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挨拶から始る戦い 2

 ホークは大きな食堂で大口を開けながら大胆に鶏肉を頬張るベベルを見下すような顔をしてなるべくベベルから遠ざかろうと遠い席を選び座り込み、自分の目の前に並べられた料理をテーブルマナーをきっちりと守りながら綺麗に食べて行く。

 野蛮という言葉が似合うベベルとホークの差が垣間見える食事風景であり、自分の目の前の席を滅茶苦茶にしているベベルの食べている鶏肉の破片がホークの近くまで飛んできた。

 油や肉汁が飛んでくる程度ならもう慣れているので良いとして居たが、ホークとしては食べかすが飛んでくるとなると話は別であり、フード越しにでもハッキリと分かるぐらい殺気を含んだ瞳で睨み付ける。

 無論そんな事で怯むベベルでは無くむしろムシャクシャと食べる速度を上げつつ更に汚くなっていく。

 いっそ持っているフォークでも投げ付けるかと悩むのだが、実際の所ホークがそんな事をするわけがないとベベルは分かりきっていた。

 食事や私生活についてマナーを守ろうとするホークが苛立ったからと言う理由でそういう事をしないことは理解されている。

 そんな時食堂にボーンガードが入り込んで食べかすを飛ばし続けるベベルにドン引きしてホークの対面に座り込む。


「どうやらここには綺麗に食べる人間がいないようだ」


 ホークの皮肉の効いた言葉にボーンガードは「こいつと一緒にするな」とハッキリと告げつつ食事を取り始めると、そんなボーンガードにベベルは「ハンは?」と訪ねた。


「今竜達の旅団が潜伏している場所が今回は判明したから大軍を送り込んで一掃すると言っていたが? 俺は興味が無いから辞退したが」

「そうか…何!? 何故をそれを言わない!? この俺様がきっちりと粉砕してくれる者を!!」

「どうせ狙いは非戦闘員何だろうな。あの化け物らしいとは思うけど。まあ無駄だろう」

「……そうか。まあその程度で駆逐できるとは思えないな…しかしそこで戦力を使うのはどうかと思うぞ」

「それは大丈夫だ。その辺の民間の傭兵やロシア軍を使うと言っていたよ。私からすれば馬鹿らしい話ではあるけどな。勝手にすれば良いさ。ここに来るまでは暇だと思うから」


 時は少しだけ経過して夜中の一時、街が静まりかえる中軍用車両が十台以上ソラ達が寝泊まりしている建物を囲むように現れ、中から武装している集団が二十から三十ほどが一斉にアサルトライフルを構え出す。

 準備が整った段階で後方からロケット弾が三つほど建物に着弾し崩壊していく正面玄関へと武装した集団が突っ込んでいく。

 崩壊した建物と煙や砂埃で視界が悪くなっている状況で人影を発見しその人影に向って容赦無く攻撃を浴びせていく。

 その人影がまるで微動谷しないままの状態が続き、一旦攻撃の手を止めたその瞬間に砂埃の中から黒い大きな牙の生えた顔が姿を現して三人ほど上半身を食い千切る。

 大量の血が天井に向って噴き出していき、中には悲鳴を上げて後ずさる者が出てくる中十人ほどが更に抗戦しようと銃を構えた所で今度は黒い炎で大きな爆発と同時に兵士達を吹っ飛ばす。

 建物の中から現れたのはジャック・アールグレイとギルフォード、ダークアルスターとダルサロッサだった。


「アベル・ウルベクトの予想はどんぴしゃりだったな。なんだ? 不満げだな。妹と一緒にいたかったのなら一緒に行けば良かったものを」

「そうじゃない。確かにアベル・ウルベクトの予想は恐ろしいが、どうにもそれだけじゃない気がする。別に誰か予想している人間がいる気がする」

「あれだろう。ソラ達の周りでウロウロしている小さい竜。見慣れない竜がウロウロしているのは分かっている。ダークアルスター。あれは何だ?」

「…アックス・ガーランドだという事しか知らないな。あれは生き返ることが運命で決っている人間だ。あれを囮にして最後の作戦を行ないたいんだよ。私は計画の詳細を知っている身だから分かる事だがな」

