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あの日の過ちを知るもの達 3

 ギルフォード達がモンマルトルの丘で杭を抜いている間、アベルは迷路と化してしまったパリの街並みのど真ん中で迷子になってしまっていた。

 車がどこかに突っ込んでいけばクラッシュしてしまう事もある為下手に車を動かすことも出来ないと言うこともあり、アベルが車から降りて大きな通りを歩いて行く。

 カフェの中をふと覗き込むと中には暴徒と化した住民らしい人達が荒らしており、アベルは素早く中に入っていって暴徒を抑えようとしたが、足を踏み出そうとしたところで気配を感じ取った。

 後半歩でも足を踏み出せば恐らく別の場所へと飛ばされてしまうと。

 見えない境が至る所に存在しており、その境は目には見えないが道路が交わっている場所、お店と道路の境目など至る所に存在していた。

 お店がドアで仕切られている場所ならまだ大丈夫だが、パリの街の中には外へとカフェが続いている場所もあり、境が分かりにくい場所もある。


「ハァ…放置しかないが…真っ直ぐ進んでいるつもりでも一度境を越えたら全く別の場所に辿り着くのがな。法則性があると助かるが、先ほどから歩いてみてもランダムで変わるわけじゃないというだけで向う場所に法則性がないのがな…」


 建物の中に入っても辿り着ける可能性もあるからこそアベルは正直困り果てていた。

 スマフォを弄って連絡を取ってみても、飛空挺でも同じ状況であるらしく突破からして難しいという声が届いた。

 上に逃げればどうだと思って上に登ってみたが、ある程度の高さになると見えない越えられない壁が存在していると分かった。


「まあ…上から確認したところでどうしたという話しだしな…あくまでも迷路化している原因は境目であって、街そのものじゃないしな~どうしたものか」


 腕を組みながら歩いていると前と後ろから銃を持って集団が姿を現し、囲まれる形になったが、まだ住民を巻き込もうとしていないので内心「良し」とした。

 しかし、着ている服や武装に全く身に覚えがないと確認したアベルだが、だからこそ彼らの正体を知りたいと思い大剣を召喚し肩に背負う。

 敵が装備している武装はアサルトライフルが五人、剣と盾を装備したのが五人の計十人。

 車を盾に使いながらアサルトライフルを装備した者達が物陰から狙っており、剣と盾を装備した者達が少しずつ前に進んでいきながらジッとアベルの方を睨み付ける。

 地味な距離感を維持しながら近付いてくる上、全員が手練れであることを示すかのように動き方に無駄がない。


「少なくとも場数を踏んだことのある者達という事か…」


 剣と盾を装備した者達の中の一人が一台の車の下に円盤型の道具を投げ込み、数秒後に車がアベル目掛けて横転していくのをアベルは大剣で真っ二つにしてしまう。

 それを合図かの用に剣と盾を装備した者達が襲いかかっていく。

 後ろから斬りかかっていく攻撃を大剣で受け止めながら前から襲ってくる攻撃をかわしながら思いっきり蹴り飛ばす。

 今度はコンビネーションで斬りかかってくる攻撃を大剣を軸にして大きめに跳躍し、攻撃を躱しながら大剣に風を纏わせた斬撃を繰り出す。

 するとアサルトライフルを装備した者達が襲いかかっていく。


 アサルトライフルから放たれた銃弾は車などの障害物を回避していきながらまるで生きているかのようにくねくねと動いて接近していく。

 最初は魔導機を使った攻撃かと思ったが、動き方が機敏すぎると判断し大剣で当たる銃弾だけを弾きながら、銃弾が回り込む前に車を派手に転がして攻撃する。

 すると、曲がろうとしていた銃弾は急に不気味な動きを止めてそのまま車などに着弾してしまう。


「動きが繊細すぎる。魔導機のように操りながら攻撃しているのは間違いないが、魔導機以上に繊細な動きが出来るというのは流石に聞いたことがない。それに…」


 彼らが持って居る服には魔導機と思われる道具は見えてこなかった。


 魔導機は片手で持つ携帯型、腕に装着する腕輪型の二種類が存在しており、携帯型は記録できる術式の種類が多い代わり常に片手が埋まってしまうが、腕輪型は最悪脳神経と接続さえ出来れば操作しないでもある程度のコントロールが出来る。

