ビックベン・インパクト 8
始めに動いたのはケビンだった。
ケビンは銃の色を赤色に変更してすぐに引き金を引くと真っ赤な光が真っ直ぐにキューティクルへと向って突っ込んでいき、キューティクルはその光線をマジマジと見つめつつギリギリで避けるかそれともさっさと避けるかを迫られた。
刹那の思考だったに違いないが、キューティクルは早めに動いて避ける事を選びそうになったが、後ろにある術式の時計盤を狙っているとわかりヘドロを足下から作り出して盾として機能させる。
ヘドロに着弾した赤い光は着弾直後に大きな爆発と共に消え失せるが、結果からしてキューティクルは護ると言うことには成功した。
そのままヘドロを時計盤を護るように囲いその状態で一旦姿を消させる。
「私がここから消えたら現れるから安心しなさい。ここまで来て別の所に飛ばすって言う悪戯をする気は無いから。ただ簡単に終わらせたら困るって話し出し」
「貴女の言葉に信憑性を持てません。証拠を求めます」
「嫌よ。そうしたら容赦無く攻撃を仕掛けてさっさと破壊するでしょ? 確かめたかったら死ぬ気で来なさい」
ケビンは内心言われなくてもと銃を構え直し今度は色を水色に変えて放つと、水色の光は大量の水に変わっていきキューティクル事洗い流しそうになる。
するとキューティクルはその大量の水を片手で払い飛ばすと、視界にケビンが完全に消えていた。
右側から姿を現したケビンは紫色の光線を放ち、拡散して視界を埋めようとする光線をジャンプ一つで回避したら、ケビンが先ほどまで装備していたはずのシールドが消えていることに気がついてふと反対側を見る。
そこにはシールドだけを装備しているケビンがおり、キューティクルは「ああ。なるほど」と思いながらシールドで紫色の光線を反射させたケビンから逃げるようにヘドロを足下に呼び出す。
ヘドロを足場にして横に跳躍して再び回避、二人のケビンはそのまま再び一つの形へと戻っていく。
「面白い能力じゃ無い。 シールドの能力かしら? それとも貴女の異能である『物事の解析能力』を活用した独特の戦法なのかしら? 私の予想では自分の異能で能力の全てを解析しそれをシールドで反映発展させたと予想するけど?」
「貴女に説明する必要がありますか?」
「それ答えじゃ無い? そう言って口を紡ぐって事は正解って口にしている証拠」
正解だと絶対に口にしないケビンだが、正直に言えば正解である。
これはケビンの異能とシールドと竜との契約時に使えるようになった能力をフル活用して完成させた能力。
護る、反射する以外に使える能力の一つであり、分身能力もまたシールドで使える能力。
ケビンはずっと考えていた。
本来光竜シャインフレアの能力は多彩であり、伊達に聖竜と同格とされている存在では無いと、なのにケビン自身能力をちゃんと使えていないのは、本来解析能力はあってもそれを反省させるだけの方法を知らなかったからだ。
だから考えた方法とは、アカシから貰った竜の焔で自分の能力を最大限生かせる武装を二つ作り出す。
何故二つなのかと言えば、ケビンには『護る』と『攻める』と同時に出来るだけの『武器』を思いつかなかったからだ。
だからこそ考えたそれらを別々にして『攻撃』と『それ以外の能力』に分けて武装化させる。
シールドにはそれ以外にも色々な能力が詰まっており、ある意味ケビンにとってこのシールドこそが本命と言っても言い。
銃はあくまでも攻撃をする手段でしかなく、シールドをキチンと使いこなせるかがケビンの戦法に掛かっている。
キューティクルは「来なさい」と手招きし、ケビンはその挙動に敢えて合わせるように走り出していき、銃の色を再び赤色に変更した後シールドに向って放つ。
何をしているのかと少しだけ不思議に思ったが、爆発するはずの光がシールドの中へと入り込んでいく。
