ノートルダムの鐘を鳴らせ 10
ジャック・アールグレイとメメントモリの戦いが始ったのはギルフォード達とアベルの戦いがそれぞれ佳境へと向おうとしていた時で、先に動いたのはメメントモリだった。
しなやかに動く剣を真っ直ぐにジャック・アールグレイへと伸ばし、ジャック・アールグレイはその攻撃をレイピアに寄る刺殺攻撃で打ち落としつつ上へと向って跳躍する。
上へと逃げたジャック・アールグレイへと追撃するように背中から鞭のような動きをする金属製の触手を伸ばして攻撃し始める。
左右上下からやってくる攻撃を触手自身を足場にしつつ躱していき、一気に距離を詰めてから黒い不思議な力を纏った一撃をメメントモリ目掛けて突き出す。
メメントモリは攻撃をギリギリで躱しつつ触手でジャック・アールグレイを地面へと叩き付けた。
噴煙を上げて地面へと落ちていくジャック・アールグレイ、メメントモリはジャック・アールグレイ目掛けて剣を伸ばしていくのだが、その攻撃をジャック・アールグレイはレイピアで粉々にしつつダッシュで近付いていく。
両腕のナノマシンが破壊されたとしても、それでも瞬時に再生できるメメントモリは両腕を今度は機関銃のような形へと変える。
両腕から放たれる光線の雨をジャック・アールグレイは小刻みに動き回って回避しつつ距離を埋めていく。
するとレイピアの刃が真っ黒に変貌した後、ジャック・アールグレイは強烈な一撃をメメントモリの胴体目掛けて叩き付けようとする。
メメントモリは自らの体をバラバラにして散っていくと、アッという間にジャック・アールグレイの前から姿を消した。
「言っていなかったかな? 私は所詮ナノマシンの集まり。君がどれだけ攻撃しようが結局で倒しようがないんだよ」
「どうかな…なんとなく君自身の正体が分かってきた気がするが。君が隠したがっている正体とやらが…」
ジャック・アールグレイの後ろから姿を現すメメントモリ、後ろから大剣へと変えて両腕で攻撃を仕掛けると、ジャック・アールグレイは自らの体を影に一瞬だけ隠し、大剣を振り切った所でもう一度姿を表して攻撃を仕掛ける。
メメントモリは右半身をバラバラにすることで攻撃を回避し、その状態で周囲にあるナノマシンを使って槍を大量に作ってジャック・アールグレイの周囲から襲い掛かった。
一斉に襲い掛かってくる攻撃をジャック・アールグレイは黒い斬撃で打ち落とし、一旦距離を離す。
何度も何度も攻撃を仕掛けてくるメメントモリを観察を続けてきたジャック・アールグレイ、だからこそ何度も仮説を立ててはそれらを証明する為に策を試すだけ。
そうして試している間に分かってきたメメントモリという存在の弱点、一転してナノマシンの集まりだけのように思えるが、やはりメメントモリにも核と言っても良い中心部は存在し、それがナノマシンの集まりになる事で意識が生まれる。
問題はこの核がどこに有るのかだが、メメントモリが作り出しているナノマシンの肉体には核がない事ぐらいはなんとなく分かった。
前の戦いの時もそうだが、ジャック・アールグレイが半身をバラバラにするような攻撃を受けても動き回っていたように、メメントモリは安全な所に核を配置していると推測した。
同時にナノマシンの製造と供給をしているのもまた核であるとも分かっていた。
体をばらけさせて姿を隠せると言うことは間違いなく核が存在し、同時にこの近くに配置していると言うことを示している。
間違いなくこのノートルダム大聖堂のどこかに隠していると推測したジャック・アールグレイ、闇雲に探し出しても良いがそんな面倒な事をしていると他のメンバーが到着してトドメを刺されかねない。
迅速に勝つ確実に探し出す必要があるが、来たことのない建物からどうやって探し出すのか。
