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凱旋門の戦い 8

 ギルフォード達が屋上へと辿り着いくのに一時間以上掛かってしまい、気がつけばお昼が近くなってきていた。

 あと少しという所でアベルが腕時計を見ながらため息を吐き出し、湊に抱きついているシャインフレアが「また下らない事を」を指摘するが、実際現場にそぐわない事を考えていたのは確か。

 心の中で「お腹空いたなぁ」やら「そろそろお昼だな」などと考えており、今アベルの心の中を満たしているのは「早くお昼食べたいな」である。

 全員なんとなくはアベルが考えていることが分かっていたので敢えて誰も指摘しないし、何よりも誰も相手にしたくないので黙って歩いていた。

 先頭を歩いていたギルフォードがようやくの思いでドアに辿り着いたのだが、正直ギルフォードは後ろをひっきりなしに確認しており、アベルはギルフォードに「何を確認しているんだ?」と後ろを見る。


「いいや…別に視線を感じるわけじゃ無いんだが、ここに入ってからこう…違和感というか…気配というか…そういう例えようが無い何かを感じるんだ」

「ふうん。気配を感じないからあるとすればシャドウバイヤ並みに隠れるのが上手な役だな。少し後ろを気にしながら戦うか…面倒な」

「湊は後ろを気にしていてくれよ。ドアを開けたら多分メメントモリが居るだろうし」

「分かっていますが…未だにレインちゃんやシャインフレアはウチに抱きついているんだけど!」

「ここを出たらそのうち離れる。無論離れてもお前が護るんだ! 良いな? あの機械の化け物から護れなかったら」

「止めろ止めろ。被害を出そうとするな。身内から。お前はどういう立場から周辺被害を身内から出そうとする?」

「兄という立場として周辺の人間に責任問題を突きつけているだけだ」

「なら妹を護るというお前の責任問題を追及されるべきでは無いのか? お前はどうして自分で護ろうとしない?」

「俺は護るという行為が苦手だからだ。護れよ」

「アンタ……死ねば良いのに…!」


 前方から感じる殺気を前にして湊は己の心の本心を口にし、ギルフォードはそれを無視しながらドアをそっと開く。

 冷たい外気が中へと入ってきて、同時に凱旋門の展望台が姿を現し少し距離を開けてメメントモリが立ち塞がっていた。

 鉄マスクに見えるような頭部に黒いスーツをを身に纏う違和感、両手も機械で出来ており、足下こそ革靴を履いているのだがその下も金属であることは間違いない。

 メメントモリは壁に背を預けた状態で拍手でギルフォード達を向い入れ、同時に指を鳴らすと地面からまるで湧き上がるかのようにナノマシンが人の形を成していく。


「ようこそ。正直に言うが君達の行動には驚きしかない。普通の人間は私のような存在に恐怖し隷属を選ぶモノだと思うが…どうして抗う? 死なないという大きすぎるメリットを前にして、化け物のような戦闘能力を前にしてまだ立ち向かおうとする?」

「自由が欲しいからさ。誰かに未来を見つけて貰うなんてつまらない。だから…抗うんだ」

「自由を得るためには争うしか無いな。何故誰も気がつかないんだろうな…十人十色。人の数だけ想いや思想があるんだ。その思想は時に他人を傷つけてしまうものだ。それが争いの元だとどうして気がつかない? それとも気がついていながらも見えないふりをしているのかな?」

「分かっていないさ。人間がそこまで賢いと思わない事だ。国境を挟めば来ている人間は全く違う。未知な存在には誰だって恐怖するし、怖いことは遠ざけたいさ。でも中にはソラのようにそれらに立ち向かい安全であると証明する人間だっている。俺達は安全だと証明して人に選ぶ自由を考えて欲しいだけだ」


 メメントモリは口元と思われる場所を抑えながら考え込むような素振りを見せたが、ギルフォードの話を聞いてもイマイチ理解出来ない。


「平和が欲しいと言いながら争う。その理由を本当の意味で君達はキチンと理解しているのかな? そういう意味だとこちらは考えても?」

「…理解して居るわけじゃ無いさ。きっと…本当の意味で理解してする日はこないんだろうな。同じ人だと言われても考えが異なる以上全く同じ人間なんて存在しない。それは真実から逃げたい人間の言い訳だ」

