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雨の摩天楼 7

 翌日俺達は各々で今日一日この街を探索しようと言うことになり、俺はジュリ、海、奈美、レクター、アクア及びブライト、アカシ、エアロード、シャドウバイヤと共に移動する事になった。

 賑やかな一行なのだが、残念な事に父さんと師匠は一緒になって行動しており別に気になるところを探ってみると言い出す事に。

 それぞれのペアで動き出し、レインちゃんもどうしてもギルフォードと一緒に行動したいと言い出したので湊さんとダルサロッサと共にギルフォードと出かけてしまった。

 ジャック・アールグレイとアンヌもペアの竜と共に行動する事になったのだが、ヒーリングベルは父さん達について行ってしまう。

 で、残り物チームが此所に結成されてしまったという訳である。

 レクターはカッパを着て鼻歌を歌いながら戦闘を歩いており、その方にはワザワザ気を使っているアカシが能力で雨を遮っているのだが、俺達はその能力でレクターも護って貰えば良いと思ってしまう。

 アカシはあくまでも自分しか護る気が無いようで、尻尾を振りながら楽しそうにしていた。

 因みにエアロードは俺のカッパの中に隠れ、シャドウバイヤは影の中に潜みブライトも同じように俺のカッパの首元から顔を覗きだして楽しそうにしているのだが、これまた珍しいぐらいヴァルーチェがジュリの鞄から姿を現してジュリの腕元に巻き付いている。

 雨というこの状況がヴァルーチェに取って機嫌が良くなる事だったようだ。


「しかし、なにゆえ公園に行くのだ? 公園なんて何処にでもあるだろうに…」

「そういう不満な台詞は外に出てきてから言うモノじゃ無いか? エアロード。それも朝行ったろ? こんな雨の中公園があると言うことが不思議だからだよ」

「アクアは寒くない? 大丈夫?」


 アクアは元気よく「うん」と答えながら長靴で水たまりを蹴りながら楽しそうにしている。

 ジュリが手を離さないようにしっかり繋ぎ、ジュリだけが唯一傘を持っているのだが俺はアクアも傘で良かったような気がした。

 まあ、本人がカッパが良いと言い出したので気にしないことにした。


「この街は天候はともかく気温まである程度管理されているみたいだね」

「なんか嫌だね。気温まで好き勝手に出来るって…物凄く嫌」

「う~ん…多分だけど管理しないと体調を崩す人が出てくるからとかじゃ無いかな? 雨が続くと言うことは湿気が凄いと言うことだから。多分湿気をなんとかする事が出来るんだと思うの。それが結果的に気温の操作にも繋がっているんだと思うよ」

「パパ! ママ! 見えたよ! ほらほら!」


 アクアが指を指した方向に確かに小さくはあるが公園がちゃんと存在しており、俺達は誰も居ない公園の中へと入って行く。

 象と同じ形をしている滑り台、熊の形をしたアスレチックなど動物をイメージした公園なのだが、ぱっと見は普通の公園だが、俺のエコーロケーションは特殊な場所を見つけ出した。

