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ベルリンの戦い 4

 銃弾を弾いては柱を護ろうとしているとき、再び脳裏に記憶が蘇ったのだが正直内心「こんな時に!」と突っ込みたい気持ちをグッと抑えて俺は銃弾を弾き落とす行為を止めないようにしていた。

 すると再びジェイドが不死者と戦っている光景であるが、今の現状とまるで変化が無いので一体どういうタイミングで記憶が呼び起こされているのかが判断出来ない。

 しかし、敵から来る槍による連続攻撃を紙一重で躱しながらジェイドは剣を水平に構えて突き刺していくのだが、その時の動きは素早く且つ最低限の初動で突き出していた。

 早く恐ろしいほど正確な突き攻撃なのだが、その時の衝撃で胴体に大きな穴を開けていたが、それだけで殺せるほど不死者は優しくない。


「無撃。二ノ型。送り火からの四ノ型。剥離」


 突き攻撃から上へと剣の軌道を素早く切り替えながら敵の体を無限大の形へと切り刻んでいく、その時の軌道は確実に『首』を始め『心臓』や『四肢』を切り刻む。

 剥離とは追撃技なのか、カウンター技だと思っていたが一ノ型や二ノ型で倒しきれなかった敵に対する対抗策なのだろう。

 攻撃軌道は心臓を中心に四肢や首を確実に切り刻むように剣の軌道を調整する技『剥離』を見れたのは良いが、正直に言えば剥離の存在意義がイマイチ分からなかった。

 突き攻撃は敵の攻撃手段によっては斬撃攻撃が使えない状態での攻撃手段のバリエーションだろうが、剥離は完全にそれだけで倒せない時用なのだ。


 しかし、実際剥離は確実に敵を殺す事が出来るようにと完成されているのでこれ以上突っ込まない。

 そして、この状態を省みて送り火からの剥離が有効だとわかり俺は突き攻撃へと剣の持ち方を少しだけ変える。

 ダッシュで敵との距離を埋めつつ突き攻撃を繰り出す。


「無撃! 二ノ型! 送り火…! からの四ノ型! 剥離!」


 そこを中心に俺はダイナマイトを切り刻まないように軌道を調整し、敵の動かない心臓よりも首を確実に切ることを目的に軌道を動かす。

 無限大の文字、八の字を軌道にしつつ俺は敵の首、両腕や両足を切り刻む際に異能殺しを織り込む。

 首を切り落としても腕などはゴソゴソと動いており、その姿は気持ち悪いの一言である。

 すると俺の背中にブライトがくっ付いてきた。


「ソラ! 凄い! 格好良かったよ! でも、どうしたの?」

「いや…また見えた。と言うか今の記憶はブライトには見えなかったのか?」

「うん。見えなかったよ。でも、ドンドン習得していくね」

「いや。完成度が低いよ。まだまだだ。多分ジェイドと戦っても勝てるほどの力は無いはずだ」


 あくまでも真似ているだけなのでそれ以上もそれ以下も無い。

 無我でさえ俺は特訓して出来るようになったので、師匠のように技の完全コピーとまでは行かない。

 あの人はぱっと見しただけで技を完全に模倣することが出来るという謎の特技がある。


「ソラ…所で携帯は?」


 そこまで言われて俺は携帯を落としたと言うことを思い出し、二人でロビー中を探し回っていると、瓦礫に挟まれる形で画面がバキバキに割れたスマフォを発見した。

 これは流石に無理かなっと思いながら俺は画面を起動するが、案の定画面に触れても全く反応が無い。

 俺はため息を吐き出して「買い換えかな…」と呟く。


「直せないの?」

「流石にな…買い換えた方が早い気がするけど、当分それが出来そうに無いな」


 それが困った事態で、今ドイツにいるとどうしても今すぐの買い換えが出来ないが、かと言って連絡手段が無いというのも困りもの。

 こう…手が触れるだけで治せる万能人間でも現れて直してくれないかどうかと悩む。

 まあ、現れる訳がないので俺はスマフォを弄りながら一旦建物から出て行くと異世界連盟があっという間に建物を囲んでいた。

 仕事早と思いながら建物から離れていくとジュリが駆け寄ってくる。


