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ベルリンの戦い 7

 今頃レクターとエアロードが侵入している頃なのだろうと思い俺は腕時計を確認、時間をもう一度確認すると店員さんが何かを言ってくるので俺はジュリに「なんて?」と訪ねた。

 するとジュリ曰く小さい竜が珍しいらしく美味しいお菓子があると言ってきたらしい、ブライトは「わーい!」と喜んでいるが、どうやらブライトはドイツ語が分かるようだ。

 ブライトは「欲しい!」と何度も連呼しており、俺とジュリは「お願いします」と頼み、女性店員さんは喜びながらお店の中へと戻っていき、店員は新作だというハーブクッキーとマフィンのセットで運んできた。

 ブライトは手をそっと伸ばしてちょっとずつ食べて行く姿を女性店員さんは興奮しながらカメラに写真という形で収める。

 俺はそんなブライトを微笑ましい目で見ながら先ほどの会社の情報を探っていく、店員さんが二三人ほどが屯ってくると、置くから店長らしい人が現れて全員仕事へと戻っていく。

 珍しい物を見る目というよりは可愛いから見ていると言った感じなのだが、おかしなモノで竜という種族にあまり珍しさが無いように見えた。

 

「ドイツのは竜が住んでいるのかね?」

「みたいだね。さっきからお盆で商品を運んでいる姿を見るよ。ほら」


 ブライトが指さす方向をジッと見ると黄色い体をしている小さな竜、羽ばたきながら両手でお盆を持ちドリンクを席へと運んでいた。

 俺は二度見ほどしてから認識を深め、竜が真面目に働いている姿を見てひたすらだらけているエアロードと比べてしまう。

 働くという考えが出来るのならエアロードも多少なり働いて欲しいと思うが、やはりそこは竜事の性格なのだろう。


「あれってなんていう竜なんだ?」

「雷竜サンダーグロスだよ。真面目な竜だよ」

「働いているなら邪魔しない方が良いかな。多分私たちの存在にも気がついているだろうし…あれ? こっちに来るよ」


 お盆にアイスカフェラテを持って現れているが、俺達は注文した覚えは無かったのだが、真っ直ぐ迷うこと無くこっちにやってくる。

 すると雷竜サンダーグロスは俺達のテーブルにドリンクをそっと置いてくる。


「店長から先ほどのお詫びだそうです」

「はあ…ありがとうございます」


 俺はつい敬語になってしまうぐらい衝撃を受けたが、その瞬間女性店員三人がやって来てブライトとサンダーグロスを入れた写真を撮り始める。

 俺からすれば呆気にとられるほどの早さで、向こうでは店長が額に手を押さえて悩ましい顔をしていた。

 どうやらサンダーグロスはこの喫茶店では人気者の用だと思っていると、俺はジュリに聞いてみた。


「ジュリは知っていたのか?」

「うん。外に置いてあった看板に大きく看板竜って書いてあったし、大きな写真で載っていたから…ソラ君は見なかったの?」

「見なかった。知らなかった」


 すると周囲にいたお客さんの中にも写真を撮るために近付いていく人も多く、アッという間にブライトは人気者へと上り詰めた。

 そう言えばブライトは雷竜と会うのは初めてのはずだ。


「えっとサンダーグロスだっけ? ブライトに会うのは…」

「初めてだ。次の聖竜が居ることは聞いていたが、先代と違って随分しっかりしたかわいげのあるものが現れたモノだ」

「ありがとう!」


 ブライトは満面の笑みを浮かべながらクッキーをまた一つつまんで食べて行くが、カリカリと音を立てながらチビチビと食べて行く姿は確かに可愛さがある。

 店長が現れて「申し訳ありません」と頭を下げてくる。


「サンダーグロスがやって来てから内のお店はこれだけ大きくすることが出来ました。真面目に働いてくれるし、可愛い竜と一緒に働きたいと言って店員も増えました。店員からのアイデアでネット喫茶のような形で開くことも…ですが…」

