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太陽な微笑みと共に 5

 エルメスが二十階に到着した後、その十分後に同じようにボウガンが上から降りてきて跡を追うように降りていった。

 そして十九階に辿り着いた両者の目の前に広がる光景は、先ほどまでの量とは比べものにならないほどの大量の淡い青色の光が飛び交っている光景。

 それも全ては下の方からやって来ており、エルメスはゆっくりと確実に近付いていく中で次第に高まっていく不安な感情。

 もしと考えては思考を振り払い、同時にもしそうなら自分が解決しないと行けないという気持ちで一杯だった。

 同じ時ボウガンは下に降りるにつれて高まる異常なほどの力による圧力、身を圧迫するほどの圧力であり、こういう時にボウガンは自分が異能で出来た特殊な体である事に嫌気がさす。


 そして十五階まで辿り着いたエルメスの目の前に巨大な精密機器の集まりが現れ、その前で佇む電車の中でも襲ってきた男。

 顔はまるで別人と言っても良いほどだが、エルメスはそれが変装だという事になんとなく理解出来始めた。

 男は別に驚く素振りを見せないまま立っているが、今この間も後ろにある機械は動き続けており、エルメスは数歩更に近付いていく。


「列車で出会った時私は気がつかなかったよ。君は死んだと思っていたから…君が憎いんで居るのは私か? それともあの国か?」

「両方だよエルメス。私は君も憎い。あの国から優遇される君が…! そんな君を許し、何よりも私が何を言っても聞かなかったあの国が!!」


 激しい憎悪が口の奥から湧き出てくる男は耐えられなくなったように変装を剥ぎ取って生身の顔をさらけ出す。

 額には焼けただれた痕が残ってこそ居るが、凜々しく若々しい男の姿はエルメスが見た昔の友人の姿にそっくりだった。

 額にある火傷の痕だけは後々に残ったモノであるはずだが、それ以外は若返った友人の姿。


「ベット……」

「エルメス。どうなんだい!? 私より英雄になった気持ちは!!?? 私が死んだと聞いて英雄になった気持ちという奴は!?」

「………最悪だったよ。後味の悪い気持ち差…でもだ」

「言い訳は聞きたくない!! 全部言い訳だ……私が何を言っても変わらなかったくせに……何が悪かったというのだ!?」

「それはタイミングだよ」


 ボウガンが怒りを滲ませる表情を浮かべてエルメスの後ろから現れた。

 ベットと呼ばれた男は八重歯を見せながら長く伸びた舌で口周りを舐め回すが、それは単純にボウガンには気持ち悪さしか感じさせなかった。

 しかし、その仕草もベットの昔ながらの癖でもある。


「急ぎすぎたと言うだけだ! そんな理由で我々の計画に割って入って貰っても困るんだよ…」

「知ったことじゃない…正直諦めかけた。体が燃え上がって…これで死ぬのだと思った。だが、鐘が響き渡り気がつけば私は川で溺れそうになっていた。この地で私は治療を受けた。憎しみでおかしくなりそうだった…」

「フン。呪詛の鐘か…まだ共和国に在ったときに小国をコントロールするために使ったな…」

「分かるか!? 燃えがり…呼吸もままならない人間の気持ちが!? あの炎は私に憎しみを体に刻みつけた! 絶対殺すと決めて私は生きたんだ! その過程で知ったよ。吸血鬼の話しもね。幸い私は元々異能を持っている人間故感じやすく、その地に眠る存在に気がついた」

「それで彼らに協力すると言い出して利用したというわけかい?」

「ああ。最初はさっさと取り出して体に取り入れようと思ったのだが、奇妙は物体が邪魔をして居てそれが出来なかった。しかし、この地で眠る力はある意味魅力的だったよ」


 四神最後の一匹は『無限のエネルギー』であり、何をするにもベットに取っては都合の良い存在でもあった。

 異能に関する知識を持っているベットはこっちの世界で何が起きても大丈夫なように様々な備えをしておいたのだ。


「クライシス事件は私に様々な恩恵を与えてくれたよ。街が吹っ飛んでくれたお陰で今の首相に取り入る隙が生まれたわけだし、こうして世界樹の根を構築する建物を造ることが出来たのだから」

