海都オーフェンス 2
海都オーフェンスの港は、大きく横に広がった広場と海鮮市場と海鮮物を扱うレストランなどが顔を覗かせていて、何処のレストランからも美味しそうな匂いが漂ってくる。
エアロードとシャドウバイヤがレストランや出店から流れ出てくる匂いに引き寄せられそうになる。
俺は仕方なく出店で魚の肉を揚げて串に刺した料理を購入し、みんなで分けて食べる事にした。
「五つで1000コルになります」
つい言葉で「高!」と言いそうになる口を閉ざし、自分の財布の中から1000コル札を一枚取り出し店員に出す。
店員から差し出される串をそれぞれに配布しながら俺は財布をポケットの中に戻す。
俺は一口口の中に入れると揚げのサクサクした触感と魚味わいが口の中に広がるのをあ堪能する。
五人の口の中には揚げが支配しており、五人で港前を散策していると船着き場では大柄の男が忙しそうにしているのが分かる。
「あれ見ていると漁師とか漁業に就職したいと思わないよねぇ」
「それ言い出したら。兵士何て危険な仕事の代表例なんだからさ。もっと就職したくないだろ?毎日訓練漬けでいざ戦場に言ったら死ぬ可能性が高いんだぞ」
「え?それ言い出したら漁している最中にも死ぬ可能性高いでしょ?」
「それはそうだが、戦場に行くよりましだろ?」
「まあ………戦場に行くよりね。ていうかこの中で軍方面に就職予定の無い人間が一番戦場に言った回数が多いっていうね」
それを言われるとぐうの音も出ない。
きっと現在の士官学生の中でこれだけ戦場に言った奴も中々居ないだろうなぁ。
今度は貨物船フロア辺りまで観光していくが、そんな中に海洋同盟の『帆とウミヘビ』のマークが書かれている。
俺はその貨物に書かれている海洋同盟のマークには周囲に『バルメール海洋連合国同盟』ど文字が刻まれていて、列車で見たコンテナとは少しだけデザインが違う。
どうせ新しいか古いかの違いだろうとさほど気にせず通り過ぎようと横切ると、大きな怒鳴り声が俺の耳もとに届いた。
「何!? 面会は明日になる!? ふざけるなぁ!何のために私がここにいると思っているんだ!!私は海洋同盟の外相だぞ!!」
外相というと内閣メンバーの一人という事か、まあ大の大人がああやって叫び回っていると大人に見えないから不思議。
「外相さんってみんなあんな風に幼いの?」
レクターのそこそこ大きい声はハッキリとあそこの外相さんの大きな耳に届いたようで、恰幅の体と腫れたような大きな顔が俺達の方を向いた。
その表情は明らかに怒りマックスの表情をしており、その怒りはどう考えても俺達の方を向いているのが分かってしまう。
近づいてくるのではないか?と思ってしまうぐらいのストレートな怒りなのだが、俺の顔を見た途端コソコソと秘書っぽい女性と話し始めた。
肩にギリギリ付くぐらいの白銀の髪を適当に左右に分けている秘書の女性、手元に持っているタブレットを弄りながら俺の顔をチラチラと見ているかと思えば、秘書の女性は顔を真っ青に変わっていく。
「何々?ソラが何かしたの?」
「お前にだけは言われたくないけどな。でも……海洋同盟なんて国知らなかったぐらいだし………しいて言うなら総理大臣と会う予定があるぐらいだけど?」
そんな理由で俺を恐れる理由があるだろうか?
かと思うと外相の男性も俺の方を見て顔を真っ青に変わっていくのが見て取れ、そのままコソコソするように立ち去っていく。
「ていうかあれは俺を見ていたのか?」
そう思って後ろを振り返るが、そこには人混みがあるだけで特に変わった光景があるとは思えない。
しかし、そんな中人混みの中に目立つ真っ赤な髪の男性が居たような気がした。
港の商業エリアに入っていき俺達は目的の水肉を購入する為に出入り口から中を散策していく。
レンガ造りの赤に近い建物、活気づいている多くの人の声に圧倒されそうになる。
薄暗さをランプのようなオレンジ色の明かりが温もりを感じさせ、周囲には見慣れぬ魚や貝類などが置かれている。
サンマに似た魚やそのままマグロなどが置かれており、更に別の店からは醤油の香ばしい匂いが俺の鼻孔をくすぐってくる。
「いい匂い………これはマグロかな?それとも水肉かな?ソラ君はどれだと思う?」
「ぱっと見マグロぽいけどなぁ……でも水肉って販売してないのかね?さっきから見当たらないけどな」
先ほどから水肉なる肉が販売されていない気がする。
ぱっと見分からないからなのか、それとも単純に見落としなのかと見回していると、ある一角に大きな水色の牛肉のような吊るししてある肉を見付けた。
ぱっと見は水色の牛肉だ。
「あれが水肉か………毒が付いているわけじゃないよな?」
「大丈夫だよ………多分」
ジュリの自信なさげの声が余計に不安にさせるのは何故なのだろう?取り敢えずと俺は活気づく人混みの中に突っ込んでいき、店員から水肉を取り敢えず二キロほど購入してから戻ってくると、ジュリが俺の背中を指さす。
「ソラ君エアロードが居なくなってる」
まさかと思いながら俺は背を向くと鞄に入っているはずのエアロードが居なくなっており、近くの出店商品ケースに張り付いている姿を見付けた。
俺は何とかケースから引き離そうと力任せに引っ張るが、エアロードはよっぽどこの食べ物を食べたいようで、俺は仕方なしに一つだけ購入してみんなの元に戻った。
今日の晩御飯は皆でバーベキューという事になり、準備はそれぞれが分担して行った。
串に水肉を中心に玉ねぎやピーマンを串に刺し、それを網で焼いていく過程で父さんが俺とジュリとレクターに頼みごとをしてきた。
「このコンテナの中から見つかった呪術アイテムを海都にある海洋同盟付属バルメール大学に届けて欲しい。これのでどこをについて一通り知っておく必要があるんでなお前達が一番信頼できるしな」
「いいけど……俺が触れたら壊れるんだけど。これを安全に持っていく自信ないな」
「なら俺が持っていく!俺が持てば壊れないし!」
レクターが最大まで右腕を上げて自己主張し、父さんは呪術アイテムをレクターへと渡してしまう。
これで明日の俺の予定が決定しまったわけなのだが、何人が付いてくるのだろかと奈美達に聞くが結局ジュリとレクター、エアロードとシャドウバイヤだけが付いてくる事になった。
「奈美達は明日どうするんだ?」
「明日は海上オペラを見に行くの!すごく綺麗で面白いんだって」
「奈美にオペラ何て高貴過ぎて理解できないんじゃないのか?」
少しだけ馬鹿にした言葉に奈美は俺のわき腹に右拳を叩き込もうとするが、俺は素早くよけて回避しつつ一旦距離を取る。
賑やかな笑い声が響き渡る中、俺はあの男性の事を思い出していた。
まるでに睨みつけるような瞳の奥にあったまるで炎のような真っ赤な瞳。
あれではまるで………烈火のような瞳に見えた。
あれが烈火の英雄だったのだろうか?
でも俺は気が付いていれば……あの悲劇は回避できたのかもしれない。そんな後悔が翌日に控えていた。