天を目指して 8
コック男を排除する事に成功してから俺は体の痛みを活性化の呼吸で治療しつつ、傷を癒やしているのだがレクターが倒した敵を力一杯蹴っ飛ばす。
どうやら攻撃を受けたという事が不名誉だったようで、不満をこれでもかとぶつけていた。
しかし、こいつは普通に強かったなと思い、久しぶりにダメージを受けてしまったと思いながら俺は現在位置を確認する。
ケビンも少しだけ興味を抱いたのかコック男の方へと近付いていき体を周りからグルグルと確認していき、アンヌも興味津々でコック男を調べ始める。
こいつは元は生きていた普通の人間だと言うことは間違いが無いが、別段吸血鬼化しているわけでも無い。
というよりはこれはゾンビという感じであるが、ゾンビよりは知能は多少高いようだがそれでも図体に比べて動きが俊敏だというのは中がスカスカだからだろう。
実際斬ってみて思ったのだが、切断する以上に「斬った」という間隔が滅茶苦茶薄かったのだ。
豆腐を切った感じがする。
そもそもこいつは何を造っているのか分からず俺はもう一度キッチンへと入っていき、彼が斬っていた物体を確認すると、そこには人と思われる肉片がまな板の上に置かれており、その隣に大きな鍋では紫色の何かが煮込まれていた。
普通に食欲を奪われる物体だと思って俺は部屋から出て行こうとしたとき、ふと目線がとある写真に向けられてしまう。
にこやかに微笑む綺麗なフリルの付いたオレンジ色のドレスを着ている綺麗なお嬢さん、その隣で先ほどのコック男と思われる恰幅の良い人物(流石に身長は一般的だった)が仲良く写っている。
俺はその写真を手に取ってじっと見ていると、その隣にぶっきら棒で立ち尽くしているスーツを着ているボウガンがいた。
そのお嬢さんが物凄くボウガンを気に入っているようで、コック男の方もボウガンはお気に入りだったと思われるような顔をしている。
「どうしました? また何か嫌なモノでも見つけましたか?」
「昔の写真を見つけた。ボウガンがこの城のモデルで過していたときの写真だ。ほら」
俺はケビンに写真を手渡すとケビンはその写真を見て少し複雑な表情をしており、その顔を見てアンヌが写真を貰って同じように複雑な表情をする。
レクターが隣から覗き込むと「綺麗な人だ」というシンプルな感想を述べてくれるのだが、父さんは父さんで「平和そうな人だな」とどういう意味なのか分からない事を言う。
しかし、幸せな時だったのは何となく分かった。
ボウガンはこの時どういう感情で毎日を過していたのだろうか?
俺はその写真を元の場所に戻してから再び歩き出そうとするのだが、ふと父さんはコック男のボロボロの服の中から一つの鍵を見つけ出した。
俺達は普通に関心しているとその鍵をその辺に放置してから更にゴソゴソと探し出す。
おや?
あの鍵を探し出したのでは無いのかと思っており、俺もブライトも師匠も皆も首を傾げて見守っていると中から小袋を取りだして中を確認する。
中には少しボロボロになっている人形の残骸が入っており、父さんは舌打ちをしてそれを放り投げた。
「この人は…で? 何これ?」
俺はそのボロボロの小袋を取り出して中にある人形の残骸を取り出す。
所々に血が付いているところを見るとこれは何か曰く付きの品である事は間違いが無い。
するとギルフォードは先ほどの写真をもう一度手にして写真と見比べる。
よく見ると写真の中に居るお嬢さんが片手で握りしめている人形とどこか似ているような気がする。
「どのみちこの男から離してやる品物じゃ無い気がするから元の場所に戻した方が良いな…この鍵だけ持って行こう。何か使えるかもしれない」
ギルフォードの指摘通り俺は小袋をコック男の服の中へと入れてから手を合わせて黙祷してから改めて歩き出す。
この鍵は同じフロアのとある部屋のモノで、そのドアを開けるとそこはコック男の個人部屋になっているのだが、その部屋に入るとこの城がどうやって滅んだのかが良く分かった。
どうやらこの城は戦争に巻き込まれて滅んだらしく、大国に挟まれる形で犠牲になった国であり、一階まで攻め込んできた兵士達と自国の兵士達が争っている過程であのボロボロの人形を見つけ出したようだ。
その後、彼女を殺されたかもしれないと言う怒りから戦い続け、結果死んですらなおああいう形になってしまったようだ。
それでも、ああなっても数日ぐらいは意識も強くなっていたようで、次第に薄れていく記憶に恐怖していた事が描かれていた。
彼女がどこにいたのかはここでは分からなかったが、この城がもし戦争後の姿をそのまま再現しているなら階段以外の方法で上に登る必要があるようで、その場所は食堂にあるとのことが分かった。
結局来た道を戻って俺達は食堂のドアを開けて中には言っていく。
木製長テーブルは崩壊しているのだが、本の中に書かれていた上の階へと向う方法は部屋に入ってから右端にかけられている王様を描いた絵画を右に回せば良いらしい。
レクターがせっせと回し始めると、何か動き出す音が響き渡るのだが、すると反対側で王妃を描いた絵画が『ゴゴゴ』という音を鳴らしながら横にずれていくと奥から上に登るはしごが現れた。
「凄いけどさ…こう…無駄な技術の使い道」
「言うなって…でも昔の城ってこんな感じじゃ無いか? お前だって最近日本製のRPGを買ってプレイしているとこういう城のダンジョンとかあるだろ?」
「ある! だから入ってこうして動いていると少しテンションが上がる。でも…技術の無駄遣いだと思う! こんな無駄なモノを作るぐらいなら脱出する方法でも考えれば良いのに!」
「まあ、分からない事はありませんけどね」
「まあまあ…そろそろ登りましょうか…」
「そうですね…男性陣が先に登りなさい!」
ケビンから睨まれたのでレクターを戦闘に男性陣が逆らわないようにと先に登っていくと、図書室へと出てきた。
同じ様に古くさい本達が並んでおり、どれも俺達が読めない本ばかりなのだが、問題はその図書室の廊下へと繋がる出入り口に二メートルを超えるボロボロのスーツ姿のショートカットの女性が本を見ていると言うことだ。
と言うか先ほどのコック男と同じよな感じで殺気を全身から滲ませており、俺達が物陰から身を出せば一斉に襲い掛ってきそうな気がする。
なんとかやり過ごしたいという気持ちもあるが、あの司書の女性は全く動く気配が存在しない上本をジッと見て居る。
「ねえ…あのまま死んでいてもう動かない可能性は?」
「無い。指が微かに動いているからそれは無いし、て言うか丸で動く気配が無いのはどうなんだろうな」
「RPGで言ったら中ボスみたいな奴?」
「だとしたらこの城中ボスが多そうだな。一つのダンジョンに中ボスは一つでお願いします」
「何を意味の分からない事を喋っているのですか? どうせ放置していても動かないですよ? さっさと行きましょう」
「ええ…そうですね」
アンヌの言葉に同意する形でまずはと俺はエアロードをじっと見るが、エアロードは「嫌だ! 頑固拒否する!」と嫌がるので俺はレクターを見る。
レクターは「仕方が無い」と言って駆けだしていき、そのまま出入り口へと逃げようとしているところで全員から「おい!」と突っ込まれそうになる。
女性司書がレクターを見つけて出入り口へと向おうとするのを見ると本を音を立てて閉じると出入り口が消えた。
そして消えた途端俺達の方に不満げな顔で見つめてくる。
そんな不満げな顔で見られても、俺達からすれば一人逃げようとした罰だと思う。