 なので銃や剣などの武装を装備している者達は腕輪型を使う物が殆ど。

 しかし、無線で接続すると精度が格段に落ちてしまう上、どれだけ上昇できてもまるで銃弾が生きているかの用に動かすのはよっぽど高性能の魔導機で無ければ出来ない。


「攻撃をした途端奇妙な動きが消えたと言う事はある程度はコントロールをして居るのは間違いが無いが…魔導機なら無線の感度を上昇させるために外側に魔導機を出している必要がある。なのにこいつ達には魔導機らしい装備が見えない。車を横転させている間は流石に逃げるだろうし…その間銃弾の動きが元に戻った…なら」


 考える可能性は一つしか無く、アベルは走り出していき風で作り出した狼を三匹作り出してから襲わせている間に、後ろからやってくる剣を装備した一団に斬撃が飛ばして牽制しながらアサルトライフルをもっている人間の一人を襲撃する。

 斬撃で怯ませてから一瞬の隙を突いてアサルトライフルを強奪するアベル、ふと側面を触れて見て感触を確かめるが、これはアベルでも見たことがないタイプのアサルトライフルだった。


 長方形型の形をしており引き金を含めて全てが長方形の中に収まっているが、銃口に銃弾を納めるホルスターの部分を入れても無駄な部分が多い。

 何よりも持ち辛いという欠点があるが、触れて見ると分かるのは銃口の下の部分がやけに熱を持っている。


「銃口が熱を持つのは分かるが…これは銃口ほどではないが下の部分が熱を帯びている…この熱はコンピューターで処理するような感じだな。だから連射をしないのか…」


 アサルトライフルを一旦脇抱えながら大剣を振り回しながら足下に攻撃を叩き込んでから砂煙を上げてから建物のドアを開けて中へと隠れていく。

 追ってこないことを確認した後、どこかのアパートの一室で一旦腰を落としてから改めてアサルトライフルを取り出す。


「奇妙なアサルトライフルだな。持ち辛いし…銃口の下にあるスペースが熱を持つというのはやはりおかしい。このアサルトライフル…魔導機みたいな装置を中に一体化させているのか…、嫌私はこれと似た道具を前に見たことがある……嫌な思い出だ」


 アサルトライフルを解体し始めるアベルは、外側を外して中を見ていると小さな長方形のカードのような物が入っていた。

 そのカードを取り出してからため息を吐き出した。


「………これか。もう造られる事は無いと思っていたが…」


 アベルはサクトの元へと連絡を飛ばすとアッサリと電話に出てきた。


『あらあら…パリは今大変なことになっていると聞いたけど、そっちは大丈夫なのかしら?』

「………サクト」

『何々? 深刻そうなテンションだけど』

「……ブレインカードを発見した」


 電話の向こう側でサクトが黙り込み、アベルはカードを弄り回してカードを解体するかどうかで少し悩む。


『本当なの? キューブじゃ無くて?』

「ああ。キューブじゃない。今回はカードだ。手元に見本がある。カード型で熱を帯びている上直接触ると生態特集の鼓動を感じる」

『ハァ…カードという事は人間の脳を使ったのでは無く、あくまでも小動物の脳を使ったのね』

「ブレインカード……生態の体を強引にカードや箱媒体に圧縮し無理矢理動かす非合法な手段だったか…前にはやったのは三十年戦争最初の方だったな?」

『ええ。確かそうだったはずよ』


 アベルはカードを解体して中で圧縮されている生物を元に戻すかどうかで未だに悩んでいた。


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