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ビックベン・インパクト 9

 ケビンは余裕綽々な態度を取るキューティクル相手に黄色い光線を五発発射し、ホーミングしていく光線を右掌で受け止めつつジッとケビンを見つめ、ケビンはシールドから発せられる光の反射効果を空間全域に張り巡らせる。

 すると、受け止めていた五発の光線の内最後の一発がキューティクルの眼前から急に消え、不思議そうに思って居ると背中に痛みと衝撃がやって来た。

 光線の居場所を鏡の容量で逆転させたと瞬時に把握し、ケビンが後ろへと向って紫色の光線を放つのを見た瞬間右側へと向って鋭い蹴りで移動していく。

 ケビンの眼前から突然紫色の光線が拡散していきながら正面へと広がっていき、キューティクルは回り込むようにケビンへと近付いていき、鋭い蹴りをお見舞いすると、自分の攻撃すらも反転しているようで、攻撃はケビンの反対側へと向っていく。

 キューティクルは内心「めんどくさ」と思いながらも攻撃を反転に合わせて攻撃しようとしたところでケビンは反転を解除して、キューティクル目掛けて紫色の光線を浴びせる。

 爆発と同時にキューティクルの全身に激しい痛みがやって来て、そのまま吹き飛ばされる。

 体の火傷と負ったダメージを瞬時に回復していくが、その隙を与えまいとケビンは色を赤色に変更しキューティクル目掛けて容赦無く発砲した。

 回復するためにもとダッシュで赤い光から逃げていくキューティクル、逃がさないと走り出し先回りしてキューティクルの後ろから赤い光を直撃させる。

 大きな爆発と共にキューティクルの体が再び炎上していくと、キューティクルは炎を全て消火するために黒いヘドロで身を包む。


「やるじゃ無い。流石にヤバいって気がしてしまったわ。本当に強くなったのね」


 まるで手応えが無いと舌打ちをしたくなる気持ちを抑え、今度はどんな戦法で行くかと思考を巡らせていると、キューティクルが先に動いた。

 ヘドロを召喚してそれをケビンの周りを沼地に変えて移動手段を封じに掛かるが、それを見たケビンは足下目掛けて青い光線を放つ。

 すると、ヘドロが氷ついてしまう。


「あらあら…もうそれは光線じゃない気がするわね。でも、やると思ったわ」


 ケビンは力一杯シールドを上空目掛けて投げ付け、回転しながら飛んで行くシールドは天井で反射しキューティクルへと落ちていく。

 キューティクルは「また同じ策で」と思いながらシールドの直撃を避けるため二歩ほど前に出つつケビン目掛けて黒いヘドロの塊を飛ばす。

 すると、ケビンの姿がシールドへと変わり同時に上空のシールドの位置にケビンが現れた。

 やりそうな手段だと思いつつキューティクルは上空に居るケビン目掛けてヘドロを飛ばすのだが、ケビンはヘドロを凍り付かせつつそれを足場にして再び跳躍していく。

 黄色い光線を二発、一つはシールド目掛けて飛ばし進路を変更させつつ速度を上昇させ、二つ目はキューティクルへの牽制として使用。

 キューティクルは攻撃を片手で防ぎつつ後ろに回り込もうとするケビンへと再びヘドロを飛ばすが、またしてもケビンとシールドの位置が変わり、ヘドロを回避するようにシールドは下へと着弾し、その後上へと登っていくシールドと入れ替わるようにケビンが現れて赤い光線をキューティクルへ向って飛ばす。

 キューティクルは襲ってくる赤い光線をヘドロで受け止め、同時に走り出して近付いてくるケビンへと牽制のために時計の針を作り出して飛ばしていく。

 飛んでくる時計の針をスライディングで回避するケビン。


 その瞳は未だに諦めていなかった。


「諦めないその姿勢は驚嘆するし、何よりも支配に抗うその姿勢は驚きしか無いわ。でも、支配を受け入れた方が楽じゃ無い? 皆楽をして生きていくのに、どうして貴女達英雄は険しい道を選ぶのかしら?」