するとキューティクルの後ろの空間が突然爆発しキューティクルはそっと後ろを見るが、爆発した名残がそこにあるだけ、出来た一瞬の隙を突くようにケビンはキューティクル目掛けて黄色い光線を五発ほど飛ばしていく。
ホーミングしながら進んで行く攻撃、キューティクルはその攻撃を右手で全部防ぎきるが、ケビンはそんなキューティクルに向ってシールドを投げ付ける。
「あらあら…何かしら? 先ほどから不思議な事ばかり起きるわね…」
そう言いながらもキューティクルは躊躇無くシールドを受け止め、心の中で「で? 次は何かしら?」とウキウキしながら待っていると、ケビンの姿が視界から一瞬で消え、シールドが手元から消えたかと思ったらケビンが眼前に現れて紫色の光線を放つ。
拡散する光の攻撃が直撃したことを確認しつつバク転で距離を取り一旦見守る。
爆炎と煙で一旦キューティクルの姿が隠れ、次第に視界がハッキリとしていくと無傷で佇んでいるキューティクルがニヤリと笑っている光景だった。
「いやいや…今のは流石に痛かったわよ。この私が不視力を使う羽目になるなんてね…でも、面白いシールドね。ほんと万能道具って感じ。もうそれシールドじゃ無いんじゃ無い?」
「今の攻撃が一瞬ですか…」
必死になって隙を作ってこのレベルのダメージで終わっていることに理不尽さを感じ、ジト目でキューティクルの方をジッと見つめるが、そんな時キューティクルはケビン目掛けて右手の爪を伸ばしてケビンに向って攻撃を仕掛ける。
爪での攻撃をシールドで受け止めつつキューティクルへと向って赤い光線を放つが、キューティクルはヘドロを作り出して自分の身を守り出す。
「ほらほら…またやってみなさいよ…同じ戦法」
挑発を仕掛けてくるキューティクルにどうしたものかと悩んでいるとキューティクルが走ってきた。
爪による斬撃攻撃をしゃがみ込んで回避しつつ、懐から容赦無く赤色の光線を放つのだが、その攻撃を少し身を捻る形で回避しつつケビンの頭目掛けて鋭い蹴りをお見舞いする。
少し飛ぶことでダメージを軽減しつつ素早く受け身を取ってキューティクルの方へと体を向ける。
「あらあら…やるじゃ無い。ダメージを素早く軽減しつつすぐに私の方へと体を向ける。小さい赤ん坊時代を知っている身としては感慨深い気がするわね」
「貴女にそんな風に想われる筋合いはありません」
「でしょうね。でも、まさかこの程度で満足しているわけじゃ無いでしょ? 正直まだまだ私は本気を出していないんだけど…前の時は不完全燃焼感が半端じゃないの…まだまだ戦いたいという気持ちが強くてね」
キューティクルはニューヨークの時ではあまり本気で戦ったという気持ちでは無く、それ故に自分の本当の力をあまり確かめる事が出来なかった。
だからこそケビンが強くなったという真実が非常に嬉しく、同時に彼女なら自分の滅茶苦茶な攻撃でも耐えてくれるという不思議な安心感が存在している。
先ほどまでの戦闘で改めてそれを再確認させられ、それ故に受けたダメージの痛みすらも心地よく感じた。
「簡単に死んで欲しくないのよ…でもね、不死者と普通の人間だとどうしても勝負にならないのよ。無敵を殺せるような特殊さを求められるものね。最強じゃ足りないの…私たち不死者を殺す事が出来るのは無敵を殺す事が出来る特殊性であり、それ以上もそれ以下も無いのよね。貴女はその資格があるのかしら?」
不適な微笑みと共にキューティクルは右手を円状に一周させ、今度は左手で同じ事をしつつ両手の先に不思議な輪っかを二つ作り出す。
「私はカールとは違って遠距離で遊ぶのは意外と専門外なの。どちらかと言えばボウガンと同じで近接戦闘が得意…と言うわけでまだまだ耐えてね」
その顔は殺意が籠もった笑顔だった。




