達はジュリの方へと近付いていき「どうしたんだ?」と話しかけた。

 皆は「どうすればこの雰囲気になるんだ?」ぐらいの気持ちなのだろうし、ホーク達も気にはなるのだろうが、ライツの表情がまるで「聞くな!」と叫んでいるかのように見えたのだろう。

 お互いにイマイチ納得が出来ない結果には成ったが、その結果ジュリすらもこの状況を説明できなかったのだ。

 ジュリもブライトもエアロードですらも俺が納得できていない理由が理解出来るし、ライツが納得できない理由も理解出来ないでもないのだ。

 ライツは俺に向って鋭い睨みを向けつつ声を張り上げる。


「何故殺さなかった? お前には私を殺す事が出来たはずだ…少年は私に勝った…これが全てだ…戦場において生き死にこそが結果の全てであり、それ以上もそれ以下だって存在しないはずだ。なのに貴様は生かして何がしたい? それとも私に情でも沸いたか?」

「ジュリ…これは一体何なのです? 話を聞く限りではソラは勝てたのに、殺せたのに敢えて生かしていたって事?」

「……はい。多分ですけどソラ君は…」


 俺はライツを見ながら何も言わないで黙りこくっていると室内に入ってくるのは師匠だった。

 師匠は全員の間を通り過ぎていき俺の背中まで辿り着くと小さく声を張り上げた。


「納得できなかったんだろう? お前の事だこの男に手加減された気がして納得して勝ったと思えなかった? 違うか? だから敢えて殺そうとは思わなかった。全く…こういう時に納得のいかない結果を迎えるとこういう行動を取るところまるで変わらんな…」

「師匠にだけは言われたくない。だって……だって…」


 俺は涙を流しながら師匠の方を見てハッキリと告げた。


「俺は師匠のそういう所を見て学んだのだから。悪いですか? 弟子は師に似るって言うでしょう? 師匠」

「フン。悪い気はしないな…ライツと言ったか? 情報局の情報ではそういう名前だという話だが? 私の声はもうこの部屋の全員が聞えているはずだ」

「ああ。まさか生きているとは…嫌コレもあのボウガンという男の目的か…」

「かもしれんな。あの男にはジェイドとは違う目的があるようだし、その装置を守る事が不死の軍団の契約だというのなら今この瞬間契約は終了したと言うことだろう?」

「ああ。残念な事にな…この少年に殺される前に仕事が終わってしまった。仕事以外で人を殺すつもりはないしな」

「なら新たな契約だ。ガイノス帝国は君達アクトファイブにこの戦争への協力を求める。もし求めてくれるならロシアを一週間早く解放出来るという計算らしい。幸いこの街にはガイノス帝国軍のトップの二名が来ているからな。どうだ? お前が私の弟子を強くしてくれたと思っている。ソラはきっと自分の実力だけで倒したいんだろう。だが、この馬鹿弟子が君を倒すのに一生掛っても無理だからな」

「………ハハ。ハハハ。ハハハハ!!! なるほどだからこの少年は先ほどから納得できないという顔はそういう理由だな。良いだろう。だが一つ言わせて貰おう。その仕事が終われば私達はまた自由にさせて貰う。その上で納得できないのなら向ってこい。ホーク! ロシア全域を制圧しろ」


 ライツは立ち上がりホークの方へと向って歩いて行くのだが、ライツは数歩で一旦止まり師匠の方をジッと見つめる。


「この少年の師匠であるアックス・ガーランド。貴様と一度戦って見たかった。残念だ。例え貴様が生き返ったとしても元通りの体になるとは思えない。多分全盛期の貴様とは戦えないだろうな…」