ジャック・アールグレイは戦いを続けていく過程でずっと考えていたこと、それは散っていたときや再生しているときのナノマシンの動きであり、ナノマシンは壁を伝って上から来ていることに気がついた。
上に隠していることは間違いが無く、となると上に登る必要があるのだが一旦メメントモリの目を隠す必要があると思ったジャック・アールグレイはダッシュで近付いていく。
メメントモリはジャック・アールグレイの喉元目掛けて剣を横に振ってくるが、それをジャック・アールグレイは跳躍と同時に体を空中で捻って回避しつつメメントモリの体に強烈な一撃を叩き込みつつ噴煙を二階に届きそうなほど叩き込んだ。
「何度も言わせるなよ!! 聞かないんだって何度言ったら分かるんだ!!」
地面から這い出てくるナノマシンで出来た触手が噴煙を吹き飛ばすのだが、その時メメントモリは気がついてしまった。
さっきまでここに居たジャック・アールグレイが居なくなっていることに、出入り口のドアが誰かが出たように開閉しているのだが、メメントモリはどれがフェイクだと直ぐに判断出来た。
メメントモリを殺したいと願ってここにやって来たジャック・アールグレイが諦めるはずがないと分かりきっていた。
「バレたか!?」
ナノマシンを分解して上に意識を戻しているとき、ジャック・アールグレイは屋上まで辿り着き左右に伸びる更に高く上へと昇っていく建物の一部を見守る。
右と左にある高く伸びている建物の一部。
「さっき見たときは左の建物から来ているように見えたが…恐らく」
そう思って右の建物の中へと入って行く為にドアノブへと手を掛けて空けると、ノートルダムの鐘にへばりつくようにどす黒いオーラを放っている人の形ほどの大きさがある球体を発見した。
あれで間違いが無いと判断したジャック・アールグレイは核を破壊する為にダッシュで走って行くのだが、核から出現したメメントモリが姿を現して妨害してくる。
大量のナノマシンがノートルダムの鐘を中心に部屋中に金属の触手のように見える物を伸ばしていき、気がつけば部屋中が金属が脈打つような感じで気持ち悪くなっていた。
「どうせこの核も本体じゃないんだろ!」
「当たり前だ。だが折角作った核をそんなに簡単に壊されては困るんだよ! この低脳の猿が!!」
周囲から金属の刃が伸びていきジャック・アールグレイを襲い掛かってくるが、ジャック・アールグレイはその攻撃を全て紙一重で回避していきながら次第に距離を埋めていく。
左から来る攻撃をレイピアで打ち落とし、下からくる攻撃を跳躍で回避しつつ核との距離を埋める。
「所詮短い人生しか生きられない分際のくせに…!」
「追い詰められると口調が乱れるのか? それに短い人生だからこそ金を稼ぎたいと思えるんだろ? だから私は金を稼ぐんだよ…無能の機械生命体が」
左側へと回り込むように走って行き、レイピアで斬撃攻撃を繰り出しながら金属の壁を破壊してから跳躍。
目の前からやってくる攻撃を刺殺攻撃で打ち落とすが、今度は真下から攻撃が昇ってくる。
真下へと攻撃を浴びせるには流石に時間が無い、メメントモリはこればかりはまともに食らうだろうと思われたが、真下から襲い掛かっていたナノマシンが突然爆発と共に散けてしまう。
何が起きたのかと驚いていると、湊のシールドを使って上まで登ってきたギルフォードが援護しており、湊のシールドをジャック・アールグレイの足場にするため投げ飛ばし、ジャック・アールグレイはそれを足場にして更に跳躍。
ナノマシンを黒い炎で全部打ち落とし、出来た道を突き進むジャック・アールグレイのレイピアが核に突き刺さった。
「この低脳が!!」
核が振動と共に砕け散った。
これがパリで起きた一連の事件の結末である。