「……ならやはり危険だな。人間という存在は危険だ。矛盾した思考、逃避した理想。君達は…君達人間はやはり生きていない方が良い」


 一気に殺気に似た気配を周囲にまき散らし、それはまるでドス黒いオーラのような形で発揮し始め、周囲に立ち尽くして囲んでいる人型の機械人形が一斉に襲い掛かってくる。

 ギルフォードは右手に握りしめた剣に黒い炎を、左手に握りしめた剣の刃を黒く変色させた。

 ギルフォードもここまで使ってようやくこの剣の使い方が分かってきた。


 右手に握りしめている剣は熱を炎という形で発散し、左手に握りしめられた剣は周囲の熱を吸収して刃そのものを高熱にする。

 発散と吸収という対極の力ながら、ある意味相性の良い力と言えるこの剣を完全に使いこなしている。

 ダルサロッサはそんなギルフォードを見ながら狭い場所に表情を曇らせる。

 広いのならダルサロッサも戦いようがあるが、狭い場所になると正直戦いづらい。

 走って突進する戦法が使えないと考えたダルサロッサは自分の周りを囲むように円状に黒い炎を出現させ、その黒い炎を自分の手足のように扱うことで攻撃し始める。

 アベルも大剣を召喚し横薙ぎに切りつけるのだが、直ぐに再生して襲い掛かっていく。

 こちらも狭い場所故に万全の状態で戦えないというのは誰もが同じ状況であり、湊もなるべくシールドを飛ばさないようにレインと一緒に護るように行動し、シャインフレアは無視が無い事を確認してから光線攻撃を放ち始めるが。

 直ぐに再生しては動き出す無限の兵士達に苦戦を強いられる。


「手を止めると捕まってしまうぞ。ナノマシンだ…何処でも入り込むことが出来るのはナノマシンの特徴だな」


 小さな機械の集まりでしか無いメメントモリはナノマシンの補給が出来るなら回復も自由に出来る上形すらも自由。

 ソラの異能殺しが唯一通用しない相手でもあり、同時にメメントモリ自身は死ぬ可能性が低いという状況は彼に余裕差を生み出していた。

 メメントモリは全員の状況を数歩後ろから下がって見守っており、真っ先に突破してきそうなアベルから無力化しようと動き出す。

 予め凱旋門の中に隠しておいたナノマシンを集めていき、アベルの足下からナノマシンの波を出現させた。

 突然現れたナノマシンの波を大剣を力一杯切りつけることで回避するが、その瞬間ナノマシンで造られた機械兵が背中に飛びつく。

 腰に両足をくっ付けて引っ付き、同時に両腕をそのまま押さえて無力化しようとする。

 アベルも抵抗しようと力を込めると、形を変えていく機械兵は周囲にあるナノマシンを取り込んでドンドン大きくなっていく。

 次第にナノマシンに身を包んでいきあっという間にアベルの体は隠れてしまった。

 ダルサロッサがそこから救出しようとしたが、その瞬間ダルサロッサの右後ろ足を何かが掴んだ感触があり、そこには熱に耐えるナノマシンが炎の中へと入り込んでいる。

 体を発火させて対抗するが、炎の勢いを強めるとレインや湊達に被害が出ると思うとどうしても本気が出せない。


 このときギルフォードは凱旋門の此所を戦場に選んだメメントモリの理由がハッキリと分かった。

 舌打ちをしながら突っ込んでいき、次々と攻撃を仕掛ける中メメントモリはナノマシンで擬態して攻撃を回避し、レインを襲うとレイン達の後ろに現れた。

 必死な形相で進路を変えるが間に合うわけが無い距離感、駄目だとギルフォードが思った所でメメントモリの体にレイピアの刃が突き刺さった。


ここに居るはずの無いジャック・アールグレイが現れた。


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