「それを話す気は?」


 ギルフォードはダークアルスターに訪ねるが彼は「ない」とだけ答えた。

 ジャック・アールグレイはこういう時にダークアルスターが絶対に答え無いことは分かっている。


「諦めろ。この竜達は個人的な計画については計画の中心に関わっている人間以外には話さないらしいからな。終わってから聞け。それとも自分の大切な人を選んで欲しいのか?」

「意地悪な質問をするな。そんな事を俺の大切な人が望むと思うか? それに……あの男にはそれを選ぶだけの権利があると思って居る。俺にとって妹を救ってくれた時点で十分だ」

「だろうな。私も同じだな。そんな権利があるなら高値で売り飛ばす」

「それは言わなくて良い…だが、少しだけ気になってしまうな。この後に控えている事件とは何なのか」

「さて…まあ今は目の前の軍勢を駆逐するとしよう。ここで縫い留めるのが私達の仕事なんだからな。精々金を稼がせて貰うさ」


 ジャック・アールグレイとギルフォードは竜を従えて大軍に向って突っ込んでいく。



 俺達は地下へと降りていき流石に下水道を歩いて行く余裕が有るわけがなく、普通の地下の水道へと降りてきていた。

 情報局の人達に一旦荷物を預けてから改めて行動開始する事にしたが、ごく一部は滅茶苦茶眠たそうな顔をで俺を見つめる。

 まあ無理矢理起こしたのは俺だから睨まれても仕方が無いが、アクアとレインちゃんは流石にこの先に連れて行くわけには行かない。

 護衛といざとなったときの要員としてアンヌとジュリが父さんと一緒に現場に残る事に。


「ここから先のシナリオは幾つかあるが、恐らくこの地下水道で戦闘が始るはずだ。その隙に俺を中心に敵拠点を落としてモスクワへと真っ直ぐに向う。不満は?」

「眠い。寝たい」

「諦めろ。もう敵は来ている。アクアとレインちゃんを守るには俺達から攻勢に出る必要がある。上ではジャック・アールグレイとギルフォードがダークアルスターとダルサロッサを引き連れて敵の一団を引き受けてくれている。この水道にも裏側から回り込むとするだろうからそっちは父さんとアンヌとジュリで迎え撃つ。他は敵陣に乗り込む」

「ソラ。竜の配置はどうしますか?」

「ここに残るのはやる気の無いヴァルーチェとダルサロッサを狩りたいと思っているレクトアイムと戦闘要員になる可能性のあるあのスマフォゲームだけをしているエアロード」


 ケビンが小さく「役に立たないメンツだけを残しましたね…」と呟いた。

 それに対して否定する気はまるで無い。


「他は付いてきてくれ。コンビは俺とブライト。ケビンとシャインフレア。海とアカシ。レクターとシャドウバイヤでヒーリングベルは俺達の誰かと一緒に行動してくれれば良い。強いて言うならフリーだ。不満は?」

「有るけど聞いてくれなさそうだから言わない。何故私がレクターと一緒なんだと不満だが」

「この状況でバランスの良いコンビを選んでいるだけだ。それ以上の他意は無い。それにあの馬鹿力で動く奴にアカシを一緒にするわけにも行かないだろ」


 シャドウバイヤだけが不満げだがこれについては悪意はまるで存在しないのだ。

 それに編成を考えたのは師匠だし…俺じゃ無いし…。

 あそこで俺の鞄の中へと入って行く師匠なのだから。


「眠いから俺待機組が良い」

「だめ。起きた後で「なんで連れて行かなかった」と不満を憤慨しながら言うから。どうせ戦闘が始ったら眠気が飛ぶだろ。それに時間が無い。こうしている間も事態が進んでいる」

「そうですね。それに五時間ほどは眠れましたし」

「ええ。私もそれぐらいは眠れました」

「レクターは夜更かしをしたと…」


 俺の言葉に詰まるレクターだった。


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