軌跡を巡る旅 5
中層から上層へと向って階段を上っていき、ある意味ボウガンの軌跡を巡る旅を俺達はして居ると言うことになったのだが、こうしてみるとメメントモリとボウガンで人間性に根本的な違いがこうもハッキリ見えてきた。
まあ、あの人外であるメメントモリを評価する上で人間性で見るのは少しばかりおかしい気がする。
あれは人間をベースにしない形での不死者なので正直人という存在では全く無い。
て言うか皆あれを人という枠組みにして欲しくないし、されたら心底不満だと叫ぶ。
「あれではありませんか? ほら武装をしている集団が複数人こちらを睨んでいますよ」
ケビンの指摘通り俺達を睨む武装をしている集団、やはり時間稼ぎをしているようにしか見えないのだが、何を考えているのか全く分からない。
多分だが本隊と言うべき主力は恐らくモスクワに居るのだろうと思うのだが、彼等自身は底までの戦力を持っているのだろうか?
正直ドイツで戦っていないので全く分からないのだが、その辺の話をキチンと聞いていたわけじゃ無いので少しぐらい聞いていけば良かったと後悔している。
俺達が階段を上り終えた途端前方方向から急に銃弾が飛んでくるのだが、あまりにも急な展開故に俺達は驚きながら物陰を見つけ出してダッシュで隠れる。
「何々!? 会話パターン無し!? 俺達との会話はもういらないと?」
「レクター五月蠅いです。少し大人しくしてください。鼓膜が破れたらどうするつもりなのですか?」
「しかし、問答無用で攻撃してきていると言うことは最上階が近いからか、何か焦りがあるからか…その両方か?」
「かもしれないな。制圧しよう。あの後方にある機械で出来たゴーレムや同じように並んでいる四つ足方向の機関銃や砲台を装備している兵器などが邪魔だな」
「フム…仕方ない。アンヌとケビンはバックアップ要員。残りはツッコムで行こう」
「なら父さんも参加するんだよね?」
父さんが黙り込む瞬間に俺の背中にくっ付いている師匠が黙の殺意を父さんに向って放ち、父さんはそれに対して「仕方ないな…」と呟く。
どれだけ戦いたくないんだ?
どうしてレクターと真逆なんだ?
そう思って俺が駆け出そうとして両足に力を込めようとしたときスマフォが鳴り響いた。
そのスマフォをブライトが代わりに取り出して俺に向って画面を向けるとそこに書かれていた文字を俺は声を出してハッキリと伝えた。
「サクトさんから父さんに。『真面目に戦わないなら説教』だって」
「何ですか!? どこかに監視カメラでも付けていると?」
ケビンが戦慄を覚えており、父さんが顔面蒼白になったまま目が殺意を放っており、そのまま猛ダッシュで駆け出していく。
父さんが先陣を切ってくれたことに皆で驚き、そのコンマ数秒遅れる形でレクターが猛ダッシュで駆け出していくので俺とギルフォードは置いて行かれないようにと駆け出して行った。
ケビンとアンヌが後方からレーザービームでアクトファイブの兵士達を狙って打ち始めるのだが、それをゴーレムは地面を叩いて土を防壁を作り出して妨害する。
俺とギルフォードはその防壁を切り刻んでケビンとアンヌの攻撃が妨害されないようにと援護していると、前方から強力な砲撃が地面をえぐり取った。
俺達は横に向ってダッシュで避けていると、父さんとレクターが同時にアクトファイブの集団に向って攻撃を加え始める。
攻撃に対して防御壁を展開して防いで見せようとするが、それでも攻撃の中心に居る人達は流石に犠牲になったようだ。
俺は風を剣に纏ってから猛ダッシュでゴーレムへと切りかかると、ゴーレムはそれを右腕で真っ正面から立ち向かってくる。
「竜撃! 風の型! 風見鶏!!」
右腕を肩から切り落としてから俺は上手く着地するのだが、ゴーレムは左腕振り回しながら俺達に向って振り下ろすのだが、俺はそれを真っ正面から受け止める。
