金と欲望が渦巻く街 9
水族館と言えば優雅に泳ぐ魚達をバックに告白するというのがお決まりだが、残念な事に此所には俺達しかいないので告白云々というイベントは発生しないが、こうして広い駐車場で水族館全体を遠目に見ているだけにする。
エアロードは先ほどからスマフォを弄る手をまるで放置しないまま、俺が持って居るウェストポーチの中に入り込んでいるのだが、こいつこれからずっとこの状態を続けるつもりか?
出来れば普通に飛んで欲しいと思うが、その場合こいつは電柱にでもぶつかってそのまま何処かに行ってしまいそうだから不満を口にしない。
ジュリが代表でチケットを購入しようとするが、そのまま固まったようジッと何かを見つめており、三十秒後に俺を呼び出す。
どうしたのだろうと思って近付く過程で俺はカジノでの一件を思い出してしまう。
凄く嫌な予感が脳裏を過り、俺は近付いてジュリが見て居る看板を見て溜息を吐き出す。
一般チケットの代金がまず日本円で言えば『二千円』ほどだが、その上の高級チケットが日本円で『一万円』なのだが、その上のVIPチケットが更に高く『十万円』だ。
しかし、先ほどまでいた高級層と比べると可愛らしい方だと思う。
こうなると俺は更に下の階層が気になってしまう。
さて、どうやってこの三つのチケットの内どれを購入するのかという事だが、内容にどんな変化があるのか分からない。
て言うか下手に目立ちたくないので此所は高級チケットで良いだろうと思い至るのだが、なんで俺が金を持っているレクターに金を出さないと行けないのだろう。
そこで躊躇してしまうが、俺は「まあいいか」と割り切って俺は人数分のチケットを購入してから中へと入って行く。
ここで分かれるとレクターがどこからトラブルを持ってくるのかが分からないので俺は気が気でない。
順番通りに見て居ると、背中に殺気を感じてふと足を止めて首だけで後ろを見る。
後ろにいる存在がなんなのか俺には分からなかったが、それでも俺だけが感じた殺気を前に俺は一人席を外す事を選んだ。
「ちょっとトイレに行ってくるから先に回っていてくれ」
そんな言い訳をする事になるとは思いもしなかったが、実際に言うと皆はすんなり騙されてしまったので良しとした。
俺は来た道を戻っていき、殺気がまるで空気中に漂うようにハッキリとわかり、俺は出入り口から出て行きそのまま先ほどの駐車場まで戻る。
すると、その殺気はそこから更に隣に立っている廃墟に見える雑居ビルみたいな小さい建物へと続いて居るように見えた。
俺は駐車場横の車道の無い道を横断しようとしたところで下から襲い掛ってくるドリルの攻撃を跳躍して回避。
ドリルは引っ込んで再び出現するという攻撃を三度繰り返してからドリルが地面を抉ってその姿を現す。
「やるなぁ!! なるほどな。雨の街であいつらが苦戦してしまうわけだ!!」
「まずは襲ってきた事への謝罪じゃ無いのか? それともアクトファイブという人間達は常識が無いのか?」
俺はドリルを両手に一つずつ握っている巨漢を睨み付ける。
前進にパワードスーツを着ているが、それ以上に体格が大きすぎて筋肉なのか脂肪なのかが分かりづらいが、それでも地面を抉れるほどの大きなドリルを形で振るう事が出来る筋力に驚く。
俺は右手に緑星剣を呼び出すと、巨漢の男は高笑いを浮かべながらドリルを回転させながらぶつけある。
火花が散り凄い音を鳴らし威嚇をするような態度から今度は俺に向って突っ込んでくるが、速度自身は恐ろしく遅いので俺は警戒を高めながら余裕を持って回避する。
壁に垂直に着地するのだが、その瞬間巨漢の男は背中からミサイルみたいな兵器が飛んできた。
俺はミサイルを真っ二つに切り裂いて爆発を剣を振り回して回避する。