「…楽して目指した道は確かに一番の近道なのかもしれない。でも、その結果得られた結論はきっと胸を張って居られるような結論じゃ無い。支配を受ければ楽かもしれない、でもその代わり自由を失う。アメリカは何時だって自由の為に戦う。私はアメリカ人のケビン。支配に抗い、自由と秩序の為に戦う」

「でも、それは貴女の理屈でしょ? 皆はそうじゃない。私だってそう…誰だって過酷なことや辛い事を目の前にして皆目を逸らして生きていくものよ」

「そうかもしれない。でも、この世の中成功して皆から讃えられ続けるのは何時だって遠回りして努力を止めなかった人間だから。苦難があるからって楽な道を選び、辛い事があるからって逃げてばかりいても何も変わらないし、何よりも何も進まない。それは遠回りしている訳じゃ無い…後ろに下がっているだけ。逃げると言うことは戻るって事だから。私は前に進みたい!」


 走り出したケビンの動きに迷いは無く、キューティクルはその瞳を見てもまるで先の動きが読み切れなかった。

 初めてキューティクルはケビンの動きを前に逃げの一手を選択してしまった。


「私達を見て逃げる事を止め、今この瞬間だけで良いから立ち向かうことの大切さを知ってくれるのなら私達はそれで良い」

「誰もが未来なんて不確かな存在に目を逸らし、何時だって見ているのは自分に取って都合の良い仮想の真実ばかり。皆仮想世界が存在しているのならそっちにばかり目を向けるわ。だって、自分に取って理想の世界がそこにはあり、その世界はある意味自由よ」

「いいえ。他の誰でも無く仮想世界は不自由です。全てを機械に預け、死ぬという真実から逃げ、何よりも自分の行動すらも機械に任せて生きる。遊びで済めば良いですが…ここは現実です。いずれは現実を見るのです」


 逃げていくキューティクルにホーミングする黄色い光線を左右から挟み込むように十発放ち、正面へと向って紫色の拡散する光線を飛ばすケビン。

 ヘドロで左右の光線を護りながら上へと逃げるキューティクル、すると背中にシールドが直撃してしまう。


「最強を夢見る者達も、成った者達もいずれ知る。最強とは閉ざすこと…最も強いという幻想で自らを強く見せているだけで、他の誰よりも最弱なのだと。最強とは最弱と言うこと……私は………私達は最も強くなくて良い」


 シールドとケビンの位置が再び入れ替わり空中でケビンはキューティクルに鋭い蹴りをお見舞いし、キューティクルはその蹴りを左腕で受け止めるのだがそんなキューティクルに赤い光線を直撃させる。


「猫が毛を逆立ててもライオンに見えないように、強くなることに…最強であることに期そう以上の理由なんて要らない。永遠に生きていかなくて良い…出会いも別れも生きるという事の大切な過程の一つです。生死ですらその限りでは無い」

「けれど。誰もがそれを恐れる」

「恐れている者は逃げてばかり居る人間。自分の人生が真っ当じゃ無いと分かっている人間です。真っ当な生き方をしてきた人間は死ぬときに納得できるのです」


 死ぬとき人は生きた理由が分かるとケビンは今になって良く分かる。

 赤い光線でダメージを受けたキューティクルは落下していきながらヘドロをケビンへと投げ付けるが、ケビンはそれを凍り付かせ盾代わりにし、背中に存在しているシールドに先ほど打った紫色の光線が着弾した途端紫色の光線がはじけて円状に拡散攻撃を更に広げ、その攻撃にキューティクルが巻き込まれる。


「人間の生き様は死ぬときに決るのです! 死とは必死で生きたという証なのです…私たちはその証を残すために戦っているの!!」


 爆炎と共にキューティクルはケビンに微笑みながらも瞬間移動で逃げていく。

 心の中で「負けたわ」と思わせられながらも。


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