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相棒 6

 モンマルトルの丘はパリ市街地に存在する一番高い丘、古くから芸術家が集まる場所とも言われており、様々な観光名所が集まっておりパリ市民にとっても様々な風俗などもあることから観光客いがいにも親しまれている場所。

 開発は最低限にするようにと指示が下されており、それ故か移民達が集まる多少治安の悪い場所もまた存在している。

 宮殿や広場や墓地など観光名所が多く、治安の良い場所と悪い場所がハッキリしているとも言われている。

 ギルフォード達は広場からパリの街並みを見下ろしており、他にも観光名所を見に来たのであろう多くの観光客が写真やら屋台で買える絵などを買って楽しんでいた。


「ここでは絵を売っている人が多いわね。まあ…分かっていたけど」

「ここは絵描きさんが多いの?」

「そうよ。ここは昔安い土地であまり売れ行きの良くなかった画家のような職種の人が集まりやすい場所だったの。それに場所によってはちょっと大人向けな場所も多いし、それなりに人気の場所。有名な画家を沢山排出した場所でもあるから」


 ギルフォードは来る途中にそれらしい場所を見つけたが、敢えて口に出さないし聞いても絶対に答える気が無い。

 ダルサロッサは車から降りるとスタスタと街並みがよく見える場所まで移動し、そこからカメラを構えて取り始める。

 ギルフォードはできる限りレインから離れたくないが、レインと湊はポストカードなどの絵を見て回っており、ダルサロッサは風景を撮るのに夢中になっていた。

 レインの所に行けばダルサロッサがどんなトラブルに巻き込まれるのかは分からないので仕方が無いとため息を吐き出しながらダルサロッサへと近付いていく。


 モンマルトルの丘を描いたのだろう絵が沢山並んでおり、レインや湊からすればその全ては十分綺麗な絵に見える。

 湊は一枚の綺麗な絵をふと手に取ってみて気に入ってしまったが、残念な事に湊は今お金がない。

 ため息を吐き出しながら絵を元の場所へと戻し、別の絵を見て回る。


「お金ないの?」

「良いの。ウチがお金を置いてきたのが悪いのよ。これ以上お金を借りるわけにもいかなし…レインちゃんも気にしないでね。流石に小さな女の子にお金を借りるわけにもしかないし」

「レインは大丈夫だよ」

「ダメダメ。お金は大事にして…」


 湊が一瞬だけ切ない目をしたのをレインは見逃さなかったが、その時の彼女に何処まで踏み込むかと悩んでしまう。

 実際湊はその奥にまでは踏み入って欲しくは無かった。

 幼い頃の事を一瞬だけ想いだしてしまったが、すぐに意識を切り替えて別の屋台へと向って顔を向けた。


「向こうの絵も見てみない? ほら…向こうは凱旋門とかも描いてるみたいだよ」


 レインは笑顔を作りながら「見る見る」といって歩き出すが、そんなレインの手を握っている湊には良く分かる。

 レインは歩くことしか出来ないのだと、走ったりはしゃぎ回ったりする事が今は出来ない。

 でも、これでも体長が良い方なのも事実で、まだマシなのだと考えると体調が酷いときの過酷さを想像出来なかった。


「レインちゃんは絵に興味があるの?」

「ううん。でも、ダルサロッサが写真を撮っているのを見せてくれたとき良いなって思った。ダルサロッサ写真撮るのが上手いんだよ」

「そうなの? あの竜はダルサロッサって言うのね。噂には聞いたけど、竜はイマイチ名前が分からないのよね…馴染みがないからかな?」

「えへへ。基本皆いい人だよ。時折悪意をもって動く人がいるけど。でも、面倒見が良いのはほんとだよ」

「そうなの? 一度他の竜にも会ってみたいな。西暦世界には縁が無いからね」

「…竜はね。皆本当なら世界には存在しない人達なの。ただ彼らは人間には無かった可能性を与える為、未来を与える為にやって来て、それ以降それを与え続けるために生きてる」

