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天を目指して 2

 人面がくっ付いている動物はこのフロアを徘徊しており、女子陣とダルサロッサは滅茶苦茶嫌がっており、通信機越しにもジュリが物凄く嫌がっているのは間違いが無いのだが、それとは別にアクアとレインちゃんは楽しそうにそれを見て居た。

 子供にはその恐怖がイマイチ通用しないようだが、俺達は素早くこのフロアを撤退しようとして歩き出し、俺達はこのフロアから次のフロアへと向うドアを発見した。

 しかし、そのドアの前に俺は知らない人間が二人ほど立ち尽くしているのだが、ギルフォードだけがその人物達に身に覚えがあるようだ。

 男女のペアで立っており、両方ともガタイが滅茶苦茶良い上ぱっと見は強そうに見えるのだが、両者は殺気立っており俺と言うよりはギルフォードの方に殺気を向けている。


「あの男を殺したことを恨んでいるのか? だがそれはあの男が選んだことじゃないのか?」

「「恨んでいない。我々は戦場で生きて戦場で死ぬ。最後まで戦場で血で血を洗い続けるんだ。彼らの魂はこの肉体に宿り、更に受け継いでいるのだ」」

「ならどうして俺の方に殺気を向ける? お前達が俺に殺気を向けていることは俺達皆分かって居るぞ」

「「我々を殺せれば話そう。出来るかな?」」


 俺は剣を召喚して跳躍して接近していくが、二人がお互いの拳をぶつけ合って音を鳴らすと上からティラノサウルスのような恐竜に人面がくっ付いている存在が落ちてくる。

 ケビンとアンヌが悲鳴を上げそうになるのを堪え、レクターが興奮を隠しきれないような態度に早変わり、ダルサロッサは俺達の誰よりも後ろに隠れてしまう。

 俺はブレーキをかけて一旦動きを止めて、食いかかろうとするティラノサウルスの攻撃をジャンプで回避するとティラノサウルスの尻尾が俺に襲い掛ってきた。

 地面に叩き付けられると同時にレクターがティラノサウルスへと向って襲い掛っていくが、ティラノサウルスはレクターの右拳の攻撃をジャンプで避けつつ顔を使って吹っ飛ばす。

 ギルフォードはレクターと入れ違いの形で攻撃を避けて双子の戦士達へと斬り掛かっていくと、双子の戦士達はギルフォードへと向って同時に殴りつけようとし、ギルフォードはその攻撃が当たるギリギリでなんとか回避して距離を一旦開ける。

 俺は大きくジャンプして空中にいるティラノサウルスへと向って剣を振り下ろすと縦に切り傷が出来るのだが、その傷が一瞬で消えていく。

 そんな俺の体を再び尻尾で叩き付け、レクターがその隙にとティラノサウルスの胴体に拳を叩き込んで砂に変えようと試みる。

 しかし、砂になっていく瞬間にその肉体が再生して結果意味は無い。


「貴方達その人面恐竜を相手に戦えますね。私は無理です。援護だけはするので頑張って下さいね」

「私もです。御免なさい! ちょっとその組み合わせはどうしても…」


 女子陣が役に立たなくなった瞬間であり、ダルサロッサについて二人の後ろに丸まって顔を前足で覆って隠している始末。

 よっぽど怖いらしくガタガタと震えているのだ。

 どうやら俺とレクターでティラノサウルスの相手をして、ギルフォードは双子の戦士達を相手にしなくてはいけないらしい。


「この再生能力をどうにかしてよ…。ソラなら簡単にできるでしょ! ほらほら! 異能殺しでも使ってよ!」

「お前は本当に他力本願を恥じない奴だな。少しぐらい自分で何かしようとは思わないのか? お前の砂にする能力を無限に叩き込めばなんとかなると思うぞ」

「ええ! 疲れるじゃん。ソラが戦えば済む話じゃん! めんどい! 嫌!」


 こいつと会話をすると物凄く疲れるので俺は「自分がするしかないな」と覚悟を決めて異能殺しの剣を呼び出すのだが、呼び出した瞬間周囲の空間が揺れたような気がした。

 気にしないことにして俺は壁から跳躍してティラノサウルスへと斬り掛かると、ティラノサウルスはその攻撃を身を仰け反って回避したのを確認し、俺はその状態で無撃の四ノ型へと切り替える。