 この公園の熊の形をしたアスレチックの下にはマンホールが設置されており、そこが出入り口になっている。


 俺がアスレチックの下に入り込んでマンホールを開けると一番下の方には薄らとであるがオレンジ色の明かりが灯っていた。

 俺が真っ先に降りていき一番下まで降りた所で上に「降りてくるように」と指示を出し、皆が降りてくる間に周りをチェックする。

 ぱっと見は下水道でもなくただのコンクリートで出来た狭い廊下、全員が降りてきた所で廊下を真っ直ぐ錆びた鉄で出来たドアへと歩いて行く。

 鉄のドアを俺が代表して開けると賑やかな声が響き渡る地下の街が広がっていた。


「凄い…活気があるというか…」

「ダウンタウンという感じだな。多分だけどIDを持たないけれどかと言って村などの辺境に移りたくないという人達が此所で過しているのかもしれないな」

「へぇ~物好き」

「止めろ。聞こえたらトラブルになるぞレクター」


 俺達はとりあえず邪魔になりそうなこの場所から移動しようという話になり、右回りで動きはじめた。

 上から落ちてくる水が水路を通ってどこかへと運ばれている姿を見ると元々は水を運ぶ為の水路に人が住み着くようになって結果一つの街になったのだろう。

 この雨の摩天楼の影の側面というわけだ。


「恐らくだけど情報局の人は此所に潜伏しているんだろうな…」

「ハッキリ言っても良い?」

「レクターが言うとトラブル臭がするけど何?」

「此所の方が人が生きているって感じがして俺は好き。何というか南区の旧市街地ってこんな感じの活気があるじゃん?」

「フフ。レクター君はあの活気が好きだもんね」

「流石ジュリ! 良く分かってる! 俺好きなんだよね…この裏町感のある活気! 新市街地特有の賑わいも好きだけど、こういう人と人が「頑張ろう」と言い合えるような環境? 俺好き!」

「まあ…お前らしいとは思うけどな。でも、だからと言ってお前裏路地ばかり行くなよ? 不良が集ってくるから」

「そこはちゃんと線引きしているから大丈夫。アクアもその辺の線引きをちゃんとね?」

「アクアを会話の中に入れるな。そもそもそんな所に行かせない」

「保護者が過保護! プクス!」

「自分の言葉にウケた? 何か面白い所ある? ギャグにならない所でウケるな」


 俺達は適当に彷徨いているとレクターが右側に広がるお店一つ一つをチェックをしており、その中にあるケバフみたいな食べ物を買い始めた。

 すると俺のカッパの中に入っているエアロードのお腹が鳴き出す。

 俺は溜息を吐き出してから同じように購入しようとすると複数の方面からお腹の鳴る音が鳴き響く。

 再び溜息が喉から漏れ出る。

 ジュリが苦笑いを浮かべる。


「どこかでカッパを脱いでゆっくりしようか?」

「そうだな…」


 俺がケバフと飲み物を購入している間にジュリと海がカッパを隠す場所を見つけてきてくれた。

 俺とレクターとアカシとブライトで食べ物と飲み物を持って広場の円状のテーブルと椅子を見つけて座り込む。

 ジュリにメッセージを送って二分後に合流した。

 改めて食べ始めるのだが、此所に次の場所に向う手掛かりがあるとは思えなかった。


「ここにあるとは思えないな…手掛かり」

「そうかな? まだしっかり見ていないだけだと思うよ。それにこういう所に居る人達こそ裏ルートに詳しそうな気がするけど」

「そうだそうだ! 俺はまだこの辺りをまだ見ていない」


 まあ、そうかもしれないなと思ってケバフを食べて行く。

 この場所は活気に溢れているし、何よりも多くの人が今を生きることに一生懸命な気がする。

 それだけにここは活気が凄い。


「ソラ…辛い。交換して」

「良いけど…口元が凄い事になって居るぞ。それに俺は行ったろ? ブライトの食べようとしているのは辛いって」

「だって美味しそうに見たんだもん。交換」

「はいはい。でも、アカシは普通に食べて居るぞ…ほら」

「? 僕は大丈夫だよ! この赤いソース凄く美味しい!」


 アカシは辛いという味覚に対して耐性があるようで、美味しそうに食べているのだが俺からすればあれが我慢しているのか、それとも普通に美味しいと思って食べているのか判断出来そうに無い。

 あまり飲み物を飲んでいない所を見ると普通に美味しいと思って食べているのかもしれない。

 レクターも辛い奴を食べているのだが、ジュリとアクアは辛くない奴を食べている。


「海は辛い奴?」

「いいえ。普通の奴です。エアロードとシャドウバイヤもですよね?」

「「辛い奴は美味しそうに思えない。辛いのは苦手だ」」

「同音で同時に放つなって…嫌いなのは分かったから」

「「嫌いなモノは嫌いなのだ! だからアカシ…おかわりで買ってきた同じ奴を食べさせようとするな!」」


 アカシは黙ってそれをエアロード達へと向って腕を伸ばす。


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