「無限のエネルギーを使って街を吹っ飛ばすつもりなのか? これはいわゆる爆弾のようなモノだろう?」

「フフフ……甘いな。あくまでも表面的な部分しか読み取らなかったな…?」


 ボウガンもエルメスもベットが何を言っているのか分からないまま彼は真上を見上げる。

 何も無いはずの天井を見つめてにやりと微笑む彼に上から声が掛かってきた。


「衛星だろ!? お前はこの建物を砲台にして衛星を仲介させる形で体力虐殺兵器を完成させたんだ…」


 それはソラの声であり、ベットはそんな彼の声に応えるように拍手を送る。

 実際ソラの言うとおり現在ドイツが打ち上げた人工衛星がドイツ上空まで来ており、それは彼が造らせたこの術式の最大の切り札である。


「衛星を仲介する形で完成する術式だ。この建物はあくまでも衛星をのコントロールと力をあんた集めるために必要なモノだろ? ゾンビを造ってばら撒いたのも、根を広範囲に広げる事が目的で、その為にアンタは吸血鬼になったんだろ? 勿論火傷で負った傷を癒やしたいという願いがあったんだろうけれど。四神を体に入れるためにはある程度健全な肉体が必要だから」


 そんな事を言いながら十五階まで追いついたソラ達、改めて対峙する面々の後ろにあるコンピューターを改めてソラは睨み付ける。


「そのコンピューター。四神から漏れ出たエネルギーを使った人の脳波を利用して稼働するコンピューターで、これを使って衛生をコントロールしたり四神を体に入れたりしていたんだろ? あの時襲撃したのはボウガン達の狙いが俺達の方にあり警戒を促す一方で俺達の戦闘時に立ち位置を確かめたい」

「それもあったね。君達の動きを知っておきたかったし…現に君達はこうして私の前に現れた」

「街中にゾンビをまき散らしたのも、敢えてその情報が漏れても気にしなかったのも最後には暴れさせて時間を稼ぎたいからだろ?」

「君は凄いね。なるほどエルメスが信頼するわけだ…でもね、そこに居るのは私が苦しんでいるときに何もしなかった卑怯者なんだよ。信頼するにも値しない人間さ」

「それを決めるのはお前じゃ無い…俺が信頼すると決めたらそれが絶対だ! 誰に何を言われても…俺はアンタを倒してエルメスさんの苦しみを解放する! この人はもう十分苦しんだ」


 エルメスは十分苦しんだと、だからもう許されても良いはずだと考えていた。

 友人を救ってやることが出来ず、彼のように掌を返したかつての祖国に絶望すらして、救っても救っても正しく評価されない毎日、それは苦しく惨めなだけの毎日だった。

 でも、それでも……エルメスは諦めながら歩いてきた。


「分からないな…そこに居る化け物に対しても君は下手をすれば信頼を寄せている。何故なんだ?」

「アンタのように勝手に絶望して、勝手に八つ当たりをして、周囲の人間を不幸にするだけの奴が偉そうな批判をするな!」

「私を殺そうと思い! 私は実際殺されかけた! その怒りをぶつけているだけだ!」

「殺されかけたからから殺し返しているといつか人間は滅びる…俺は嫌だな。憎しみをぶつけることは簡単だ…でも憎しみを抑え込んで前を向くことは難しい。俺は前を向いていきたい」

「理解出来ないな…楽な道を選んで何が悪い!?」

「悪いよ…楽な道は邪道だからだ…手段を選ばなければいけないんだ。手段を選ばずに楽な道ばかりを選ぶといずれ孤独になる。人は一人じゃ生きられない。助け合い利用し合う。それが人間だ」

「だが私は化け物さ…」

「そうだよ…だから俺達人間に殺されるんだ!」


 ソラはボウガンを人間の枠組みに入れていた。


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