上から襲い掛ってくる体重の乗った重い攻撃を全身で受け止めつつそれを両手で弾き跳躍して風を纏った一撃を連続で叩き込んでゴーレムを打ちのめす。
「竜撃! 風の型! 花鳥風月!」
俺が着地をするとギルフォードの方は砲台を備え付けた兵器に向って黒い炎で作り出した槍を二本ほど突き刺し、その状態で跳躍してからさらに黒い炎を圧縮した球体を力一杯叩き落とす。
黒い炎が燃え上がって兵器を一瞬で燃やし尽くす。
後すら残さずに消えていく兵器を前に俺は心の中で少しだけだがドン引きした。
レクターと父さんの方もあっという間に敵兵を駆逐し終え、俺は生き残った敵兵から話を聞こうと近付いていくと、兵士は血を吐き出してしまう。
一体何事かと驚いて俺達は駆け寄っていく。
「何ですか!? 今何が!?」
「分からない。アンヌ! 治療を!」
「は、はい…! これは…毒? 予め負けたときに死ねるように仕掛けておいた? これじゃ…」
アンヌは首を横に振る動作が俺に「もう助からない」と理解させてくれた。
彼等が死ぬ理由は前に聞いたのだが、この場合やはりこの先に何かあると見た方が良いと思い俺は改めて先を急ごうとドアに手を伸ばす。
すると、今度は懐かしい海洋同盟の本島に似ている場所に辿り着いた。
「海洋同盟の本島か…もう帰らないと決めていたが…やはりあるんだな。お前にとって大切な場所だったならどうして…お前は」
「考えても仕方が無いことでしょう? ならこの後の戦いでしっかり聞いた方が良いと思います」
すると出てきたところで真っ正面の道路の先から先ほどと同じゴーレムと兵器が二十を超える数で攻めてきた。
俺達に対する評価が高いと考えて良いだろう。
全くありがたくない光景に俺は逆に感謝したくなり、俺は溜息を吐き出す。
「人気ですね…しかし、そこまで隠しておきたいことですか…前の街にあったという兵器みたいな奴ですかね?」
「どうだろうな。もしかしたらその兵器がここに来ているのかもな…あの剣みたいな兵器が…」
いや正直な所で考えが全く無いわけじゃ無いんだ。
もしかしたらという考えはあれを見たときからずっとあったし、今だってそれを考えているわけだが。
もしかしたらジェイド達から俺の話を聞いていたのなら異能殺しの剣に対抗する武器を作り出そうとした可能性じゃ十分にある。
対抗する概念兵器をこの複数の街を経由して作り出そうとしているのかもしれない。
「まあ、あれを駆逐することで良いんですよね? あれから逃げるとは言いませんよね?」
「まあな。父さんとレクターがやる気になっているし、あの奥に次の場所へと向うドアがあると見た方が良いだろうし」
「て言うか…もう駆け出しているぞ」
ギルフォードが指さす先には父さんとレクターが猛ダッシュで駆け出しており、もう勝手にして欲しいと思いながら溜息を吐き出していく。
ゴーレムと兵器の軍勢に突っ込んでいくと、真ん中辺りからゴーレムが吹っ飛んでくるのをケビンとアンヌが驚いてしまう。
ブライトが顔を覗きだしてからしっかりと確認していると、ゴーレムは機能不全に陥っているのを確認できた。
「もう私達は必要ないのではありませんか? あれに任せておきましょうよ」
「そうだな…俺達はこの辺で体力温存しておこう。念の為だ。この辺りのドアを調べて次の出入り口が無いかどうか調べておこう」
俺の提案に皆頷いてくれたので俺達は手分けして各ドアを調べていくと、何個目だっただろうか。
俺は次への出入り口を発見した。
どうやらあの軍勢は俺達はここに足止めしている事を目的にした兵器達らしいと分かった。
先に進むか、皆を待つかと思ったが一緒に行動した方が良いと思って俺はドアに目印を付けて皆と合流することにした。