「それは自覚している。だからこそ私が選ばれた。普通の人間なら生き返る段階で問題が強すぎるが私ならギリギリ耐えられると考えた結果なのだろう」

「まあその代わりまた強くなったその少年と戦えるのだと思ってここは一度引こう」


 ライツは歩き出し俺は敢えてライツへと背中を向けて見ようとはしないでいると、ライツは歩きながら俺に向って語りかけた。


「悔しいと思うなら。戦いの中で手加減されたと思うなら強くなることだ。人は結局で強くなることでしか後悔は払拭できない。師匠に代わりに代弁させた事を後悔しているなら、私に手加減されたことを後悔しているなら…強くなれ!! 私は信じて見よう。私達は傭兵次は味方かもしれないが一生そういうわけじゃない。いずれはまた敵対することだろう…その時君が強くなっていることを信じて見よう」


 俺は何も言わないで黙って彼等が姿を消していくのを見守っていることにし、ケビンを含めてどう声を掛けたら良いのかと少し躊躇っている。

 ジャック・アールグレイに関しては一瞬で興味を失ったのか黙ってダークアルスターと共に部屋から出て行く。

 決して勝ちとは言えないこの状況に対して俺は全く納得が出来なかった。


「悔しいのなら強くなれ。これはライツと同じ意見だ。お前は生きている…生きている以上は強くなることだ。今のお前とライツとの差は結局で戦闘経験値だ。こればかりは一朝一夕でどうにかなるものじゃない」

「分かってるよ」

「なら涙を拭いて今は前に進む事だ。私を生き返らせてくれるのだろう? 今のままではお前はジェイドに勝てるかどうかも怪しいな…ライツ達の戦いを見て何かを学べば良い。ついでにその甘い精神を少しぐらい鍛えて貰え」

「一言余計だと思う…」

「そうか? 今回お前は少々甘いところが強かったからな…言いたくもなるさ。守りたいと思うのなら強くなれ。今のままでは私が与えた卒業も返還かな?」

「あれって生き返ると同時に返還されるの?」

「私の意見次第だろう。お前がだらしない部分を見せつけ続ければ考えを改めるぞ。決めた事だろう? 私を生き返らせるという聖竜たちの計画に賛同すると、誰だって生き返るのなら「この人」と思う人は居るだろう。お前はその中で唯一の権利を手に入れたんだ。誇れ」


 誇れる事なんて一切存在しないだろう。

 俺は誰もが欲しい権利を手に入れて、それがある意味ルール違反だとしても俺は誇る事なんて…そう思っているとアンヌが大きな声を張り上げた。


「胸を張ってください! ソラさんは誰もが欲しい権利を持っているのですから! それに私はきっとそれを知っても欲しいとは思えないです。だってそんな事をしても私の友達は納得してくれないから」

「俺も同じだな。そんな事を選ぶぐらいならその権利を譲れって言われるよ。だがお前はそれを受け入れる事が出来、同時にそれについて周囲が納得できたのだろう? なら胸を張れば良い…俺達も強くなる。じゃないと世界だって救えないぞ。未来を生きるんだろう?」

「そうだよ! ソラは俺達がいるじゃん! 俺や海で一緒に次期帝国三将なんて言われるの格好良くない? そういう風に言われるようになって初めて後を継げるって思う」

「レクターのそれはズレているような気がしますが…私は貴方達師弟はその権利を持っていると思いますよ。貴方達師弟はアメリカを守ろうとしてくれたではありませんか。誇って良いと思います」

「僕もそう思います。父はソラと一緒にいるとき楽しそうでした。だから胸を張って前に進もう」


 皆からの暖かい言葉に俺は溢れ出る涙を抑える事が出来なかった。

 するとジュリが俺の方へと近付いていき笑顔を向けながら俺を強引に振り向かせた。


「誇って良いんだよ。ソラ君が選んだ道は決して間違いじゃない。そういう想いの繋がりがきっと沢山の人を救ってきたんだよ。ソラ・ウルベクトはアックス・ガーランドの弟子で良かった。間違っていなかった。それが今証明されたね」


 悔しさをバネに俺達のロシアの戦いは幕を下ろした。


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