「可能性」

「うん。夢を見ること、毎日変化があるのは竜がこの世界にやって来たから。でも…現れてはいけない者達もやって来た。それが不死者達なの。永遠を生きるために今を生きる人達を不幸にするしかない人達。それもまた可能性」


 レインが語る言葉には何故か一定の説得力を持っており、ダルサロッサを見ているとただ楽しそうに生きている生き物にしか湊には見えなかった。

 時折周囲からの視線を浴びているダルサロッサだが、本人はまるで気にしていない。


「でもどうしてレインちゃんはそんなに詳しいわけ?」

「えっと…私はね。闇竜と死竜に取り込まれたことがあるから…その時に竜の本質を見てしまったの。巨大な力が見せた竜の本質。『可能性と未来の創造』という役目。ソラのお兄ちゃんが護ろうとしている未来だから。それを失うと言うことは今ある無数の異世界を失う事になるから」

「そう…ウチには少し遠い世界の出来事に見えるかな」

「ううん。お姉ちゃんはきっといつかは第一人者になると思う。少し遠いかもしれないけど…レインには分かるんだ。見えない力とか運命の強制力みたいな力が分かるの。湊お姉ちゃんの運命はウチのお兄ちゃんと少しだけ絡まってる。いつか…お兄ちゃんやボウガンさんと絡まる日が来ると思う」

「…あの人とね…ウチは上手くやっていける気がしないけど」


 出会いからして最悪だと考えており、それはきっとギルフォード自身も同じ事を考えているのだと思うとレインはクスクスと笑ってしまう。

 ボウガンが持つ運命は予想以上に大きく、特に絡まっているのはソラだったりする。


「そのソラって言う人? その人はどうしてそんな運命に翻弄されるような生き方をしているのかしら?」

「えっとね…あの人は運命の強制力を書き換える力を持つ一方で、その運命に踏み込みやすい体質でもあるの。元々ね『竜達の旅団』と呼ばれる力を持つ一族は大きな歴史の節目節目にどこかに現れては去って行く」

「まるで本当に旅団ね」

「うん。だから彼らを旅団と呼ぶ人はいるよ。死竜の記憶の中にあったもう一つの名前は『運命の旅団』だったし、きっと運命を変える力があるからこそ、運命の中心に巻き込まれやすい。レインも一緒」


 レインちゃんは湊に笑顔を向けつつもその顔はどこか切なさを含んでいる。


「運命のように世界そのものの理といっても良い存在に近い所にある『見えない流れや力』に干渉する力を持つ人はね、その分そういった運命の巻き込まれやすいの」

「じゃあ…そのボウガンって言う不死者もそういう力があるの?」

「うん。その人は気がついていないだけ。自分が何で吸血鬼に選ばれたのか、大きな運命のうねりは色んな人を巻き込んで大きくなる。今ね二千年に及ぶ運命のうねりが終着点に辿り着こうとしているの」

「それが今起きている戦い?」

「そう。沢山の人が巻き込まれると思う。もしかしたら死者を出すかもしれない…だからそんな人達からしたらレインはマシだと思うから」


 運命のうねりと言われても湊にはハッキリとそれがどんな物なのかは分からなかったし、そう言っているレインの言葉も半分も理解が出来ないのが真実である。

 運命や宿命はそういった存在を証明するような人物に行き当たらないと分かりそうに内話し。

 レインは時折上を見ながら何かを見ていると湊は流石に気がついた。

 出会ってから外に出る度に上を見ていて、それが何を意味しているのか分からない。


「お姉ちゃんにも見せて上げる。お姉ちゃんは理に少し近いところにある異能だから、レインの異能を使えば見えると思う」


 そう言ってレインは上を指さすと底には真っ黒い雲のような存在が渦を巻いているのが見えた。

 それが何なのか湊にはまるで理解出来なかった。


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