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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
シーサイド・ファイヤー《下》
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嘘は誰の為に 5

 ケビンは最後の戦いへと向かう前、徹夜でマガイ族について探し出したのだが、情報を仕入れていたのだが、まるでマガイ族について出てこなかった。

 アベルは『マガイ族は海洋同盟出身』だといった。

 しかし、ケビン達アメリカ政府は『外の大陸出身』だと聞いたはずなのだ、この誤差は何か?

 それがケビンがどうしても知りたかったこと、マガイ族であるバウワーも同じことを言っていたのに、それでもアベルだけは『海洋同盟出身』だと告げた。

 その差が知りたかった。


 そこに書かれているはずの内容では何も分からなかった。

 海洋同盟の情報を探るしかないのか、それと帝国政府の情報を調べた方が良いのかと悩んでいると、部屋の中に一人の男性が入ってきた。


「アベルさん」

「調べているのか?」

「はい。あなたはマガイ族は海洋同盟出身だといいました。でも私達はマガイ族は外の大陸出身だと聞きました。どっちが正しいんですか?」

「どっちも正しい。この場合あの男のマガイ族は両方だ」


 ケビンは『両方のマガイ族』という言葉に気が仮を覚えたのだが、アベルの表情は特に変わることも無く真顔のままだった。


「このパソコンではもう一つのマガイ族は調べられないんですか?」

「それでは無理だな。ガイノス帝国の最重要機密事項に指定されているからだな。最も、あの男自身は知らないだろうが、まあ両親は知っていたはずだな」

「どうして言いきれるんですか?」

「お前が聞いたんじゃないのか?両親から止められたんだろ?それは知っていたからだ。両親は二つのマガイ族の結末を」


 アベルが語る二つのマガイ族の結末。


「マガイ族は元々暗殺業を縄張りとした一族。それは間違いじゃない。しかし、それは外のマガイ族だけだ。海洋同盟出身のマガイ族は違う。そもそもマガイ族とは体に『異能』を宿す一族の事を指す。そういう意味では我々『北の近郊都市』出身者ですらもマガイ族になるのかもしれないな」

「ではソラも?」

「そういう事になるな………向こうの世界にいる人間も体に『異能』を宿す者は例外なくマガイ族だ」

「ではなぜそれを秘匿にするのですか!?」

「マガイ族は従来より『正々堂々』としている者が多いからだ。その上もう一つのマガイ族は元来より『犯罪者』としての一面が多く当時から『マガイ族』と言えば『犯罪者』と言われることも多かった。それ故に他の『異能』を持つ者達は自らを『マガイ族』と呼ぶことを恐れるようになった。それが『マガイ族』を避けるようになった理由だ」

「マガイ族が犯罪者と言われてきたから言葉を避けたと?」

「ああ、当時まだ魔導同盟がいくつも残っていた頃、全魔導同盟で『マガイ族』の討伐を行う事になった際、外側の大陸へと進撃を開始し戦いは激化………することも無く終わりを告げた」

「それは各国軍が強すぎて話にならなかったという事ですか?」

「マガイ族はそれ以外の勢力の手によって滅んでいたからだ。それが何なのか今でもよく分かっていないがマガイ族はまばらに散っていった。お前さんが見たマガイ族の男性は二つの異能を持っている。一つは体を強化する術、もう一つ………これが父親からの術だな。こっちの方が厄介だ………姿を周囲の景色に同化させる術だ。私と戦っていた時、かすかにだがこの力を使っていた。恐らく自覚が無いのだろうな」


 それがバウワーの力だという。



 戦火が開いたのはバウワーからだった。

 林の中を走って近づていき、ハンドガンを二丁連続発砲でケビンに襲い掛かるのだが、ケビンは魔導機の力で恐ろしい速度で走り出して回避する。

 足が滑りそうなほど不安定だが、しかしケビンにとっても決して悪い条件では無かった。


「アベルさんの予測が正しければ、マガイ族としての才能はまだ自覚していないとのこと………自覚する前に倒さなければ」


 バウワーも決して負けてはいない、自らな身体能力を最大限まで高めながら速度を落とさないように走り出していく。

 ハンドガンでは勝ち目がないと悟ったバウワーは素早く武器を切り替え、隠しておいた片刃大剣を取り出し振り回しながら近づいていく、この距離では気配を消す意味は無い。

 バウワーは忍ばせる事よりもどれだけ相手を殺す事に集中するが、ケビンは素早く反応して見せた。


 ケビンは誰よりも早く動くことが出来るが、しかしそれでも力だけは別段人より優れているわけではない。

 だからこそ大剣で襲われればさすがのケビンでも一溜りもない。


「速度をアップ!」

「落ちて切れろ」


 ケビンの脳天目掛けて大剣を振り下ろすが、ケビンは全身の神経が焼き切れるほどの痛みを覚えるほど素早い速度で攻撃をギリギリの所で回避する。

 紙一枚分ぐらいの差ではあるのだが、それでも回避しきったケビンはそのままバウワーの頭めがけてナイフで斬りつけようとするが、バウワーは攻撃を大剣の側面で受け止めた。


(聞いたことがありますね。大剣は大きく質量を持っている為に盾としても利用することが出来る)


 本来剣という武器は側面からの攻撃に弱く、刀身が細い武器程簡単に壊れやすいが、大剣はその特性を回避する為に大きく作られているのが特徴。

 アベルやガーランドの武器も同じ大剣であるが、切るというよりはその質量で叩きつけるという方が正しい。

 大剣を軽々しく振るう事が出来てこそその真価を発揮するが、逆に言えば振るう事が出来ないバウワーでは軽々しく扱う事は出来ない。

 だから動きが単調になる。

 その動きはケビンには読みやすく、動きを回避することは非常にたやすくなっていく。


(この動きはなら………勝てる!)


 ケビンはある意味勝利を確信し、バウワーは武器の選択をミスしたことに舌打ちをした。

 何故自分がこの武器を選び出したのか、暗殺業を縄張りにしてきた自分がどうしてそもそもこんなに正々堂々と戦っているのか、脳細胞が焼き切れるのではないかと思われるほどに思考し、同時にバウアーの中にある何かが切れた。


 バウアーの体が透明になっていき、同時に後ろに下がっていくバウアーとの距離感がケビンには分からなくなっていった。

 空を切る感触、バウアーに逃げられた。


(これですか?アベルさんが言っていたバウアーのもう一つの異能)


 最悪のタイミングだと思いながらもバウアーがまだ気が付いていないのならチャンスだとすら思えた。

 足音やぬかるんだ地面に足跡が残っているはずだと、判断し耳を目を最大まで利用して気配を探り出す。


 目の前にいるケビンがピタッと身動きが止まり、周囲を探りだそうとしている姿を見て何が違うと直感で悟った。

 だからだろう自らの手を見つめているとそこには『何も無かった』、そこには手があるはずの場所には何もなかった。


 そこでようやく自分が透明になっているのだと気が付いた。


「ああ………そうか!はは……」

「気が付かれた!」


 ケビンはバウアーのいない方向へと逃げ出していくが、バウワーは後ろから追いかけていき腰に隠したナイフで切りつけようとする。

 ケビンは背中に切り裂かれたような痛みが入り、地面を転がりながら顔をバウアー方へと向けた。


「これは………お前を殺すために力だ」

「倒します!あなたを……絶対に!」


 二人の戦いは熾烈を極めようとしていた。


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