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太陽な微笑みと共に 2

 エルメスがビルの中に入ると四階まで広がっている広い空間と共に淡い青色の光がまるで蛍のように漂っており、その広い空間ではまるでお化けのような存在が徘徊して居た。

 死霊と呼ぶべき存在なのかは分からないが、漂うように動き回っており、エルメスは改めて両手で握りしめるように剣を召喚する。

 世界樹の根であるという断定が出来なかったエルメスも中に入って改めて理解し、構造をジッと見つめながら観察した。

 世界樹の根と呼ばれる術そのものはエルメスは本でしか見たことが無く、実際に見たことは無いが、それで改めて確信を持てた。

 今回の事件の中心には自分の祖国関係者が関わっており、そんな事をする人間に全く心当たりが無いとう真実。

 正確にはあるにはあるが、それを認めたくないという現実がエルメスを襲っていた。


 時を同じくしボウガンも建物の中へと入っており、屋上から下に降りるとそこにはただ広い六角形の空間に一本の太い支柱、周りをスロープで下へと向って降りているのだが、その建物の中には淡い青色の光が漂っていた。


「魔導の光か……特殊な術が展開している中心でしか見られない希少な存在だが、まさかこの目で見る日があるとはな…こんなスロープで降りると思わないことだ」


 ボウガンは飛び降りようとしたとき、下から何か勢いのあるデカ物が衝突し後ろにジャンプで距離を開けると、支柱を護るように陣取る大きな機械で出来た化け物が存在していた。

 どうやら屋上から侵入することも想定済みだったらしく、飛び降りたら襲ってくるぞと脅迫しているが、こんな脅迫に乗るボウガンでは無かったが、飛び降りようとしたその時この機械の立ち位置を理解した。

 機械はボウガンが飛び降りたら支柱を破壊するつもりでおり、そんな事をすればどうなるのかなんてボウガンでも分かる。

 そこで問題なのが、そこまでして支柱を破壊した理由は建物の内壁に描かれていた文字に見える何かを見て分かってしまった。


「支柱の崩壊と建物の壁に仕掛けている術式が連動するようにしているのか…もし支柱を破壊すればという脅迫。術の内容までは理解出来ないが最悪の自体を想定しておいた方が良いだろう。そうだ…この写真を見せてカールに術の内容を解かせるが…」


 写真を撮ってカールにメールを送りつつ、ため息を吐き出してスロープで下へと降りていく。


「明らかな時間稼ぎ。青龍を利用しているのは間違いないが…」


 敵は青龍を使って行動しており、これだけ強力な力を持っているのも全ては四神の中で唯一『無限』という属性をもつ青龍の膨大で無限なエネルギーを使って居るからだ。

 この建物は予め利用しようとして用意していた建物であり、あの男はここまでの状況を見越していたのだ。

 早めに降りたいが、スロープをある程度降りる度に死霊を模した敵が襲いかかってくるのがボウガンは鬱陶しかったりする。


「まさかとは思うが…青龍を手に入れようとしているのか? どうして俺達が四神を回収していることを…何よりもそれは全部把握した上でこの計画に乗っかったのか? この建物始めっから情報機関の為じゃ無く今回のために作った物だ。と言う事は情報機関がこの建物を造るという話から既に…考えすぎか?」


 死霊もどきを蹴散らしながら思考を止めないボウガン、今回の戦いの始まりをどの地点で弄っていたのかがどうしても気になってしまっていたのだ。

 敵の正体によっては計画のプランをある程度変更するしか無いと考えていた。


「そもそも四神に対する知識が無ければこんな建物や俺達に近付こうとは思わなかったはずだ。もしかして京都大阪方面での事件もずっと見ていたと言うことか?」


 エルメスは上から降りているボウガンの行動など気がつくわけが無く、死霊達を切り倒しながら一階を散策していた。

 エレベーターを見つけ出したのは良いが、見つけたエレベーターは残念な事に十階までしか伸びていない。

 しかもこのエレベーターはキーでロックされており、解除するには一階にある制御室へと向う必要がある。


「仕方ないね…でも、もし…もしそうなら……彼が生きていたのなら…どうして?」


 エルメスはずっと脳裏に宿っていた結論に迷いと苦悩を覚えており、何度考えても「どうして」と思ってしまうのだ。


「いや分かっているんだ。自分を裏切った祖国が…掌を返したら誰だって恨むだろうね…私のせいなんだね……」


 何度も何度も自分を殴りつけたいという気持ちがわき上がり、そう思うと足を止めてしまうエルメス。

 勿論考えすぎという事もあり得る状況で足を止めるべきでは無いと思い改めて制御室へと向って歩いて行く。

 広い建物は横にも建物広く、地図に記載されている制御室まで辿りつくのも一苦労であり、なんとか辿り着いたエルメスは無人の制御室へと入る。


「さてさて…どれをどう動かせば良いんだろうね…どうにも機械は疎くて…」

『エルメスさん。ジュリです』

「ジュリ君? 悪いけれど実は今建物の制御室にいるんだがね。どうにも操作方法が分からないんだ。こっちでなんとか出来ないかな?」

「スマフォを繋げてください。ケーブルがあれば繋げられるはずです」


 エルメスはポケットを探ってみたが残念な事に繋げられるケーブルなんて都合良く持っている訳がなくエルメスは室内を探り始める。

 すると部屋の端っこにある棚の中にケーブルをごちゃ混ぜに入れてある箱を見つけ出し、慣れない作業を繰り返してなんとかスマフォと端末を繋げることに成功した。

 すると、遠隔操作でジュリは端末を操作し始めあっという間に全ての鍵を開けることに成功していた。


 ボウガンは二階ほど降りた所で鍵の掛かっているドアのまで五分ほど腕を組んで悩んでいた。

 この奇妙な空間から下に降りるにはこのドアを突破するしか無いのだが、どういうわけかドアがまるで開かないでいた。

 ボウガンは心の中で「いっそ力一杯破壊するか?」と思ったが、支柱を人質にされているのと同じ状況で下手なことが出来ない。

 舌打ちをして再びドアの前でウロウロしていると、突然ドアのロックが外れて自動で開く。


「誰かが建物の制御を解放したのか。だったらこの状況を利用するまでだ」


 ドアの奥へと入って行くと更に廊下が下に向って降りており、ボウガンは下に降りていくのだが次第にこの建物の中心から迫り来るプレッシャーと呼んでも良い圧力を感じていた。

 違和感というか、ボウガンを越えようとする敵の意志とその強すぎるエネルギーを今この瞬間も吸い上げている。

 吸い上げられるエネルギーと同時に膨れが合っていく強い後ろめたいほどの『マイナス』の極値の感情、ボウガンで無くても分かるだろう事は間違いが無い。


「青龍のエネルギーがあるからなんだろうし、何よりもこの密閉した空間内だから何だろうが…物凄い怒りや憎しみだな。それが全部この建物を中心にベルリン中へと向って根を張り巡らせている。根? そうか…! だからこうして根を張っていたのか」


 ボウガンはどして男がこれだけの術を必要としていたのか、そもそもどうやって吸い上げているのかが分からなかったが、根という言葉でなんとなく分かってしまった。


「根。木は地中から養分を根で吸い上げるという。地中に封印されている四神は『異能殺しの剣』で固定されているし、他の場所から出てくることが無いように青龍だけは囲んでいる状況だ。逃げ場が無い青龍を無理矢理吸い上げるには根を張る必要があるんだな」


 ボウガンは舌打ちをしながら下へと降りていくとボウガンの元にメールが届いた。

 そこに書かれていた内容にゾッとしたボウガンだった。


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