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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
シーサイド・ファイヤー≪上≫
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海都オーフェンス 3

 夢を見た気がしたが、はっきりとは覚えていないのが残念な所であるのだが……しかし、どこか悲しい夢だったような気がした。

 だからだろう。

 涙を流している感触が確かに残り、それで目を覚まして真っ先に俺の視界に奈美の悪戯(いたずら)をする寸前の嬉しそうな表情と、その隣で様々な化粧品を用意しているレクターの姿が有った。

 俺の大きく開いた目と奈美の悪戯をしようとしている瞬間の目がばっちり合い、同時にレクターは嫌そうな表情を浮かべながら脱出を試みようとするため左向け左の要領で九十度の角度で体を曲げている。


「ラインズ!」


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()、レクターの脱出口が完全にふさぎにかかる。

 レクターの足も完全に止まり、俺は素早く起き上がりながら奈美の体を拘束する。


「お兄ちゃんの危機管理能力ってどうなっているの?私が馬乗りになったとたんに目を覚ますなんて!」

「フン。お前と一緒にするな。馬乗りにされたら嫌でもわかる」


 ちなみに偶然とは口を避けても言わない。

 単純に悪夢にうなされ過ぎて偶然目を覚ましたとは口が裂けても言わないし、、それを言えば奈美が馬鹿にするだろうことは分かり切っている。

 口を閉ざし、俺に逆転されてしまった事への不満が表情にあふれており、俺はもう一体ラウンズを召喚しレクターの体を拘束しようと試みる。


「ラウンズ!レクターを確保しろ」

「ムムム!だが俺を確保するなんてまだまだ足りないぞ」


 どうやらこいつは俺を馬鹿にしているらしい。

 ここでいっちょ俺の実力を見せつける必要があるだろうという事で、俺はレクターを睨みつけた状態でラウンズを十体ほど呼び出し、体を事実上拘束することに成功した。

 密集している状態が非常に不快だったようで、大きな声で悲鳴を上げ続けているが、その声に反応したのがエリーだったりする。

 レクターは逃げ出そうとドアに向かって突進を繰り返し、俺は流石にこの状況でドアを開けられたらやばいとラウンズを解除する。


「ちょっと!何をしているのよ!」


 ドアを開けた瞬間ラウンズを解除し、奈美の拘束も解除する。

 さすがに奈美も今ドアを開けたらやばいぐらいは分かっているらしく、誤解されないくらいの距離感を俺と取り、俺と奈美はこれから起きるであろう惨劇(さんげき)を前に生唾を呑む。

 そして、レクターが逃げようとドアにタックルを決める瞬間とエリーがドアを開ける瞬間は全く一緒、ドアを完全に開けたエリーの真ん前にレクターの間抜けずらが見えたのだが、エリーは大きく目を開き悲鳴を上げて右ストレートをレクターの人中目掛けて突っ込んだ。


「キャア!!何よいきなり!」

「フガァ!? 」


 奇妙な悲鳴を上げて奈美目掛けて吹っ飛んでくるレクター、咄嗟に奈美が動けずにいる、俺はとっさに素早く動き俺は回し蹴りをレクターの顔面目掛けて食らわせる。


「何する!? このクソ野郎!」

「フギャ!? 」


 レクターの顔面がそのままそこの壁目掛けて突っ込んでいくのだが、壁が脆くなっていたのだろう。

 隣の壁が完全に壊してしまい隣の部屋にいるジュリが下着姿で完全に唖然としており、俺は急いで顔を背ける事で回避し、エリーが部屋に入り込み大きな声を上げながら蹴り飛ばそうとする。