 8の字に攻撃を繰り出してからティラノサウルスの胸に浅くはあるが傷が出来、血が流れていくのが見えた。

 そこに出来たマーク目掛けてレクターが力一杯叩き付けて砂に変えようとした。

 結果体を砂に変えていくのだが、完全に砂になって俺達がギルフォードの方に応援に行こうとした所で砂が勝手に動き出して渦巻いていく。


「ソラ…この砂勝手に動いているんだけど。何をしたの?」

「トドメを指したのはお前だろ? でも確かに何か変だな…」


 異能殺しの剣で斬り掛かって傷が出来た場所にトドメの一撃をレクターが叩き込んだのだ。

 その上で完全に砂に変わってしまった後で更に変異を見ることになるとは思いもしなった。

 風がフロア中から何かを集めようとしており、その風が集めている物が元生態が砂になってしまったモノであると気がついたときにはその砂が何か形になっていくように見えた。

 次第にその形は八本の首を持つ日本神話に出てくる竜の形へと変貌していく。

 八つの首を持つ竜『八岐大蛇』と呼ばれる存在が目の前に咆哮を上げ、俺達目掛けて襲い掛っていく。

 ジグザク動きで攻撃を回避して最後の一本の首を根元から切りかかり切り落とす事に成功した。

 しかし、その傷口目掛けて別の首が食いついて食い千切った。

 その姿に女子陣から悲鳴が上がりそうになる。

 よく見るともう人面が無くなっているのだが、どのみちホラーじみている光景ではあった。

 そして食い千切った傷口から新しい顔が姿を現す。


「さっきの戦いで学習したのか? もう!?」

「嘘でしょ!?」


 レクターに向って炎を吐き出して襲い掛っていくのをアンヌが氷の盾を作って阻止してケビンとアンヌが参戦する。

 どうやら人面では無いので参戦できるようになったらしい。

 ケビンが素早く動き回って敵を撹乱してくれて、アンヌがその間に凍り付かせようとする。

 どうやらこの作戦自体は成功しそうだと思ったその時俺は一気に跳躍していく。


 ギルフォードは左右から挟み込むように襲い掛ってくる双子の攻撃をなんとか捌ききり、どうやって反撃したものかどうかと悩んでいる素振りを見せると、俺はそのうちの男性の方に襲い掛っていく。

 俺が繰り出す縦切りの攻撃を男は体を仰け反って避けきると、そのまま間髪入れず右ストレーツを叩き込もうとする。

 俺はそれをギリギリで回避してから再び距離を開けた。


「ここで死ぬつもりか?」

「君は少しばかり勘が良すぎるようだ。我々は戦場で死ぬ事が定め。今から半年前のことだ…我々はジェイドという男に敗れた。そこで死ぬことが当たり前だった私達はジェイドに雇われることで生きることが出来るようになった。しかし、それは戦場で死ぬことが定めの私達に取っては不本意だった」

「ハンという男はそういう感じには見えなかったけどな」

「あれは特殊な男だ。生きて儲けられればそれで良いという男だ。私はあの時死ねなかったと言う事がとても…とても不本意なのだ! 分かるか? 負けて! 情けをかけられて未だに生きている!」


 彼らは戦場で負けたのに死ぬことが出来なかったと言う事がどうしても不本意だったと訴えてきた。

 正直に言えば人の中にそういう感情があるのは分かるが、まさかここまで強烈な人間がいるとは思いもしなかった。

 師匠ならこんな相手を前にしてどうするだろうかと思って想像してみると、大剣を背負ってちゃんと向き合って戦っている姿だった。


 俺は師匠の大剣を召喚してそれを背負う。

 俺の身の丈を超える剣を前に俺は敢えて重みを体全体で背負うのだが、それを見て居た敵の目には俺がどう映っているのか分からなかった。


「なら…俺が与えてやるよ。誇りに思えよ…英雄に殺される事を!!」


 男は笑った。


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