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機械は人の為に、人は機械の為に 1

 後ろでレクターが時折五月蠅いという問題以外では特に何事も起きず、現れる魔物も今のところゴーレムを除けば二種類のみ。

 そういう意味では今のところ楽ではあるが、先ほどの言葉通りなら今辿り着こうとしている新しい支柱の下には街があるという計算になるが、それがまともな街だとはぱっと見思えなかった。

 支柱から見下ろす下の風景は工場が密集している場所ばかりで、街らしい景色なんて見えてこない。

 俺は覗き込む姿を遠目で見て居たケビンは溜息を吐き出しながら「良く見下ろせますね」と呟きながら支柱へと向って歩いて行く。

 ダルサロッサも俺の真似をするように下を覗き込むのだが、そんな時にダルサロッサも俺と同じ意見を呟いた。


「人が住んでいるようには思えないがな…街じゃ無くあれは工場地区だぞ…それも街クラスの」

「そのようだな。人の気配は下に降りてからだろう。そもそも降りるにもあのゴーレムをまた相手にしなくちゃいけないようだしな」


 支柱の一番上、天幕の直ぐしたに位置する広場には竜結晶を護るようにゴーレムが徘徊して居るが、ここには先ほどと違ってゴーレムが二体も歩いていた。

 広場を時計回りで歩いて徘徊しており、正直鬱陶し事この上ない。

 広場から下の支柱周りの階段へと向うには広場を通るしか無く、そうなればゴーレムに遭遇することになる。

 こう…ステルスゲームみたいな事が出来ないだろうか?


「なんかこう…ステルスゲームみたいな事が出来ないのか?」


 レクターが同じ事を言ってきてテンションが下がった俺、黙り込んでジッとゴーレムの方を見ているとそのうちケビンが冷ややかな目で「出来るわけ無いでしょ。馬鹿」と罵る。

 気持ちが分からないでも無いから困る話で、俺は敢えて罵倒もツッコミもしなと決めてジッとゴーレムを睨み付けていた。

 正直戦って潰すことは簡単だと思ったのだが、厄介なのはその騒ぎを誰かが聞きつけるのではという事である。

 そう考えながらエコーロケーションで周囲の構造を探って見る中、俺はふとした中で町の方にまでエコーロケーションを辿り着かせることが出来た。

 だから気がつけたのだが、この街には人が…。


「やろう! 多分多少騒ぎを起こしても大丈夫だ。あのゴーレムが下まで落ちたら流石に誰かがやってくるかもしれないけどな」

「だそうだ。レクターだったか? 気をつけろよ。この中で吹っ飛ばしそうな奴はお前だけだからな」

「ですね。レクターだけが吹っ飛ばして問題を起こしそうな気がします」

「気をつけなさいよ。馬鹿」

「この中で俺に優しさを向けてくれる人が一人もいない! 誰でも良いから優しくして! 全くダメージが無い訳じゃ無いからね!」


 俺はレクターの言葉を無視して「行くぞ」と駆けだしていき、レクターはそんな無視した俺に対して冷ややかな目で見つめるのだが、レクター以外の全員が駆けだしていったので、その冷ややかな目は全員に向けられることに。

 しかし諦めたように俺達に続くように走り出していき、ゴーレムの一体がレクターを後ろから襲いかかってくるのだが、攻撃を回避してゴーレムの頭目掛けて右拳を叩き込む。


 俺は何度も言ったはずで、父さん達からも、皆からも言った大切な事…戦うときに周りの立ち位置を気をつけて、殴り飛ばすときは力加減をしてと言ったのだ。

 何度もだ。

 その上でお前はどうして……お前はどうしてゴーレムを吹っ飛ばす!?