「何してんのよこの助平(すけべい)!!」

「何もしてないのに!? ドゲボォ!? 」


 エリーに吹っ飛ばされたレクターはそのままの勢いで窓の外まで吹っ飛んでいった。



 俺とジュリの部屋のど真ん中の壁が壊された犯人のレクターは庭の草木に頭から突っ込む形で見つかり、そのまま簡単な治療を受けた。

 部屋の壁はその日のうちに修理してくれるらしく、俺達はそのまま朝食を取った後、それぞれの行動に移る事になった。

 母さんと父さんの本日の行動はデートであるらしく、奈美達とは本日の予定がまるで違うプランらしい。

 俺達は速めに家を出て、そのまま大学のある北の方まで素早く移動する事にした。

 歩いて船着き場まで移動する手前、父さんからもらった軍のレポートに目を通した。


『この腕輪の正式名所は『バル』である。獣人(じゅうじん)の国が滅んだ切っ掛けの呪術であり、この金属に似た物質にはクスリと全く同じ材料と焼くことで硬化する物質を混ぜ込んで作っている。バルを付けた対象者は肉体を強化され、その代償として精神が蝕まれてしまう』


「じゃあこの腕輪を付けたら精神がおかしくなるって事?」

「だな。この腕はテラが使った錠剤と全く同じ動きをするんだろうな。それを単純に金属という形に貶めただけ。最も、それだけなら困らないんだけど。このバルって言う名前の道具、問題は開発元が今まで分からないという事だ」


『バルは開発元が分からない事で有名な呪術、共和国内にもこれと言って目立った開発工場が無く、困難を極めていたが今回発見したコンテナの行方を調べればバルの開発元へと辿り着けるだろう』


「要するに今から私達は大学でこのバルの行方の1つを探ろうというわけだね」

「ああ、父さん達軍は海洋同盟がこのバルの開発に関わっているんじゃないかって疑っているようだな。分からないわけじゃないけどな」

「アベルさん達が疑っているていう海洋同盟って特に呪術とか魔導とか関りを見せないと聞いたことあるけど?」

「まあな。お前が海洋同盟の事を把握していたとはな………結構驚きだけど?レクターって基本的に人の話をあまり聞かないだろ?」

「ム!失礼だな。こういう時ぐらい話は聞くんですよ」


 いや、話を聞かないから馬鹿だと判断しているんですが?

 最も知らないだろうけどな。


 俺の後ろで大人しくしているエアロードやジュリの鞄の隙間から顔を覗かせているシャドウバイヤの両名。

 シャドウバイヤは黒い顔を俺の方に睨みつけている。


「人間が作るモノは少々理解に苦しむ。何故精神を蝕んでまでそんなものを作ろうと思うのか………」


 シャドウバイヤがそんな呟きを俺にむけて呟くのだが、そんなことを言われても困る話である。

 エアロードだけは興味なさそうな表情で口をパクパクさせており、どうやら少しお腹がすいているようだ。


 船着き場に辿り着き、目的行の船を探し出すがどうやら直接はいけない様で、南商店街へ行き、そこから少しだけ移動して別の船着き場へ移動することにした。

 船に揺られながら少し古ぼけたような街並みを呆けながら眺める。


「綺麗とは言えないけれど……水路と陸路をこうして船から見ると少しだけ綺麗に見えるよな」

「そうだね。でも知ってた?この街って海の上に作られた都市なんだって」

「え?そうなの?ここが海の上?」

「そうそう。この海都オーフェンスはすぐそこに山脈があって人が住みやすい平地が少なかった。だから海の上に少しずつ住処を広げていった結果がこの街なの」


 なるほど、それで水路が変に複雑にできているわけだ。


「なら、陸路が狭いのも古さゆえってわけか。しっかし、この街がそんな理由で出来ていたとはな……土地に歴史ありってか?」

「まあね。帝都だって歴史があるわけだし、その街その街に歴史があるんだよ。向こうにワールド・ライン(西暦)にも歴史があるでしょ?」


 そう言われたらその通りな気がするし、歴史の深さや浅さはその街の歴史の長さによるとは思う。

 この街は長い歴史の中に成長を続けてきた街という事だ。

 それこそ、ガイノス帝国首都だって長い長い歴史を持つ街だからこその歴史の長さである。

 俺達の目の前に南商店街が見えてきたので俺達は船を降りるための準備にしている最中、商店街の中に赤い髪の人が居たような気がした。


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