「大丈夫!?」

「ああ。スマフォは壊れたけど…」


 バキバキに割れたスマフォをジュリに渡しながら俺はため息を吐き出した。

 内心困ったなと思っているのが流石にジュリにはバレたらしく「買い換える?」と聞いてきた。


「買い換えたいが…今すぐという訳には行かないだろ? 通信機でも借りるさ」


 と言ってジュリから俺のスマフォを受け取って俺は再びポケットの中に入れると今度は「どうして気がついたの?」と聞いてきた。


「少年を助けたとき運転手が見えた。ゾンビだったと気がついたら俺はあの大型トラックが普通じゃ無いと咄嗟に判断出来た。ただの爆弾を積んでいるなら別にあんな大型トラックじゃ無くてもいい。そう考えたら俺は嫌な予感がしたんだ」

「それがあの時の行動ってわけ? 僕は突然動き出すから驚いたよ」

「ガスボンベだったんだね。それを大量に入れた」

「ああ。爆弾なら俺が解除してしまう可能性があるし、ガスボンベなら下手な攻撃はその場で爆発する可能性があるからな」

「ソラ君の動きを完全に読んでね」

「ああ。戦い方も俺の戦いを歩いて程度パターンとして捕まれていたよ。俺が戦い辛い方法をとっていたし…あの男は勝つ為なら手段を選ばないタイプだな」


 あの青白い男を思い出して表情を曇らせる。

 やはりあの時確実に殺しておけば良かったと後悔しそうになるが、後悔ばかりしていると前に進めないというのは反省でもあった。

 やはりこの街にいると言うことは間違いが無いが、即席で動いたにしては準備万端だからある程度事前に準備をしていたのだろう。


「やっぱり街のどこかに隠れていると見た方が良いな。これ以上被害が出る前に手を打ちたい…」

「でも、どこにいるのか分からないよね。廃墟なんかを調べても良いけど、そんな分かりやすい場所を拠点にしないだろうし」

「ああ。自宅も無いだろうからな…何か事前に用意しておいた場所があれば良いが…」

「廃墟よりもそっちの方が探せそうだね。何せトラックまで動かしているわけだし。トラックにガスボンベ、銃火器一式まで…会社の電源室に刺客まで配置していたんだよね?」

「うん! ソラのラウンズが無かったら危なかったよ」

「事前に準備しておいて良かったよ。だが、誰かがいることが前提で刺客まで用意する周到さ、今回の相手は厄介だな」

「だね。最初の一回ですらソラ君達が見つけない限り裏方に徹するつもりだったんだろうし…」


 それなのだ。

 最後に俺達が見つけたからあそこで逃げ出しただけで、見つけていなかったら何処までも攻撃を仕掛けていたに違いない。

 見つかったら即逃げる、相手の戦闘方法に合わせて準備を切り替えて襲い掛かる。


「俺達に最初に襲い掛かってきたのは俺達の戦闘手段と事前情報が合っているのか確かめる目的もあったんだろうな。入念な下調べといざとなったときの作戦」

「面倒な相手だよね。僕が勝手に動くかもって事も推測して配置したんだもん」

「だな。俺が連れて行くならブライトしか無いと推測し、下手をすればブライトが電源を入れに行くことを考えて始末するために刺客を配置、ダイナマイトに銃火器で俺の動きと戦法と封じる」


 これは次の戦いまでにこちらも少しばかり対策を練る必要がある。

 そこで俺は師匠とエアロードが居ない事に気がついた。


「師匠とエアロードは?」

「あの二人だったら…あそこ」


 ジュリが指さす方向ではベンチに座ってアイスを食べるエアロードとその隣で呆けている師匠の姿があった。

 あれにもいい加減真剣になって貰おうと心に決めた俺。


「とりあえず今まで手に入れた情報を元に居場所と戦い方を少し考えてみよう。今の攻撃を考えれば流石にまた今すぐ来るとは思えない」

「だね。少しだけど時間があると考えて良いと思うよ」


 これ以上奴の良いように動くわけには行かない。


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