「やはりな…お前みたいな奴は正々堂々と戦うという事はしないだろう。お前は真っ正面から戦っているようで卑怯な手段を好む。実際俺を不意打ちしたし、何よりもお前は攻撃が外れているのに笑っているしな。お前は実は弱いだろ」
「クソォ!! お前みたいな奴を軽く殺して評価を上げるんだ!」
「無理だよ…だってお前弱いんだもん。実力も、人間性も…そんな感じでパワードスーツを着ているけど、お前怖いんだろ? そうやって防御力を高めている事がお前の人間性を良くも表している。まるで猫が毛を逆立てて大きく見せているようだな」
「ふ、ふざけるな!! お前みたいな奴がどうしてこんなに賞金が高いんだ!?」
賞金という聞き慣れない言葉に俺はようやくアクトファイブ内でどうやら賞金がかけられていると気がついた。
まあ、俺からすればこんな奴に狙われたところでなんとも思わないのだが、こいつを捕まえて色々は吐かせよう。
そう思って俺は駆け出そうと両足に力を込めた瞬間、巨漢の男の体が真っ二つにされてしまった。
驚きのあまり俺は口を開けて唖然としているのだが、何が目の前でおきて何をされたのかまるで理解が出来なかったのだが、一つ誰かが巨漢の男を殺した。
男は何かを喋ることも無く、最後の瞬間きっと何がおきたのか理解出来なかっただろう。
「全く…賞金に目が眩んで勝手にパワードスーツを持ち出して、何をするつもりなのかと思えば…しかも勝手に挑んで捕まりそうになるとか救いようが無い」
「身内をアッサリ殺すなんて…」
「身内? 馬鹿にしないで。あんな弱くて脳みその小さい男身内なんて言われると困る。あんな猫」
男の背中から男の血を浴びて血まみれの和風な装いである長い金髪の女性が大長刀を片手に握りしめている姿がある。
大長刀自身から妖気みたいな悪意などのマイナスイメージを漂わせており、俺はあれが妖刀と呼ばれる刀であるとハッキリと理解させた。
右目が長い髪で隠れているが、何となく右側の目は盲目であるような気がする。
「お前もアクトファイブの一員と見るが…その男を殺しに来たのか? それとも俺を殺しに来たのか?」
「? 良く分からない。私は……斬りにきた。斬れるなら何でも良い」
俺はその発言と同時に彼女の後ろにある車が真っ二つにされているし、その近くには民間人が殺されていた。
こいつ…斬れるなら誰であろうと構わないって事か?
その為なら誰でも殺すと?
「お前さ…人間なのか?」
「いいえ。殺人鬼。人斬りだと言えば良い?」
「そうか…俺は化け物を狩ろう。鬼はこの世の中に不必要だ」
こいつは自らそうな乗る化け物だ。
いやこの場合彼女はもしかしたら本当に人間じゃ無いのかもしれない、あの長い髪にもしかして隠れているのかもしれない。
角が。
俺は壁を蹴って彼女へとツッコんでいき、彼女の歪みきった微笑みを前に俺は振りかぶっている大長刀による斬撃攻撃を真っ正面から受け止める。
緑星剣が真っ二つにされるのではと思われる衝撃、触れていないのに頬に薄らとした切り傷が付いてしまう。
やはりただの武器じゃ無い。
「人を斬った数だけこの刀は伸びて鋭利になっていく……長さと切れ味は斬ってきた人の血の数」
「物騒でこの世の中に不要な武器だな。ここで破壊させて貰う」
「良いわね…私の反応速度に合わせられた人間はそうそういないわ…」
彼女は俺の腹を蹴っ飛ばし吹っ飛んでいく俺を追いかけていきながら俺の首目掛けて力一杯形で大長刀を振り回すが、俺はそれを足先で大長刀の側面を叩くことで攻撃軌道をずらして回避。
しかし、その後ろにある建物が斜めに切り傷が出来た。
ゾッとしてしまう威力だが、此所で負けたと思わせて引くとそれこそ後ろから斬られるだけだ。
何よりも剣技で負けるわけにはいかない。
アックス・ガーランドの弟子として。