「お前は人の話を聞いていなかったのか!? 吹っ飛ばすなって言ったよな!!?? それで何故お前はあれを検問の方に向って吹っ飛ばした? 重さを超える一撃を加えただけじゃ飽き足らず! そんな風に可哀想な顔をして誤魔化しても無駄だぞ!! どうやら殴られないと気が済まないようだな!!」

「だって!! 力加減がイマイチ分かんないんだもん!! 説明してよ! 詳細に!!」

「お前の無限のパワーの力加減なんてお前にしか分からん! て言うか砂にするような一撃を加えれば終わった話だろ!? 何だその「思いもしませんでした」みたいな顔は!! 考えれば思いつくだろ!! なんでトラブルを起こす!?」

「だって……だってぇ!!」


 皆から来る批判的な目を前に言い訳を止めたレクターはその場で正座し始める。

 俺はスマフォを取り出してジュリに連絡を飛ばすことにした。

 その間皆にはゴーレムを排除して貰うことにした。


「ジュリか!? ゴーレムの一体をレクターが検問の方角へと吹っ飛ばしてしまった。壊れているかもしれないが、念の為だ。見てきてくれないか!?」

『分かった。そっちも気をつけてね!』

「ああ。後で会おう!!」



 ジュリの電話越しにきっちり話を聞いており、現場にいた多くの人が電話越しに居るであろうレクターに対して冷ややかな目を送る。

 アベルは「どうしてこういう状況で問題事を起こすか…」と呟きながら家の外へと出て行き、ジャック・アールグレイも付いていくように外に出てみると、検問の方からビームの紫色の光と爆炎と煙が上がっていくのが見えた。


「無差別に攻撃をして居るのだとすれば、レクターの一撃か衝突したときの衝撃で防衛システムとしての認識が壊れたな。今のゴーレムは無差別に攻撃をし続けているような状態か…」

「やれやれ…やってくるなりいきなり問題事を起こす奴だ。どうする? 全員で言っても良いが、あの奈美という女は役に立たないだろう?」


 奈美は頬を膨らませて不満そうにしているが、反論自体は出来ないので敢えて黙っている。

 しかし、湊の方は「自分は戦力に入れられているんですね」と物凄く不満げにしていた。


「そうですね。人外が相手なら私が行きます。ジャック・アールグレイと湊さんとジュリさんはここに居てください。私とアベルさんで迎撃してきます! 良いですよね?」

「ああ。ジュリ。念の為にだ。村の人達に「家の中に居るように」と言っておいてくれ。後、私からの指示があったり、爆炎がこっちに近付いてきたらボートに乗せて何人かずつで良いから逃がせ」

「分かりました! 気をつけて」


 アンヌとアベルが走って現場へと近付いていくと、アンヌの中から白虎が姿を現して駆けだしていく。

 次第に近付いていく検問は正直に言えば地獄絵図となっており、特にロシア兵と思われる人物が戦っていたのだが、アベルはその様子を見たとき少し不思議に思った。

 確かに検問にはロシア兵も混じっていたが、殆どはアクトファイブだったはずだと、それが纏めて居なくなっている。

 しかし、考える時間は無いと判断して駆けだしていくアベルとアンヌは近くのロシア兵へと接近していく。


「アクトファイブはどうした!? ここに居ただろ!?」


 アベルがロシア語を喋っていることに驚くアンヌ、するとロシア兵はアベルに「アクトファイブが逃げた」という真実を聞いた。

 アベルは検問から村へと降りようとしていたゴーレムと戦っており、ロシア兵はやはり納得なんて出来ていなかったのだ。


「アベルさん! 指揮を執って上げてください! 私が前で支えます! 白虎!!」

『任せておけ』


 白虎が遠吠えを発すると、その声と共に前方に向って冷気が走って行き同時に地面が凍っていく。

 冷たい霜がゴーレムの体を包み込み、ゴーレムはそれを阻止するためかアンヌと白虎目掛けてレーザーをぶつけ始めた。

 アンヌはその攻撃を白虎のシールドでなんとか防ぎ、周囲に散る火花と共にアベルが前に飛び出して行く。


「ロシア兵は左右から奴の動きを封じるために銃弾をありったけぶつけろ! 後は私がやる」


 真剣な面持ちで接近していき、ゴーレムは左右から浴びせられる銃弾に苦しむ素振りを見せると、アベルはゴーレムの体を真っ二つにしてしまう。


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