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パリスタート 0

 フランスのパリと言えば花の都などと言われる古くからヨーロッパを代表する街の一つ、同じ高さでかつ似たようなデザインの建物が並んでいるこの街は多くの観光客でひしめき合うが、残念な事に年越し前からニューヨークでの事件とアメリカ内乱を切っ掛けに年始め前からEUから国を越える往来を自粛して欲しいという呼びかけがあった。

 そんな最中起きたイギリスの国交断絶や『不死の軍団』なる脅威を前にEUだけでは対応のしようも無く、ニューヨークで行われた異世界連盟による異世界会談の結果『竜達の旅団に先行で調査して貰い、その間に各国からの対応軍を結成する』という結果に終わった。

 竜達の旅団がフランスのパリに到着した前後でパリではメメントモリが空港を監視していた者達から連絡を受けていた。

 パリを任された身としてはこの場所にあの飛空挺を釘付けにしておけば良いという話で、メメントモリはエッフェル塔の上からパリの綺麗な街並みを眺めている。

 やるべき事は沢山あるが、それでも最低限の術式は完成させたので後はソラ達が動き出すのを待つだけ。


 まずはソラ達が三つに分かれ、ケビン達がイギリス方面へ、ソラ達がドイツ方面へと移動するのを待ちメメントモリはある場所から術式を発動させるだけ。

 それ故に正直暇だったりするメメントモリは退屈そうに座りながら米粒のような人達を眺めながら内心「呑気な人間だな」と思う。

 裏の事情を全く知らないと言っても、この後パリの街に起きる異変を考えれば呑気だと思うが、それもまたメメントモリには関係の無い話である。


「どうせ異変が起きたら阿鼻叫喚な状況になるだろうし…キューティクルはどうしているのかね?」


 などと言いながらも正直キューティクルの事はどうでも良かったが、正直な事を言えばカールの方が心配だったりする。

 カールは前回の作戦での失態から不死皇帝からしっかり説教を受けており、かなりの時間機嫌が悪かった。

 それも八つ当たりを四方八方に向って辺り散らかしており、地味にボウガンが被害を受けているのを遠目に見ていたメメントモリ。


「まあ、無神経なボウガンが悪い気がするし私は関係ないから良いんだが」

「あら? 何の話かしら?」

「おやおや…機嫌は直ったのかな?」

「ええ。ボウガンを一通り殴ったらすっきりしました。こちらは大丈夫なのですか?」

「ああ。君の方こそ役目はどうした? 確か青龍確保は君の役目だったはずだが?」

「それまでは暇ですし…ドイツ方面はボウガンが段取りをする手はずですし…こっちを多少は手伝いますよ。術式を少し最適化しておきます」


 メメントモリは勝手に術式を最適化していくカールを放置して街を眺めている。


「ここは人が多いな。私の世界では人はいないから」

「いたではありませんか。貴方が造った人間達が」

「私にとって人間は消耗品の兵士であり、それ以上もそれ以下も無い。こうして人が普通に暮らしているのが不思議だ」

「前から聞こうと思ったのですが…私たちが侵略したときはもう人は居ませんでしたが、何故居なくなったのですか? 人を造れると言うことは人が住んでは居たわけでしょ?」

「……私という存在が…いや止めておこう。つまらない話さ。少なくとも下らない理由で彼らは滅んだ。ある意味英雄を求めていたのかもな。そうやって自分が行動しない理由が欲しかったんだろう」


 メメントモリは想う。

 英雄とはその他の人間が行動したくない理由付けの人間で、そんな曖昧な存在に任せて奥から人は滅ぶのだと。

 一から人を造りだし、一から操ってコントロールするだけの人間。


「貴方は生き物を信じていないのですか?」


 カールの素朴な疑問にメメントモリはハッキリと答える。


「ああ。私は命を信じない。有機生命体の持つ知性は何処まで行っても愚かの一言だ。感情で左右され、優柔不断で、自分は一本筋を通していると言っている人間に限って実は誰よりも迷う。二択で迫られている選択肢でどうして迷う。だから……私は人が嫌いだ」


 それはカールが初めて聞いたメメントモリの本音のような気がした。


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