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ノートルダムの鐘を鳴らせ 3

 アベルはマンモルトルの丘の上からノートルダム大聖堂を双眼鏡で覗き込んでおり、その周りでは武装した者達が集結しており、あそこを突破するには少しばかり時間が掛かりそうだと悩んでしまう。

 実際鬱陶しいまで機械兵が左右から伸びている橋の先に待機しており、その大聖堂前でも多くの武装した者達が集まっているが、ぱっと見杭の姿が全く見えない。


「杭の姿が見え無いという事は間違いなく大聖堂の中に刺さっていると言うことになるが、中に入る必要がある訳か…左右の端の前には大量の機械兵がいて…その上恐らくは橋には爆弾が備え付けられていると見てもいい」

「良く分かりますね。貴方のような人間でも軍の人間と言うことですか…」

「それって褒めてないよな? となると建物に隠れるように何かを配置していそうだな」

「ミサイルぐらいなら配備していそうだが、ここが最後と言うこともありかなりの戦力を費やしているようだな」


 向こうとしても簡単に負ける気は無いという覚悟の表れでもある。

 ノートルダム大聖堂という聖域と言ってもいい場所に陣取るというある意味罰当たりとも取れる行動だが、そもそも皇光歴の世界には宗教という概念があまり存在しないのでなんとも思わない一行。

 しかし、シャインフレアからすれば折角綺麗な街並みを台無しにされかねない配置に正直ウンザリしてしまうが、アベルから出てくる言葉にため息を覚えてしまう。


「街を派手に壊されると後々私が始末書を書かされるのだが、勘弁して欲しい。あれ結構面倒なんだ。何故こうなったのかなんて『敵が暴れ回りました』ぐらいしか無いのにやり直しを食らうんだぞ…どう思う?」

「どうも思いません。強いて言うなら街が壊されて抱く想いがその程度という貴方の感性が非常に残念だと思うだけです。提出された人もきっと同じ思いを抱いていると思いますよ。その基本他人事という考え方…どうにかなりませんかね?」

「シャインフレア。ツッコムだけ無駄だぞ。基本家に居るときさえこの男この調子だからな。ソラが時折ため息を吐き出している」

「貴方は実の息子にため息をつかせているのですか?日常的に少し間マシになろうと思わないのですか?」

「息子だけじゃ無い。ガーランドやサクトからつかれた気がする。もっと言えば部下からも同じようなため息を見たな」

「皆貴方の行動に苦労しているのですね。分かります。側にいるだけで疲れる」


 シャインフレアはため息を吐き出してからふと上の方に見える寺院を見つめて首を傾げてしまう。

 何か一瞬だけ感じた違和感、しかし直ぐに感じなくなったので気にしないことにし、アベルの方をもう一度見ながら「で?」と尋ね始める。


「これからどうするのですか? 合流して直ぐに動くのですか?」

「いや…飛空挺で待機している部隊も合流してこちらも数で攻める。流石にこれだけの数を我々だけでは時間が掛かって仕方が無い。最悪翌朝にかけても解決できていない気がする」

「それもそうだろ。シャインフレアやダルサロッサやダークアルスターや私を入れても足りない。結界無いでは大きくなれても自由に動き回れないし、あの数だ…百じゃないぞ…」


 シャドウバイヤの指摘通り隠れているが、数は恐らく千を超える数が配備されており、イギリスのロンドンでは町中に散っているような感じの戦力をある地区にだけ集めているのだからぱっと見だけでも凄い数だと素人目でも分かる。

 それも建物を活用した武装まで用意しているようで、建物の壁や屋上にも自動照準型の機関銃などを配備していた。


「一カ所から突破すれば他の所から回り込まれる可能性もありますし、ミサイルや上からの銃火器を入れれば一カ所での突破は止めた方が良いでしょうね」

「なら最悪三カ所からの攻撃だな。正面からと左右の橋からの突破の部隊で分けるべきだ。とりあえず左右の端までのルートを確保してからだからな。とりあえず飛空挺の部隊に連絡をだし、他にも持ってきている兵器も持ち出そう。そうだ…」


 そう言い出してアベルはスマフォを取り出してどこかへと連絡を入れ始めた。

 シャインフレアとシャドウバイヤは首を傾げて不思議そうな顔をしていると、アベルは電話越しに何か指示を出しており最後に電話を切った。


「何をする気ですか?」

「杭が大分抜けた状態ならゲートを短期間なら使えるのではと思ってな。ぶっつけ本番ではあるが試してみようと思って。これから駅に向うぞ」


 アベルは車へと乗り込むのだが、シャインフレアとシャドウバイヤは嫌な顔をする。

 ここまで車に乗ってやって来たが、アベルの運転は常に荒っぽく二人は正直吐きそうになっていた。

 なんとか回復したのにこれまた再び地獄を見なければならないという状況に表情を曇らせる。

 かと言って飛んで移動するのは流石に困る二人は黙って乗るしか選択肢は存在しなかった。

 激しく揺れること更に三十分。

 駅に到着したアベル達、アベルは真っ先に中で復興作業を行っていた駅員にゲートを開けて欲しいと伝え、駅員達は急いでゲートを開き始めると、淡い光がつき始め眩い光が駅のホーム内に満たされると同時にゲートの向こう側からガイノス帝国が保有する戦力を搭載した列車が大量に入り込んでくる。

 ゲートを付けることが出来たのは精々十分が限界だったらしく、再びゲートは閉ざされて今度こそ開けなくなった。


「アベル大将! 今すぐ動かせる戦力を集めてきました」

「ご苦労…? サクトは居ないんだな」

「サクト大将でしたら現在イギリス奪還作戦に参加するために準備中です。こちらはアベル大将に任せると仰って降りました」

「任されてもな…」

「それと伝言が…「街を下手に壊したら始末書じゃ済まさない」との事です」


 顔面蒼白へと変わっていくアベルを楽しく見守っていたシャインフレアとシャドウバイヤ、アベルは意識を切り替えて全部隊に現状の説明を素早く済ませつつとりあえず駅に全部隊を集めるために連絡を飛ばし始める。

 それに答えるように空港からや別に動いていたジャック・アールグレイやギルフォード達まで集結し、駅の広場はギチギチになっていた。


「何なんだ? この兵士や戦車やウルズナイトの数は…」


 ギルフォードが疑問を抱きながらそんな事を呟き近付いてくると、シャインフレアが代わりにと答え始める。


「アベルが呼んだのです。ゲートで。もう使えなくなったようですが…」

「そうか…しかし、よくもまあこれだけの戦力を集めたモノだ。普段だらしなく見えるし適当な人間だと思っていたが、なんだかんだ言ってやはり軍の上層部なんだな」

「ほんとそうは見えませんけどね」


 シャインフレアの意見に満場一致が起きそうな状況であるが、レインはその間ひっきりなしに地面を見たりマンモルトルの丘の方を見たりしていた。

 湊はそんなレインに右手を優しく握りしめて訪ねる。


「どうしたの?」

「ううん。地下を通じてエネルギーがドイツ方面に向っているような気がして…遮断もしているのかな? 良く分からないんだけどね…なんかそんな気がする。それになんか…違和感があるの」

「レインもですか? 私も先ほどから丘の方から違和感が…まあ小さい違和感ですから良いですが」

「レインも小さい違和感だから良い。多分杞憂だと思う…だと良いな」


 笑顔を見せるレインだが湊はふと丘の方をジッと眺めていたが、この二人が感じる違和感を勘違いレベルで済ませて良いのかと。

 しかし、これから起きようとしている戦いを無視できない湊はその意識を一旦脇に追いやる。


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