「大変そうですね。でも、繁盛しているんじゃ…」

「ええ。それはもう。正直大助かりですよ。クライシス事件の時はどうなるかと思いましたが…サンダーグロスがやって来てからは大助かりです」


 竜の中にも新しい生き方を模索する者が多いというのは前に聞いたことがあり、雷竜サンダーグロスはその一例なのかもしれない。

 皇光歴の世界において竜は一種の神のような立ち位置であり、人によっては近付こうともしない。

 それは竜によっては物凄くストレスなのだと聞いたことがある。


「ですが、向こう側の人達には驚きの光景らしく。良く驚かれているんですよ」

「まあ、仕方ないですね。でも、サンダーグロスがそれを望んでいるならここで働かせて上げて欲しいんです」

「勿論ですよ。何度も何度も申し訳ありません。ごゆっくり」


 そう言って店長は笑顔で去って行き、サンダーグロスも頭を下げて去って行く。

 ブライトは今度はマフィンに興味を移しドンドン口の中へと入れていった。


「ジュリはハーブクッキーを作ってみたいの?」

「え? まあ…そのハーブをね。一から育ててみたいんだ。繁殖から新種開発まで色々やってみたくて」

「ジュリの好きそうなことではあるな。そう言えば今でも学園の菜園の一角を使わせて貰っているんじゃ?」

「建物の中にある庭園をね。うちの学校の中には植物を育てるための植物園があって、底には個室事に育てられるようになっているの。その一つを使わせて貰っているんだ。私が居ないときは先生が育ててくれるから気が楽で」

「ほう…あの学校はそんな事も出来るのか? 私が在学中とは随分違うな」

「ガーランドさんが在学してから十五年後ぐらいに大規模な改築改修が行われましたからね。敷地面積も倍ぐらい大きくなったんですよ」

「それは知っていたが…」

「あれ? でも師匠何度か臨時講師といて軍から派遣されていたでしょ?」

「ああ。ソラが毎度私に会う度に悲鳴を上げて去って行くあの授業か…かと言って授業が終われば別段学校内を見て回る事なんてな…」


 言い方に棘がある気がしたので俺は別段反論は一切しない。

 実際あの頃の俺は師匠が苦手で会う度に悲鳴を上げて逃げていたのだから。


「学校を見て回りたいという願望が無いからな…修練場や試合場はそのままか?」

「いいや。大幅改修の大目玉だったから大改築だって聞いたけど? 最も俺達はその前の形を知らないからなんとも言えないけどさ。今は五階建ての大きな校舎になっていて、試合場は六角形の建物で観客席や試合を万全に行うために設備があるよ。修練場も度々レクターが壊すからここ最近は新築と言っても良いんじゃ無いかな?」

「あいつはそんなことをしているのか? 学校で何をしているんだ?」

「俺に聞かれてもな。毎度巻き込まれているだけでそこに居るだけで最近は怒られるんだよ。もう…最近はマジで何度かサクトさんを呼ぼうと思った事がある」


 あの人を連れてくるとレクターは途端に大人しくなるので最悪それを脅迫道具として利用しようとしていた。


「そう言えばアカシから聞いたけど。レクターは前に教室の壁をぶっ壊して補強工事をする羽目になったって聞いたけどほんと?」


 師匠から物凄い目で見られて「本当なのか?」と聞かれてしまう。

 二学期中の事なので今更否定は出来ないし、否定したところで中途半端に情報が漏れているため下手をすればもっと酷いことになる可能性がある。


「まあね。誰かさんが何度も何度も校舎を壊すからね。これ以上破壊して欲しくないって冬休み中に終わらせるって意気込んでいたよ」

「校舎の改築費用が凄い事になりそうだけどね。でも、改修費用から外されている場所もあるんですよ。例えばさっきも言った植物園なんかは外されていますし」

「それはレクターが普段からよらない場所だからでは無いか?」


 俺は心の中で告げる。

 大正解と。


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