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錬金術師の戦い方 7

 エッフェル塔の前には大量の武装した集団が囲むように占拠しており、ここが重要拠点の一つと言うことは間違いが無いが、エッフェル塔の周りの防衛具合は他の拠点と比べようも無いほど強化されており、ここ数時間暴れ回っていた事が裏目に出る形になった。

 どのルートを使っても大軍と相手をしなくてはいけない現状だが、どうやって持ち込んだのかウルズナイトのような人型機動兵器まで持ち込んでいる始末。

 物陰から伺っているとアベルがそっと指摘した。


「自立型の兵器。恐らくは錬金術で周辺の車などを組み合わせて即席で作った兵器なのだろうな。モチーフこそウルズナイトなのだろうが、中身はまるで違うだろう。自立型だが恐らく地下から送られているエネルギーを通じて簡単な指令を下しているだけだ」

「ならさっきの黒い騎士もどきと同じという訳ですか? 役回りを考える必要がありますね。後ろの凶暴女では流石に無理でしょう」

「まさかとは思うけど…それウチのことじゃ無いわよね? この化け物男」

「フン。自覚があるんじゃないか…お前の能力じゃ流石にあの鋼鉄の体を相手には出来ないだろ? お前の能力そういう能力じゃ無いし」

「悔しいけど…あんな化け物の相手に出来る自身は無いわね。勝手に戦って死ねば良いんじゃ無い?」

「湊お姉ちゃんとお兄ちゃん。いい加減喧嘩止めて」


 レインの言葉一旦止まる喧嘩だが、一瞬でも油断すれば即喧嘩しかねない勢いがありアベル達は困り果てている。

 派手な戦いを好むギルフォードと、遠距離から近距離まで戦える代わりに派手さとは無縁の多彩な戦法を好む湊は戦う上では意外と相性が良いが、その代わりにと人柄上の相性が非常に悪い。

 お互いがお互いを攻撃口調で接するためか、基本けんか腰で会話をし、売り文句に買い文句というやりとりを繰り広げている。


「では私は引き続きレインを護っているから安心することだ」

「シャドウバイヤはすっかり戦う気を失っているな。なら傷一つ付けるなよ。つけたら唐揚げだからな」

「竜の唐揚げですか? 美味しくなさそうですね」

「私はいらんぞ…そこの影竜の唐揚げなど…私は前で戦うから私のサポートは頼むぞ。シャインフレア」

「任せておきなさい。この戦いを終えて竜の唐揚げが食卓に並ぶのか楽しみにしておきましょう」

「おいおい。私が既に唐揚げになる事が既に決定されているぞ。レインを守り切れば唐揚げにならないはずだ!!」

「お前の思考には働くことで阻止するというアイデアは存在せんのか…冗談を真に受けて」

「待ってくれ。俺の妹に何かあったら俺は実行するぞ。そこの黒い影竜を唐揚げにして食卓に並べる」

「ウチはいらないわ。そんなまずそうな唐揚げ」

「私もいりません。ダルサロッサが食べていなさい」

「何故私が食べねばならないんだ? 食べるのなら言い出しっぺが食べれば良いだろうに…レインだっていらないぞ」

「だから! 私が既に食べられることが前提の会話をするな! 守り切れば良いんだ! 任せておけ!」

「じゃあ傷一つ付けたらお前を本当に唐揚げにする! 良いな…転けるような傷一つでもだ。砂埃すら近づけるなよ!」


 ギルフォードからの鋭い睨みに怯むこと無く「任せておけ」と大見得を切るシャドウバイヤだが、内心全員が不安を駆り立てられてしまう。

 この戦いが終わって次にソラに会うときに「シャドウバイヤは唐揚げになった」と告げたら驚くを越えてしまうだろう事は間違いない。

 シャインフレアとダルサロッサとアベルと湊がコソコソ話をし始める。


「これ冗談ですよね? 私はギルフォードは本気で喋っているような気がするのですが」

「あれは本気の目だな。レインを守り切れなかったら間違いなく実行するぞ。唐揚げなら良いさ…最悪その場で焼きかねない」

「シャドウバイヤさんの方は冗談だと思っているんじゃ無いですか?」

「思って居るな。まさか本当にするとはまるで考えていない顔をしているし…もし次逢った時に唐揚げ状態なら流石にソラが驚くじゃ済まんぞ…」


 アベルは「最悪戦争だな」と付け加える。

 しかし、だからと言ってシャドウバイヤを脅しつけると最悪そのまま逃走しかねないので、最終的に傷つきそうになったら誰かがフォローを入れようという話になる。

 役割分担としてギルフォードとアベルとダルサロッサが前衛、湊とシャインフレアが後衛を担当する事になり、まず先にとアベルとギルフォードが駆けだしていく。

 アベルは大剣を振り回しながら大きな巨体の機械兵へと向って襲いかかっていき、縦に大剣を振り下ろして右腕を切り下ろすことに成功する。

 ギルフォードはその足下でアサルトライフルを構えている二人組に対して繰り出した炎の斬撃をお見舞いして撃退する。


「おい! 本命がこっちに来たと上に連絡しろ! 後方には更に強固な防衛戦を引くようにお伝えるんだ!!」


 後ろでアサルトライフルを装備した兵士の一人が叫んで指示を出しており、その言葉を合図にと周りから一斉に襲いかかっていく。

 右腕を捥がれてしまった機械兵は胸に仕込んでいた機関銃をアベル目掛けて発射するが、アベルはそんな攻撃を横に移動しながら回避しつつそのまま機関銃のある部分に大剣を投げ付けて阻止する。

 しかし、敵はそれに負けじと背中から小型のミサイルを大量に放ち始め、降り注ぐミサイルの雨の幾つかがレインの元へと飛んで行く。

 湊が盾を作って防ごうとするが爆発の余波を考えれば心許ない。

 そんな時シャドウバイヤは飛んできたミサイルを作り出した影に飲み込ませて阻止する。


「こっちは大丈夫だよ!」


 レインの声を聞いて改めて前を向く湊は機械兵の背中目掛けてシールドを移動させ、ミサイル発射口へと突き刺さったシールドは高速回転をし始め破壊する。

 背中の爆発に膝をつく機械兵へと駆けだしていき、胸に突き刺さった大剣を引き抜くアベルはその勢いで頭部に大剣を突き刺して破壊した。

 そのまま着地すると周囲から剣を装備した敵兵が襲いかかってくるのだが、それをシャインフレアが光輪を作り出して一掃してくれる。


「こ、こいつら…後方に下がっている奴らを前面に押し出せ! ここで時間を稼ぐぞ!」


 その言葉にいち早く反応したのはアベルだった。


「時間を稼ぐ? と言う事はあの男は別の策を用意していると言うことか…できるだけここに居る奴らを早めに一掃してエッフェル塔へと向うぞ!」


 ギルフォードは円状に炎の斬撃を繰り出してから駆けだしていき、先ほどの機械兵の後方にいたもう一つの機械へと二連撃の炎の斬撃を繰り出していく。

 炎に怯む様子も無く、機械兵は機関銃で攻撃を繰り出そうとするが、湊はその攻撃を盾で防ぎつつギルフォードに足場を提供する。

 ギルフォードは空中を飛んでいる盾を足場にして大きく跳躍し、頭部に付けてあるカメラ目掛けて炎で熔解することで視界を塞ぎつつ、熱センサーを阻止してから肩に着地。

 その状態で背中に双剣を突き刺した状態で双剣で炎を作り出して中から破壊する。

 ミサイルが中で爆発していき、内側の熱と爆発で粉々になる機械兵から飛び降りて全員が物陰に隠れていく。

 ギルフォードはすぐにレインの方をジッと見つめて心配するが、シャドウバイヤは影を盾にして攻撃を完全に防いでいた。


「クソ…第二防衛線へと引き下がるぞ!」


 走って逃げていく敵兵へと追撃するわけでも無く、一旦落ち着きつつギルフォードはレインの体を隈なく調べ始める。

 シャドウバイヤは「失敬な」と不満げにするが、服に砂埃が付いていると指摘し始めるギルフォードにドン引きする一行だった。


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